紙おむつが抱える資源・環境・温暖化問題の解決法! おむつ再生技術が期待されるワケ

SDGsで考える「おむつの未来」 #3 紙おむつの水平リサイクル

遠藤 るりこ

ゴミではなく資源として生まれ変わらせる

両社が目指している「水平リサイクル」は、使用済みの製品を再資源化し、また同じ製品に生まれ変わらせるリサイクルモデルのこと。「循環型リサイクル」とも呼ばれています。

「一般的なリサイクル方法は3つあります。資源価値の高いものへ活用する『アップサイクル』、資源価値の低いものへ活用する『ダウンサイクル』。そして、紙おむつから紙おむつに戻すのが、私たちが取り組む『水平リサイクル』です」(ユニ・チャーム・織田さん)

織田さんは、水平リサイクルに取り組むべき要因として、紙おむつが抱える環境問題を大きく3つ挙げます。

まず「①ゴミの廃棄量の増加や、②し尿=水分を吸った紙おむつを燃やすときに出る、CO2の排出量が問題です。紙おむつは、水分を吸うと重量が約4倍になります。

そして何より、おむつの原材料は、③品質の高い資源で作られているが使い捨てであることが大きな課題となっています」(ユニ・チャーム・織田さん)

次々とおむつを作り続けていくだけでは、いつか資源は足りなくなるかもしれません。加えて、近年は原価が高騰しているため、資源を国内で循環させることを考える必要があります。

大王製紙の竹内さんも、「自社から出た製品をゴミとしてではなく、もう一度“同じ資材”として生まれ変わらせることを目指した」と語ります。

しかし、使用済みの紙おむつを、新品紙おむつを作るための資材として蘇らせることが、本当に可能なのでしょうか。

紙おむつリサイクルの要は パルプの再生

使用済み紙おむつの水平リサイクルには、こまかな工程があります。

「排泄物を除いた使用済みの紙おむつを回収し、粉砕・洗浄します。ゴミを取り除いたら、『高分子吸収材』『プラスチック』『パルプ』、3つの素材別に分離させます。これらすべての素材の再資源化を目指しています」(ユニ・チャーム・織田さん)

分離された3つの素材のなかでも、両社が重点的に取り組んでいるのが「パルプ」のリサイクルです。

「素材へ分離を終えた段階では、まだリサイクルには適さない『(低質)パルプ』という状態です。一度も使用していない新品の紙おむつに使われる『バージンパルプ』と同等の品質の『(上質)パルプ』まで戻さなければ、リサイクルに適した素材にはなりません」(ユニ・チャーム・織田さん)

そこでユニ・チャームが開発したのが、世界初のオゾン処理という技術。清潔で安全で、きれいな資源として使える上質なパルプへと再び生まれ変わらせるために、何十種類もの方法を試し、長い年月をかけてたどり着いたのがこの技術です。

「オゾンの強力な酸化力を使い、菌やウイルスを殺菌して、浄化します。オゾンは匂いや汚れを根本から分解・漂白・消臭して、し尿由来の汚れを除去できるのです。この技術を当社だけで使うのではなく、当社のオゾン処理技術は広く、関心ある企業様や団体様でもご使用いただけるようにしたいと考えております」(ユニ・チャーム・織田さん)

分離された段階ではまだ茶色かったパルプは、オゾン処理によって白くきれいに生まれ変わる。  画像提供:ユニ・チャーム
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こうして生まれ変わった(上質)パルプは、紙おむつの材料としてもう一度使われることになります。

「処理過程で水や空気を汚すことなく、環境負荷が少ない工程であることも大事です」(ユニ・チャーム・織田さん)

紙おむつとして再度製品化を目指すためには、高い品質の上質パルプへとする必要がある。それを実現したのが世界初の「オゾン処理」という方法。  画像提供:ユニ・チャーム

大王製紙も、パルプの再生についてこう話します。

「すでにパルプを取り出し資源化する技術を持っている企業に紙おむつを回収、分離して素材を取り出していただき、そこから当社が紙おむつを作るための機械にのせられる『フラッフパルプ』の形にしていきます。

このフラッフパルプは、現在ほぼ輸入に頼っている状態です。再生するにあたり、これと同じ品質のパルプに戻して、紙おむつの資材として国内で循環できるところまで持っていかなければなりません」(大王製紙・竹内さん)

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紙おむつを製造・開発するメーカーだからこそ持ちうる知見が生かされている、紙おむつの水平リサイクル事業。

両社ともに、「高分子吸収体(ポリマー)などのリサイクル技術はパルプより難しく、まだまだこれから」と話すように、課題は山積しています。

次回は、紙おむつのリサイクルフローが抱える問題点や、私たち大人が今日から実践できるアクションについてうかがいます。

取材・文/遠藤るりこ

※SDGsで考える「おむつの未来」、連載は全4回。(公開日時までリンク無効)。

#1 保育園から使用済みおむつ持ち帰りは約6人に1人 どうしたらなくなるの?
#2 保育園で「おむつのサブスク」急増 最新事情を6社に徹底取材!
#4 紙おむつの捨て方が変わる? 使用済みおむつがリサイクルされる日

取材協力
ユニ・チャーム株式会社
https://www.unicharm.co.jp/

「図解でわかる ユニ・チャーム紙おむつリサイクル」
https://www.unicharm.co.jp/ja/csr-eco/education.html

大王製紙株式会社
https://www.daio-paper.co.jp/

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えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe