子どものコロナ感染拡げない 専門家が「除菌」のコツを伝授
今、本当に一人ひとりに必要な新型コロナ対策とは?
2022.04.26
新型コロナウイルス感染症の流行によって日々の暮らしが一変してからはや2年半。私たちは感染症対策と切っても切れない日常を送っています。
とくに第6波では、子どもたちへの感染が急増したことから、感染症対策に神経を尖らせている保護者も多くいらっしゃることでしょう。
この2年間で新型コロナウイルスは変異を重ねてその特徴が変化しています。予防や治療などの医学的な研究も進んだことから、一人ひとりに求められる対策のあり方も変わってきています。
3月26日に行われた「思いやり除菌プロジェクト」WEBセミナー(大王製紙株式会社主催)では、公立陶生病院感染症内科の医師・武藤義和先生が登壇。感染症の専門医であり、学校の感染対策の第一人者である武藤先生によるセミナーから、「今、本当に必要な新型コロナ感染症対策」を考えてみます。
オミクロン株は数日で治る病気に
新型コロナの患者数が一気に増えた第6波。その主役となったのがオミクロン株です。武藤先生がオミクロン株の特徴について解説します。
「なんか喉が痛いな、どうも食べにくいな、みたいな違和感を感じ、その翌日くらいにぶるぶるっと寒気がきて熱が出るという方が多いようで、約9割の方に熱が出ると言われています。
デルタ株のように味がしない、臭いがしないという味覚・嗅覚障害は、100人に1人もいないほど症状としては少なくなっています。
無症状の人も3割ほど。デルタ株が中心となった第4波までは重症化率が約16%だったのに対し、オミクロン株が中心の第6波の重症化率は約0.2%。
重症化するのは、体力の落ちた高齢者、免疫が低下する病気や薬の服用がある人、ワクチンを打っていない人がほとんどで、若年層の重症化・死亡率は非常に低くなっています」(武藤先生)
医学的には、インフルエンザほどではないけれど、オミクロン株はほとんどの場合が数日で治る病気という認識になっていると言えます。
とはいえ、罹っても問題ない、というわけでは決してありません。オミクロン株の最大の特徴は感染力が非常に強いところ。
第6波では10歳未満と10代の子どもたちの感染が顕著でした。それにより、その親世代である30代、40代への感染が拡がり、重症化しやすい高齢者への感染リスクも高まってしまったのです。
「潜伏期間」と「感染期間」を理解しよう
では、感染を防ぐには、具体的にどうすればいいのでしょう?
まず「潜伏期間」と「感染期間」をきちんと理解することが大切だと武藤先生は話します。
「朝、古いおにぎりを食べたことで昼ぐらいにお腹が痛くなる。インフルエンザに今日感染すると明日か明後日に熱が出るといった、感染してから症状が出るまでの期間が潜伏期間です。
中国の武漢で広がった新型コロナウイルス株の潜伏期間は7〜11日間でしたが、オミクロン株の潜伏期間は3〜7日間とより短くなっています。
一方、感染期間とは他の人に感染させる力を持っている期間のことで、オミクロン株の感染期間は発症2日前〜発症後7日程度。感染力が非常に強いオミクロン株は、発症する頃にはすでにうつし終わっている。
発症してからうつす病気なら対処しやすいのですが、気づく前にうつしてしまうのです。
たとえば、月曜日に感染した人がいるとします。その人は木曜日くらいに発症しますが、実は火曜日から他の人にうつしていたことになります。
しかも、無症状の場合にはずっと知らないまま翌火曜日までうつし続けてしまいます。これがオミクロン株の厄介なところ。だからこそ感染対策が重要なのです」(武藤先生)
感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」
感染症の感染経路は「飛沫感染」「接触感染」「空気感染」「媒介物感染」の4つです。
新型コロナで基本的に注意が必要なのは「飛沫感染」と「接触感染」。武藤先生は感染経路別に対策を教えてくれました。
「飛沫感染とは口から出た飛沫が、口や鼻、目などに入ることによる感染です。ソーシャルディスタンスはこの飛沫感染対策の一環で、距離をとるほどリスクが下がります。1mでリスク約50%ダウン、2mで約75%ダウン、3mだと約90%ダウンと、距離をとることはとても有効です。
しかし、常に十分な距離をとるのは容易ではありませんので、飛沫を出さず、吸い込まないためのマスクの着用が重要となります。
マウスシールドやフェイスシールドよりも、鼻と口を隙間なく覆うことができるマスクが有効で、素材は布やウレタンよりも不織布が推奨されています」
飛沫感染を防ぐには、換気も欠かせないと武藤先生は続けます。
「ウイルスが物理的に部屋に貯まるのを防ぐために換気することが大切です。ドアとその反対側の窓を開けるなど、空気の流れを一方通行を意識して作ってあげると効果的です。
1時間に5分を目安に換気を行い、空気の流れが生まれにくい部屋では扇風機を利用して換気しましょう」(武藤先生)
アルコール消毒でウイルスは除去できる
「もう一つの接触感染とは、ウイルスがついているものに触れることによる感染です。
握手をはじめ、手すりやテーブル、ドアノブなどがウイルスがつきやすい代表的な場所ですが、忘れてならないのは、触っただけで感染するわけではなく、触った手を口や目に持っていくことでウイルスが体内に入ってはじめて感染するという点です。
対策としてウイルスを除去することが重要ですが、有効な対策を講じるために、この点をしっかり押さえておく必要があります」(武藤先生)
接触感染を防ぐために有効なのが手洗いです。人は無意識に1日30回くらい目や鼻、口を触っています。では、いつ手洗いすればいいのでしょう?