
【子育て中の親へ届け】散らかった部屋は「一生懸命生きた証」! 『カフネ』作者も感動した、プロの家事代行の真実
本屋大賞を受賞した『カフネ』の作者と家事代行サービススタッフの座談会 (3/3) 1ページ目に戻る
2025.11.12
ライター:山口 真央
「あなたが嬉しいと私も嬉しい」が家事代行の基盤
丸子:以前、食卓のないお家に通っていたことがあります。リビングに小さな机がふたつと、キッチンに椅子がひとつあるだけ。そのご家族は、バラバラに食事をしていたんです。小学生のお子さんがとってもやんちゃで、親御さんがいないところで私によくいたずらをしてきて、困っていました。
阿部:それは仕事がしづらいですね。どうなさったんですか。
丸子:考えに考えて、自分の子どものように接しようと決めました。「今日早かったね」「寒くなかった?」と、何気ない言葉をかけ続けたんです。そのうち、お子さんが少しずつ私に心を開いてくれるようになって、自然と親御さんともコミュニケーションがとれるようになりました。ある日、そのご家庭に伺うと、リビングにちゃぶ台が置かれていました。なんと、家族が一緒に食事をするようになったんです。
阿部:なんて素敵なお話なんでしょう! そのまま小説になりそうです。
丸子:しばらくして、そのご家族は海外に引っ越してしまったけど、後日会社宛てに「家事代行していただいたおかげで、家族がまとまりました」というメッセージをいただきました。
阿部:ありがとうございます。『カフネ』を書いていて悩んでいたこととも通ずるお話でした。お客様でも身近な人でも、相手の領域に踏み込まないことって大事だと思うのですが、一方で踏み込まないと手遅れになってしまうこともありますよね。いまのお話を聞いて、丸子さんのちょうどいい量の愛情が、お客様の心を動かしたのだと思いました。
服部:家事代行のスタッフがご家庭にお伺いするうちに、家族に近い関係になることがあります。逆に他人だからこそ見せられる部分があったり、話したりできることもあるようです。
阿部:なるほど。長いこと家事代行の仕事をしているせつなも、きっと根底に「あなたが嬉しいと私も嬉しい」気持ちがあるのだと思います。どうしてこの仕事をしているのか正面から聞いたら、スンとした顔で「お金のためだけど」と言いそうですけれど(笑)。
阿久津:せつなさんの気持ちに共感します! お客様の自由な時間が増えることが、私の誇りなんです。育児、仕事、プライベートでも、やりたいことを優先してほしい。お宅が散らかっているのは、お客様が一生懸命生きた証です。
服部:家事は自分でやるべきものと考えている方は、まだまだいらっしゃると思いますが、決して抱える必要はありません。『カフネ』にも描かれているとおり、家事は「希望」です。何をする気力がないときでも、部屋が綺麗になったり、おいしい食事が出てくるだけで、生きる元気が湧いてくる。ぜひ気軽な気持ちで家事代行サービスに頼ってほしいと思います。
阿部:最後にお伺いしたいのですが、家事代行を呼ぶ際に、トイレに本が積み上がっていても大丈夫でしょうか……(笑)。
阿久津:もちろんです! 私は「本当に本がお好きな方なんだな」と思って、お客様への愛着になります。
阿部:心強いお言葉、ありがとうございます。『カフネ』のスピンオフを書いているのですが、今日のお話で物語の解像度がぐっと上がりました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
服部・丸子・阿久津:こちらこそ、ありがとうございました!
撮影/日下部真紀(講談社写真映像部)




































山口 真央
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。