子どもに“高い絆創膏”と“安い絆創膏”どう使う? 「重ね貼りOK?」「やけどに貼っていい?」などの疑問に皮膚科医が回答[医師監修]

#2 皮膚科医・野崎誠先生に聞く【ハイドロコロイド絆創膏の使い方】 (3/3) 1ページ目に戻る

皮膚科医:野崎 誠

野崎先生:昔は店頭で見かける絆創膏は品質の良いものが主流でしたが、100円ショップなどで販売されるようになってから価格競争が進んでか、コストを下げるために粘着剤や素材の質を落としているものも見受けられます。

安価ゆえ手に取りやすいものの、「かぶれ」や、通気性がなくて傷口周辺がふやけたり蒸れたりすることによる「二次感染」のトラブルが多い印象です。

また、絆創膏は一度貼ると忘れて化膿していることに気が付かず放っておいてしまう人も少なくありません。

──“高い絆創膏”も“安い絆創膏”も使わない場合は、どうすれば?

野崎先生:傷を保護するときは、ワセリンなどの処方薬等をぬってガーゼでおおい、紙テープでとめてとお伝えしています。ガーゼでしたら、貼っていると目につくので「何かしなければ」という気持ちになりやすいんですね。

いずれも化膿している場合、特に傷や周辺がズキズキ熱を持っていたり、赤くはれたりしていたらすみやかに病院を受診してください。抗生剤を飲まないと治らないこともあります。

──確かに、子どもに貼ってあげる場合でも、ガーゼのほうが「早く交換しなきゃ」という気持ちになりそうです。子どもの絆創膏の選び方で注意することはありますか。

野崎先生:「子どもだからこの種類を選んで」というのは、特にありません。ただ、乳幼児に関しては誤飲の危険性があるため、絆創膏の使用には慎重になる必要があります。滲出液が出ていないすり傷などは、洗ったうえで何も貼らずに乾かしても良いと思います。

“高い絆創膏”の疑問…「こんなときはどうする!?」

──SNSなどでは、“高い絆創膏”(ハイドロコロイド絆創膏)の「それって大丈夫?」という疑問や自己判断での使用例を見かけます。使い方に悩む4つのケースについて、教えていただけますか。

ケース1:自分で切るタイプの絆創膏で、切り取ったサイズが合わず、1つの傷口をまたいで複数枚を貼った。

答え→【貼り方によっては○】
パズルのように貼るのは隙間ができてしまうので良くありませんが、つなぎ目を重ねてずらしながら貼れば問題ありません。

ケース2:転んだすり傷に砂の粒などが入り込んで取れないけど、絆創膏を貼った。

答え→【貼るのは×】
異物がある場合は貼ってはいけません。痛くてもしっかり洗って取り除くことが大事です。それでもめり込んでしまって取れない場合などは、病院で異物を取り除いてもらいましょう。

ケース3:猫にひっかかれた傷に使っている。

答え→【貼るのは×】
犬や猫などの動物にひっかかれたり、嚙まれたりした傷は細菌の感染の恐れがあるため、使用してはいけません。子どもの喧嘩など人間に嚙まれた傷も同様です。

ケース4:やけどのときに使っている。

答え→【子どものやけどは× 病院の受診を】
子どものやけどは、必ず受診したほうがよいでしょう。同じやけどでも子どもは皮膚が薄いため大人よりやけどが深くなる可能性があるからです。

大人が軽症のやけどで使用する場合、うまくいくケースが多いものの、本当にハイドロコロイド絆創膏の対処で良いのか、判断を誤るリスクもあります。

まず、やけどして皮膚が赤くなった当日に貼るのはNG。やけどの深さ(重症度)が決まるのは翌日や翌々日なのです。低温やけどは場合によっては1~2週間が経って初めて最終的に傷の深さが分かります。

軽症だと思っていたら実はもっと深くて、壊死した組織を取らなければいけない状況になったり、生涯にわたり傷痕(きずあと)が残ってしまうことも。重症度を自己判断するのはなかなか難しいと思うので、基本的には受診をおすすめします。


──「たいしたことはなさそう」と軽くみてはいけないのですね。シチュエーションごとに、やはり判断が難しい場面がありそうです。

野崎先生:対処に悩む場合は、ハイドロコロイド絆創膏はむやみに使用せず、医療機関に相談したり別の方法を検討したりするのが良いでしょう。

───◆─────◆───


今回は2回の記事にわたって子育て世代が使い方に悩むことも多い、ハイドロコロイド絆創膏について詳しく教えていただきました。

何かと多い子どものケガは、対処に迷うこともありますが、「ハイドロコロイド絆創膏は『貼っていい傷』と『貼ってはいけない傷』がある」ということを知っておくだけでも、いざというときの安心材料になるのではないでしょうか。

悩んだときは、この記事や商品の説明書を見返して、そして必要時は、しっかりと医療機関を受診しましょう。

取材・文/原田美咲

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のざき まこと

野崎 誠

Makoto Nozaki
皮膚科医

山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児専門病院)などを経て2013年、「小児皮膚科」・「一般皮膚科」を専門とする『わかばひふ科クリニック』を開院。 一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。 わかばひふ科クリニック http://www.wakaba-hifuka.com/ X わかばひふ科クリニック公式  @wakaba_hifuka2 YouTube わかばひふ科クリニック公式 https://www.youtube.com/@wakaba_hifuka

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山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児専門病院)などを経て2013年、「小児皮膚科」・「一般皮膚科」を専門とする『わかばひふ科クリニック』を開院。 一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。 わかばひふ科クリニック http://www.wakaba-hifuka.com/ X わかばひふ科クリニック公式  @wakaba_hifuka2 YouTube わかばひふ科クリニック公式 https://www.youtube.com/@wakaba_hifuka

はらだ みさき

原田 美咲

Misaki Harada
フリーライター

地域情報紙の記者を経て、2025 年からフリーライターに。これまでは地域の取り組みや活躍する子どもたち、選手への取材・インタビュー等を中心に、広いテーマで執筆。趣味は段ボール工作。

地域情報紙の記者を経て、2025 年からフリーライターに。これまでは地域の取り組みや活躍する子どもたち、選手への取材・インタビュー等を中心に、広いテーマで執筆。趣味は段ボール工作。