新・小学校の授業スタイルが「学びの個別化と協同化」で広がる 子どもを勉強ギライにする「一斉授業」を150年ぶりに改革

[小学校教育2.0]#1「学びの個別化と協同化」とは

熊本大学教育学部准教授:苫野 一徳

実践されつつある「一斉じゃない」授業

――「一斉授業」以外にも、授業方法や学びの選択肢があるとわかりました。ただ、現実問題、公立の小学校ではまだまだ一斉学習が主流です。

苫野先生:確かに、日本全国でみれば、一斉授業を行っている学校がまだまだ多いのが現実です。

しかし、小学校では2020年から全面実施されている『新学習指導要領』においては、はっきりと『主体的・対話的で深い学び』が謳われています。

さらに2021年の中教審答申等でも、『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実、『探究学習の推進』などの方向が明確に打ち出されています。これは、今回お話してきた『学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合』と、大きく同じ流れです。

つまり、『いつか変わったらいいな』という夢物語ではなく、すでに大きな転換に向けて、現実が動き出している、ということです。

私はいくつかの自治体や学校で新しいカリキュラムや授業づくり等のお手伝いをしていますが、こうした自治体では、行政が現場の先生をしっかりサポートしながら、子どもの主体性を重視する『学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合』が展開されるようになっています。

この数年で、実践する行政や学校、先生は確実に増え、それぞれすばらしい成果を残しつつあります。

とはいえ、身近なところで変化が感じられない方もいらっしゃるでしょう。

そうした方も、まずは現在の学校で行われている一斉授業が当たり前ではないということ、子どもの『自己選択・自己決定』を大切にした新しい実践があることになどについて知り、関心を持っていただくことが、社会全体で教育をよりよいものへと深めていく大きな力になるのではないでしょうか。

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第2回では、すでに様々な学校で実践されつつある、「個別化・協同化の融合」の具体的な取り組みと、子どもたちの変化について伺います。

取材・文 川崎ちづる

苫野先生が公教育システムの転換について提言した書籍。学校関係者以外もわかりやすい一冊です。『「学校」をつくり直す』(苫野一徳/河出新書)
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とまの いっとく

苫野 一徳

Ittoku Tomano
熊本大学教育学部准教授

哲学者・教育学者。熊本大学教育学部准教授。1980年生まれ。早稲田大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。全国で多くの自治体、学校のアドバイザーも務める。 著書に『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『「学校」をつくり直す』(河出新書)、『公教育をイチから考えよう』(日本評論社/共著)、『愛』『教育の力』(ともに講談社現代新書)、『ほんとうの道徳』(トランスビュー)、他多数。最新刊は『学問としての教育学』(日本評論社/2020.2)。

哲学者・教育学者。熊本大学教育学部准教授。1980年生まれ。早稲田大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。全国で多くの自治体、学校のアドバイザーも務める。 著書に『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『「学校」をつくり直す』(河出新書)、『公教育をイチから考えよう』(日本評論社/共著)、『愛』『教育の力』(ともに講談社現代新書)、『ほんとうの道徳』(トランスビュー)、他多数。最新刊は『学問としての教育学』(日本評論社/2020.2)。

かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。