なぜ小学校低学年でもできた? 名古屋発「自由進度学習」の具体的実践法とは

【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦#3「低学年の自由進度学習」

ライター:川崎 ちづる

1年生にも変化 「もっと学びたい」「教えたい」

2022年度の1年生は、2学期から算数の授業のなかで自由進度学習に取り組んでいます。

2年生のような自由進度学習はまだ難しいと感じた1年生の担任・中谷優里先生は、まずは一斉授業で基本的な内容を説明し、その後の練習問題で子どもたちがそれぞれ好きな教材を選んで取り組めるようにしました。

一斉授業で学んでいる様子。  写真提供 矢田小学校

近くの子たちと一緒に取り組んでもいい、席を離れて友だちに教えに行ってもいい、といった基本的なルールは1年生でも同様です。

自分の席で黙々と学習する子、席を離れて友だちと学ぶ子など、それぞれです。  写真提供 矢田小学校

友だちと遊んでしまったり、ボーッとしてしまったりする子はいないのでしょうか?

「子どもたちが何をしていいかわからない状態だと、うまく進まないことはあります。

実は1学期も、少し自由進度学習に取り組んでみたのですが、そのときは説明が不十分だったようで、うまくいきませんでした。なので、一度一斉授業に戻り、基本的な内容をしっかりと説明し、ノートの使い方なども含めてみんなで学習を進めながら、少しずつ子どもたちが選択できる幅を広げていきました」(中谷先生)

そうして続けていくうちに、子どもたちの様子は大きく変わっていったといいます。

「『もっとやりたい』『友だちにも教えてあげたい』といった子がどんどん増えていきました。受け身の子はほとんどいなくなり、学習に関係ないことをしてしまう子もいません。

自分自身で考えながら学習を進めます。  写真提供 矢田小学校
近くの子と一緒に考えることもあります。  写真提供 矢田小学校

子どもたちはやる気がないから学習に取り組まないのではなく、進め方がわからないだけなんです。そこをしっかりとフォローしてあげれば、その後は自分から学習に向き合い、主体的に進めていきます」(中谷先生)

子どもは管理しないと勉強しない。低学年の子どもは特に細かい指導が必要。

大人はそんなふうに考えてしまいがちですが、方法さえわかれば、子どもたちは自ら進んではつらつと学んでいくことがよくわかります。

むしろ、細かく管理しすぎて選択の機会を奪うことが、「無気力」や「受け身」の姿勢を生んでいるのです。

苦手な子にとってもメリットが大きい

「学習内容の定着」という意味でも、やはり自由進度学習の効果は大きいようです。

「一斉授業のときは、早く終わってしまった子は待っている時間が長く、反対に時間のかかる子は終わる前に答え合わせが始まってしまう。効率の悪い部分が多かったと思います。

教員にとっても、自由進度学習は一人ひとりに声をかけやすいですし、困っている子のフォローにもじっくり時間がかけられます。待ち時間が減った分だけ問題を解く量が増える子も多いです。

先生は子どもたちに声をかけながら学習をフォローします。  写真提供 矢田小学校

ただ、全員がたくさん問題を解けばいい、というわけではないと考えています。子どもによっては一つひとつの問題にじっくり取り組むことで、理解が進む場合もあります。

その子のペースを大切にできることが、自由進度学習の効果の高さにつながっていると思います」(中川先生)

さらに1年生の担任・中谷先生は、「友だちとの関わりが子どもたちにとても良い影響を与えている」と話します。

「子どもたち同士で『ここはこうじゃない?』『私はこうやったよ』などと話し合う姿も頻繁に見られます。

自由進度学習を行うと、友だちとの学び合いが自然に生まれます。  写真提供 矢田小学校

一斉授業では、こうした『学んだことのアウトプット』は、挙手で発表するなど一部の子に限られていましたが、自由進度学習では多くの子どもたちが自分の考えや解き方を口に出して説明しています。

そのなかには、これまであまり算数が好きではなかった子も含まれていて、彼、彼女たちの学習に対する姿勢が前向きになったと感じますね」(中谷先生)

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