子どもの医療用ウィッグ「31cmの長さ」「30~50人分の寄付」が必要! 「脱毛症」「小児がん治療」…髪を失った子どもへの「ヘアドネーション」とは?

寄付された髪からウィッグを作る「ヘアドネーション」 ~前編~

ヘアドネーションの条件は「31cm以上の長さがあること」だけ

──ヘアドネーションの方法について、具体的に教えてください。

渡辺さん:寄付できる髪の毛の条件は、たったひとつ。「31cm以上の長さがあること」です。というのも、髪の毛は半分に折り返して、ウィッグの地肌となるベース部分に植え付けていくため、31cm未満では医療用のフルウィッグを作ることができないのです。

とはいえ、量は少なくても大丈夫。31cmの長ささえ満たしていれば、小指1本分ほどの細い束でも、問題なく寄付していただけます。

イラスト/古屋あきさ
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──白髪やカラー、パーマをした髪でも寄付できるのですか?

渡辺さん:はい、まったく問題ありません。髪色や髪質は人によって違いますが、ウィッグとして自然になじませるために、私たちのほうで「トリートメント処理」を施しています。薬品を使って色や質感に統一感を持たせ、自然な黒髪に仕上げていきますので、もとの髪の状態は問いません。

ただし、軽く引っ張っただけで切れてしまうような、極端なダメージがある場合は寄付の対象外になります。

──子どもでも参加できますか?

渡辺さん:はい、もちろん。お子さんも、男性も、海外に住んでいる方も、日本人でなくてもOKです。ヘアドネーションは、年齢・性別・国籍を問わず、どなたでも参加できるボランティアです。

ただ、幼いお子さんのロングヘアは、思わぬアクシデントにつながることがあります。例えば、子どもは汗をかきやすいので、長い髪だとケアが大変なことも。

お子さんの年齢や体格、生活スタイルに合わせて、無理のない範囲で参加していただけたら嬉しいです。

抜け毛を集めて送ってもOK!

──ヘアドネーション用には、どこで髪を切ればいいのでしょうか?

渡辺さん:いつも通っている「行きつけのサロン」でも、ジャーダックの活動に協力している「賛同サロン」でもOKです。自宅でのセルフカットでも大丈夫ですよ。賛同サロンは、私たちのホームページで検索できます。

もし賛同サロン以外のお店を利用する場合は、ヘアドネーションの手順をまとめたページがサイトにあるので、美容師さんにあらかじめ目を通してもらい、了承を得てから予約を入れてください。

なお、カット後の発送はご自身でお願いします。あらかじめ宛先を書いたレターパックなどをサロンに持参し、切った髪をレターパックに入れて、帰りにポストに投函すればOKです。

──31cm以上の長さがあれば、抜け毛を集めて送ってもいいのでしょうか?

渡辺さん:はい、抜け毛でも大丈夫です。むしろ、カットした髪よりも毛根から毛先までの長さが確保できるぶん、より長い髪の毛を寄付できる場合もあります。

見つけた抜け毛は、新聞紙などにどんどんはさんで集めてください。ある程度たまったら、毛根の方を輪ゴムで束ねて送っていただければOK。

抜け毛は量を集めるのがちょっと大変かもしれませんが、ゴムでまとめられる程度の量があれば、少量でもまったく問題ありません。できそうな方は、ぜひトライしてみてくださいね。

───◆───◆───

脱毛や治療の影響で、髪の毛に悩みを抱える子どもたちにとって、ウィッグは見た目以上の意味を持つもの。髪の毛を切るだけで誰かを支えることができる。そんな選択肢があることがわかりました。

次回後編では、日本で初めてヘアドネーションの団体を立ち上げた理由や、ジャーダックが目指すことなどをお聞きします。

取材・文/横井かずえ


後編を読む(公開時よりリンク有効)

ヘアドネーションの送り先
〒531‐0072
大阪府大阪市北区豊崎3‐8‐18
NPO法人JHD&C事務局
宅配便記載用電話番号:06‐6147‐5316
*お電話でのお問い合わせには対応しておりません
*個別の到着確認はできませんので「追跡サービス」付きの発送方法をおすすめします。

NPO法人JHD&C(ジャーダック)
Japan Hair Donation & Charity。通称ジャーダック。2009年、日本で初めてヘアドネーションを専門に行う団体として活動スタート。頭髪に悩みを持つ18歳以下の子どもたちに無償提供をしている。今まで届けたウィッグは約1000個。

ジャーダック公式HP https://www.jhdac.org/
賛同サロン情報はこちらから https://www.jhdac.org/search/index.php

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よこい かずえ

横井 かずえ

Kazue Yokoi
医療ライター

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2