自身が運営するアニメ会社で、脱力系スローライフアニメ「Peeping life(ピーピングライフ)」をはじめ、さまざまなアニメの制作・監督・声優などを担当されている森りょういちさん。
自身の子育てを通して感じたことや芽生えた使命感、そして立ち上げたママ向け新事業について、お話を伺いました。
妊娠中は夢みがちだった!?「育児ってこんなにしんどいの」と夫婦で驚愕
育児って、母親のスタートの切り方が、本当に酷ですよね。陣痛がはじまって、どんどん痛くなってきて、寝ずに子どもを産むじゃないですか。もちろん、子どもが生まれた喜びはあるけど、そのあとすぐにボロボロの体で、24時間の母親業がはじまる。
うちの妻は結構メンタルをやられてしまい、このままでは家庭が壊れると思ったので、娘の月齢が小さいうちから、育児や家事を分担して乗り越えました。
いちばんのストレスは睡眠をとれないことだったので、子どもと寝る日を当番制にしたり、少しでも妻が休めるように、17時には家に帰って娘を風呂に入れ、晩ご飯の準備をしたりしました。
そのとき妻が「子どもを産む前に、いい意味で夢を壊してくれる人がいればよかった」と言ったのが印象的で。たしかに妊娠中、みんなから「おめでとう」と言ってはもらえるけど、ガチの大変さは(言葉を濁してくれていたのか)誰も教えてくれない。ママ向けの雑誌も幸せな絵面ばかり。
妻の話を聞いて、もしかしたらほとんどのママさんが「こんなに辛いのは自分だけ」と感じているのではないかと思いました。そんな経験から徐々に、ママさんの助けになるようなアニメやサービスができないかと考えるようになったんです。
孤独になりがちなママを救う ”教育×エンターテイメント”アニメ
僕たちがつくっている「育じーズ」は、子育て中の親御さん向けのアニメーションで、毎週日曜日の朝6時10分から、TNC(テレビ西日本)で放送しています。朝、子どもに付き添って早起きした親御さんに、少しでもタメになったり、救われたと思えたりできる内容をつくることを心がけています。
YouTubeでも観られるのですが、もっとも再生数の多い突発性発疹のお話は、僕の実体験。突発性発疹だけでも驚いたのに、熱が下がってからの機嫌の悪さに、ぐったりと疲れたことがありました。
【育じーズ】息子グズグズ!! はじめての突発性発疹
育児中のママたちも、関わる人が少ないので視野が狭くなりがちかと思いますが、「うちだけじゃないんだ!」と気づくだけで、安心できるようなアニメをつくれたらと考えています。
あとは改正育休法の話題や、子どもが2歳になると物を投げる理由などを、パンダママとたぬきママたちのざっくばらんなトークのなかで分かりやすく伝えています。
僕のアニメ会社「FOREST Hunting One」では、全国100校以上の自動車教習所でつかわれている「DON! DON!ドライブ」というアニメをつくっていて、「教育×エンターテイメント」は、我が社が得意とするところなんです。
ママたちがいちばん悩んでいるのは「お金」のことだった!
アニメのネタ探しに、育児中のママさんのつぶやきを3万ツイートつかって、どんな言葉が多くつぶやかれているかを分析してみました。
「癒し」や「息抜き」という言葉を想像していたのですが、結果は「仕事」「家計」「将来の不安」などなど、お金に関することばかり。癒されることよりも、現実的なお金の問題がいちばんの関心ごとだということに、はっとしました。
子どもを産み、育てることは国にとっていいことなのに、ママさんたちは不安を感じているのは、とても矛盾していると思うんです。ビジネスを度外視してでも、救える方法は何かないのか、考えるようになりました。