話題の「自由進度学習」 子どもの判断力と思考力を鍛える「体験的な学び」とは?
【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦#2「自由進度学習を成立させる4つのアプローチ」
2022.08.09
体験的な学びを中心に据えた自由進度学習を、子どもたちがスムーズかつ有意義に進めるために、以下の4つがポイントになるといいます。
【体験的な学びを取り入れた自由進度学習のポイント】
① 学習内容が明確で質問が出ないプリント(教材)
② 学んだことを繰り返し体験できる環境
③ 学習コーナーの進め方がひと目でわかる説明書
④ 定着を確認し、繰り返しアウトプットさせるチェックシステム
①の「学習内容が明確で質問が出ないプリント」は、体験的な学びだけでなく、全体をスムーズに進めるために大切になるといいます。
「これまで教師が口頭で説明していた部分を含めて、一枚のプリントにわかりやすくまとめることで、子どもたちが自立的に学びを進められる教材になっています。こうしたものを用意すると、子どもたちは安心して学習に取り組むことができます」(川口先生)
ちなみに、3年生の場合はプリントですが、教材の内容や形式は、子どもたちの年齢や特性、教科によって変わります。先生たちは子どもたちの様子をよく観察しながら、その時々の状況に合わせた教材を用意していきます。
②の「学んだことを繰り返し体験できる環境」は、子どものペースで、何度も体験できるコーナーを用意することがポイントになります。
「一斉授業だと、体験的な要素を入れていたとしても、授業中に一度きりということも少なくありません。しかし、『学習コーナー』を別室に、しかも種類を豊富に用意することで、子どもたちは自分のタイミングで何度も手に取って実践することができます」(川口先生)
2021年度の3年生の自由進度学習(算数・理科)では、発展学習も含めて12種類もの学習コーナーを用意しました。子どもたちは自分のやりたいものからチャレンジし、学習コーナーと自分の席を何度も往復しながら学習を進めていました。
③の「学習コーナーの進め方がひと目でわかる説明書」は、②の学習環境を子どもたちが自立的に活用するために重要です。
「当初は必要な道具を用意しておき、教科書やプリントを見ながら学習コーナーに取り組む方法にしていましたが、それではうまく使いこなせない子も多くいました。ですから、学習コーナーごとに詳しい実践の方法や注意点を示した、『説明書き』を付けました」(川口先生)
こうした細かい工夫によって、子どもたちはスムーズに、自立的に学習コーナーを活用できるようになったといいます。
④の「定着を確認し、繰り返しアウトプットさせるチェックシステム」は、学習コーナーなどで得た学びが一般化できているか、確認するための仕組みです。同じことを繰り返してアウトプットさせて、身につけていきます。
「タブレットにある『テストの自動採点機能』などを活用し、子どもそれぞれの実態を把握しています。自動採点してくれるため、子ども自身も自分で理解できたかをすぐに確認できますし、私たち教師にも結果が送られてくるので、何度か間違ってしまった子どもには、個別にフォローすることができます。
また、基本の学習コーナーで学んだことを発展の学習コーナーでも答える仕組みにしています。一般化したことを何度もアウトプットさせることで、定着につなげています」(川口先生)
こうしたポイントを押さえて「仕組み」を作ったことで、子どもたちが体験的な学びを上手に活用できるようになり、楽しく学びながら、同時に思考力や判断力が伸びていきました。