ごはん外来の医師が勧める「手づかみ食べ」 赤ちゃんの3つのOKサイン

小児科医・江田明日香先生「ごはん外来へようこそ」#2~手づかみ食べ入門編~

小児科医:江田 明日香

赤ちゃんが手づかみ食べを始める準備ができているかどうかを、3つのポイントで教えてくれた江田先生。どんなことも明快に、わかりやすく説明してくれる。
写真:日下部真紀
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手づかみ食べの前に 親子がする3つのこと

しかし、成長度合いは赤ちゃんによってそれぞれ。

江田先生も「手づかみ食べ」に興味を持った親たちからは、「赤ちゃんがどうなったら始められるか、目安を教えて」とよく質問を受けるそうです。しかし、手づかみ食べには、「この日から食事を開始する」という決まりはありません。

「赤ちゃんが手づかみ食べできるサインは3つです。

①食への興味があること
②少し支えれば安定して座ることができること
③口へ物を運べること


これらができている赤ちゃんであれば誰でも、手づかみ食べを始めることができます。まずは遊びの延長として、赤ちゃんの前に食材を置いてみて。スタートのタイミングは、赤ちゃん自身が決めるんです。 

親がするべきことも3つだけ。まずは、家族も一緒に食べられる健康的な食事を用意すること。健康的といっても、深く考えなくて大丈夫。赤ちゃんが持ちやすいサイズで、簡単に崩れない硬さの茹でた野菜や切っただけのフルーツ、パンなどです」(江田先生)

次に食材だけでなく、テーブルセッティングも大切だと言います。

「おしりと足の裏で体重を支えることができる椅子と、肘が無理なく届くテーブルで、子どもが座りやすい環境を作りましょう。食事に集中しやすい空間にするために、テレビは消して、目に付くおもちゃはしまいます。

そして最後は、信じて待つこと! これがとっても重要で、一番難しいポイントですね。必要以上に食べ物へ誘導したり、手を出してはいけません。じっと待つって、親にとってはとても難しいので、じつはここが一番難関ですね(笑)」(江田先生)

親子とも、これらの3つのことができるようになれば、「手づかみ食べ」はスタートしたも同然。あとはじっくり子どもの様子を観察していきましょう。

間違った食事姿勢として、バウンサーやシリコン製の座り姿勢を保つイスなどはNG。おしりと足の裏がしっかり接地する座り姿勢がベスト!
写真提供:かるがも藤沢クリニック

適切な栄養を摂るためにペースト食との併用も必要

前回(#1)、離乳食で体重が増えないという子どもの原因は、ペースト状の離乳食で栄養が足りてないケースが多い、というお話でした。

「ごはん外来」では、体重が増えない子どもへの適切な栄養支援に基づいたペーストの食事と、「手づかみ食べ」を併用させた離乳食を勧めています。赤ちゃんの口の機能発達がゆっくりだったり、栄養を効率よく摂って成長を促したりする場合には、スプーンで与えるペースト食も必要だと考えているそうです。

「ペースト食にする場合は、水分量に注意して。ペースト食材は、スプーンにのせた状態で傾けても滑り落ちないくらいの硬さにしましょう。お粥なら、炊飯器のお粥モードで炊いた5倍粥くらいが目安です。

近年、WHO(世界保健機関)が『離乳食』に代わる言葉として『補完食』という言葉を提唱しました。従来進められてきた離乳食のやり方とは異なり、母乳だけでは足りなくなる栄養を補うための食事という概念で考えられています」(江田先生)

相談に訪れるお子さんたちの様子を診ながら、きめ細やかな個別の支援をすることで、子どもたちの食事の仕方はおどろくほど変化していくと言います。実際に、いろいろな子どもたちの動画をもとに、その成長や気づきを解説してくれました。その様子を見てみると、みんな生き生きとして、心から食事を楽しんでいるのが伝わります。

「手づかみ食べ」をする子どもたちの様子は、クリニックのInstagramやyoutubeでも配信されているので、ぜひ視聴してみてくださいね。

次回(#3)は、実際に「手づかみ食べ」をしている子たちの生の声を聞きながら、食べさせ方や注意すべき点などを、細かくお伺いします。

取材・文/遠藤るりこ


※江田明日香先生インタビューは全4回。
次(#3)は21年12月18日公開です(公開日時までリンク無効)。

#1 離乳食の悩み編

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えだ あすか

江田 明日香

小児科医

小児科専門医、国際認定ラクテーション・コンサルタント。2004年 杏林大学卒業後、藤沢市民病院にて臨床研修。藤沢市民病院(小児科)や、聖隷横浜病院(小児科)の勤務を経て、子育てをしながら複数の小児科クリニックに勤務。2015年、自身のクリニック「かるがも藤沢クリニック」の院長となる。 開院以来ずっと開いてきた親子クラスに、離乳食相談窓口となる「ごはんクラス」を立ち上げ、さらに2018年に個別支援を行うための「ごはん外来」を設立。2002年頃にイギリスで提唱された「BLW= Baby-Led Weaning」の理念を基礎とした「手づかみ食べ」を推奨している。自身も12歳(2009年生まれ)と10歳(2011年生まれ)の男の子を育てるお母さん。最近の趣味は、和菓子を食べること、珍しい植物を育てること

小児科専門医、国際認定ラクテーション・コンサルタント。2004年 杏林大学卒業後、藤沢市民病院にて臨床研修。藤沢市民病院(小児科)や、聖隷横浜病院(小児科)の勤務を経て、子育てをしながら複数の小児科クリニックに勤務。2015年、自身のクリニック「かるがも藤沢クリニック」の院長となる。 開院以来ずっと開いてきた親子クラスに、離乳食相談窓口となる「ごはんクラス」を立ち上げ、さらに2018年に個別支援を行うための「ごはん外来」を設立。2002年頃にイギリスで提唱された「BLW= Baby-Led Weaning」の理念を基礎とした「手づかみ食べ」を推奨している。自身も12歳(2009年生まれ)と10歳(2011年生まれ)の男の子を育てるお母さん。最近の趣味は、和菓子を食べること、珍しい植物を育てること

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe