
【親子インタビュー式読書感想文】最初のステップは「本選び」 極意と絶対に言ってはならない親のNGワード〔文章力養成講座の専門家が解説〕
「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんが解説④ 教材:課題図書『ぼくの色、見つけた!』
2025.07.13
ゆか先生:困ってしまいますよね。そうしたら、どうしてそういう言い方をするのか、普段の子どもの行動から理由を分析してみてください。
決めるのに時間がかかる子なら、急かさずにゆっくり探しましょう。カフェが併設された本屋さんもありますし、買わずに一度外に出て、気分転換してからもう一度本屋に行ってもいいと思います。
──買う本は1冊でいいですか?
ゆか先生:できれば3〜4冊買うと安心です。家に帰っていざ本を開いてみたら、読めそうにないと思うかもしれないので。
──課題図書から選んだ方がいいですか?
ゆか先生:毎年その質問を受けますが、答えはひとつ。お子さんが好きな本が、たまたま課題図書で選ばれた本なら、それでよいです。課題図書にこだわらず、子どもの選択を大切にしてください。
課題図書は、「青少年読書感想部全国コンクール」の「課題図書」選定委員会が選書をしています。選ばれているのは良書ですし、選定理由をHPで公開しているので、本のテーマがわかりやすいのが良い点です。
例えば、色覚障がいを持つ男の子が主人公の『ぼくの色、見つけた!』は、目に見えなくても、だれもが悩みを抱えているんだと考えさせられる一冊です。

ゆか先生:ただし、必ずしも選定理由に書いてある内容を、読書感想文のテーマにする必要はありません。自分なりに感じたことを、見つけてみましょう。
〔ゆか先生の体験例〕どんな本でも読書感想文が書ける!
以前、虫の写真集『アリから みると』(桑原 隆一・文、栗林 慧・写真、福音館書店)を選んだ小学1年生の男の子がいました。「ほとんど文字がないんです。さすがにこれで、読書感想文はかけませんよね」と、お母さんが私に、本屋から電話をかけてきたんです。
私はお母さんを説得してその本を買ってもらい、「読書感想文」に取り組んでもらいました。
本の内容は、アリの視点から見た世界を撮影した写真です。表紙は、大きなショウジョウバッタが迫ってくる迫力のある写真でした。特に気に入った写真がカマキリの顔のアップで、「ギラギラして、左右に離れた目がついた顔を向けらてれて、大きな鎌を振られたら、ぼくはおしっこちびっちゃうかもしれません」と、カマキリの怖さを自分の言葉で書いて、最後は「ぼくは、アリを踏みつけないように歩こうと思います」という文で締める感想文を原稿用紙2枚に書いて、賞も取りました。
親子インタビューのメモを読むと、「最初に本を読んだときは、『すごい』、『おもしろい』しか言わなかったのに、『カマキリににらまれたアリは、どんな気持ちだっただろうね』と聞くと、『それはこわいよ』と返事があった」と書きこまれていました。
そこまで子どもの感想を引き出せたら大成功! 次に、その子が感じた「こわさ」を突きつめて、それを表現するのに一番ピッタリな言葉を教えてあげます。私はよく子どもたちに「こわいにも200種類あんねん(笑)」と言っていますが、「カマキリににらまれたアリ」というシチュエーションから推測できる言葉は、こんな感じです。
「怖じ気づく」
「ひるむ」
「たじろぐ」
子どもは「すごい、めちゃくちゃ便利な言葉があるんだ」と感心した様子でした。このように大人と子どもの会話は言語レベルが違うので、子どもの語彙力を増やす良い練習になります。
この子は、新しく「ひるむ」という言葉を覚えました。例えばその後、大きな人ににらまれる経験をしたとします。すると子どもは「これが『ひるむ』っていう気持ちなんだ」と実感できると思います。それが、「言葉が根付く」ということ。単純に「本」を読むだけでなく、言葉と経験が結びついてこそ、語彙が増えていくのです。
次のステップは、いよいよ本を読みます! そのときにやっておくとよい「感想メモ」の作り方を紹介します。
松嶋 有香
静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」
静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」