話題の「自由進度学習」 子どもの判断力と思考力を鍛える「体験的な学び」とは?
【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦#2「自由進度学習を成立させる4つのアプローチ」
2022.08.09
教科書と「体験的な学び」は相互に補完し合う関係
宮園小学校の自由進度学習に伴走し、取り組みをサポートしてきた広島県教育委員会義務教育指導課(前 個別最適な学び担当)村田耕一さんは、宮園小学校の取り組みについてこう話します。
「自由進度学習に取り組むと、子どもたちの待ち時間が減って45分をフルに学習に使うことができるので、効率が上がります。その結果、知識・技能面の成果は上がりやすいんです。
これは多くの学校で共通する傾向ですが、その一方で『思考力が深まらない』という課題にぶつかりやすい。
そうした場合、『話し合いの時間』を取り入れることが多いのですが、宮園小学校は、これだけに頼らず、どんな学習環境を用意すれば子どもたちの思考力・判断力が高まるのか、先生方が一生懸命考え、試行錯誤しながら体験的な学びを取り入れ、仕組みを作り出してきました。
宮園小学校が取り入れている『学習コーナー』は、プリントなどで身につけた知識や技能を活用しながら進めることになるので、自然と思考力や判断力を身に付けることができます。そして、新たな気づきや疑問が生まれ、それらを確認するために、また教科書やプリントに戻る。
このように、子どもたちは、体験的な学びと教科書・プリントなどを行ったり来たりしながら学びを進めていました。その結果が、知識・技能面だけでなく、思考力、判断力の伸びにつながったのだと感じています」
先生の「子ども観」が変わった!
さらに村田さんは、1年目に自由進度学習を取り入れてから、先生方の「子どもたちを見る目」に大きな変化を感じたといいます。
「実際に自由進度学習に取り組んでみて、課題はあったものの、子どもたち自身でこんなにも学びを進められるんだ、できるんだ、という感覚を、多くの先生が持たれていました。
これまでの一斉授業のような教え方をしなくても、子どもたちは自ら意欲的に学習できると実感し、先生方の『子ども観』が変わっていったように思います。
そして、先生方が自ら、自分たちの役割を、『授業で教える』から『学習環境や教材を整えて、子どもたちの自立的な学びをサポートする』に変換していきました。
だからこそ、体験的な学習を積極的に取り入れるなどの環境整備に力を入れ、『もっと子どもに委ねても大丈夫』とその範囲を広げていったのではないでしょうか」
こうした先生方の意識の変化により、宮園小学校の自由進度学習はさらに進化、拡大していきます。
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第3回では、1年生の自由進度学習や、高学年で実施した複数教科を同時に行う自由進度学習など、さらに進化する宮園小学校の取り組みについてうかがいます。
取材・文 川崎ちづる
※【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦は、全3回。第3回は8月11日公開予定です(公開日までリンク無効)。
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#1 「自由進度学習」で子どもも先生も劇変! 広島・公立小・驚きの実例公開
川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。