子役の経験生かしたさまざまな進路
近年は、芸能スクールや事務所も増え、子役から活躍し続ける俳優も多いです。『劇団四季』で成長した子役は、その道に進むのでしょうか。
「『劇団四季』では、その演目が終わったら、作品からはいったん卒業です。また別の演目でオーディションを受け、選ばれる子もいます。大人になって、『劇団四季』の劇団員を目指す道もありますが、小学生ぐらいの段階で決めるのは、どうかなという思いもあるんです。
舞台を見て憧れ、挑戦したいという気持ちはわかるし、こちらも成長できるように支えます。ですが、視野を広げたら、もっとやりたいことがあるかもしれません。個人的には、子どものころに舞台の道に進む、と決めてしまうより、あれもこれも挑戦してほしいと思います。
大学に行き、社会人になってから舞台の道に戻ってきても、遅くはありません。『劇団四季』の研究生になれるのは、高校卒業以降ですし、変声期や受験もありますからね」(遠藤さん)
『劇団四季』の舞台に子役として出演した経験は、どんな将来にも生かせる、と遠藤さんはいいます。
「私は100人以上の子役を見てきましたが、進路はさまざまです。『劇団四季』の研究生になった子もいるし、他のミュージカルに出ている子、タレントデビューした子もいます。
子役のころにサポートしてもらったから、支える仕事がしたいと、医療や福祉の仕事につく子、舞台の小道具に興味を持ち、その道を目指す子もいます。稽古に舞台に、努力することで身につくものがある。常に成長し続ける子役の経験は、どの世界に進んでも、役立つと思います」(遠藤さん)
頑張る子役の姿から学ぶこと
筆者は、合唱とダンスの経験者で、アマチュアですがさまざまなホールの舞台に立ちました。新聞記者時代から、オペラやミュージカル・バレエ・ダンスなど芸能の取材もしています。
『劇団四季』のミュージカルも取材したことがあり、近年は親子でチケットを取って娘と鑑賞していました。コロナ禍に、公演が中止になったり、さまざまな制限を受けたりする中で、元気を与えてくれるエンターテインメント。その世界で芸を磨き、輝く姿を見せる子役は、改めてすごいと思い、今回の取材をお願いしました。
子役の照井さんの話を聞くと、そのガッツと意識の高さに驚かされます。好きなことで憧れの舞台とはいっても、常に努力してお客さんの前で演じ切るのは、大変なプレッシャーだと思います。でも、指導者の遠藤さんのことが大好きで、また周りのキャストやスタッフに大事に育成されていることがわかりました。
そして自身も俳優を経験し、現在は子役を指導する遠藤さんの存在にも、感銘を受けました。継承されるメソッドに基づいた稽古をしながら、真剣勝負の俳優と共演できるように指導する。それだけでなく、子役に寄り添い、成長を心から願う遠藤さんのような大人がいるからこそ、よい作品を上演できるのだと思います。
舞台を観る側の子どもにとっても、同世代の子役が輝く姿を間近にして、エンターテインメントに触れるきっかけになりますし、さまざまな世界で努力して頑張っている子がいることを学ぶ機会になるでしょう。
取材・文/なかのかおり
前編 『劇団四季』「バケモノの子」の子役が明かす 自分の居場所と俳優としての成長
なかのかおり
ジャーナリスト。早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。
主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』(デザインエッグ社)が2022年10月22日発売。
https://www.kaorinakano.info/
なかの かおり
早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki
早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki