子どもの力を伸ばすコツコツ型・ワクワク型 家庭学習の実践方法とは

子どもの「やりたい!」を引き出す家庭学習のヒント#2

高村 ミチカ

学習が楽しくなるヒントは、日常生活の中にこそある。
写真:アフロ

学びを日常生活につなげる「ワクワク型」

次に、「学びを日常生活につなげる学習」を「ワクワク型」と呼びます。「コツコツ型」で身につけた知識・技能を活用して、考える力を伸ばすことに重点を置いているのが、この「ワクワク型」です。

一体どのような学習方法があるのでしょうか。

好きな◯◯紹介します

子どもの好きなへの集中力には、ものすごいパワーがあります。それを利用して、「好きなことを紹介する」という学習をしてみましょう。遊びのようにも見えますが、これも立派な学習です。

なぜなら「紹介をする」ためには、表現する力が必要だからです。

読み手に伝わりやすいような文章構成を考えたり、写真と文を組み合わせて説明をしたり、表やグラフなどを活用したりする力が求められるのです。これらは、学校の国語や算数で学んできたこと。まさに、知識・技能を活用する「ワクワク型」学習といえます。

たとえば、ゲームが好きなお子さんなら、「新しいゲームを買ってもらうために、ゲームの良さをプレゼンする」というのはどうでしょう。複数の事例を挙げながら「ゲームを買うべきだ」という主張を、お家の人が納得するように子どもに説明をしてもらうのです。

ゲーミフィケーションの専門家の話を引用して「ゲームで試行錯誤することが学びになる」ことを力説したり、友達の家族を例に挙げて「家族みんなが仲よくなる」ことを説明したりするような子どももいるかもしれません。

もしも、お家の人が聞いて、まだ納得ができないプレゼンだったら、「『みんな持っている』って、クラスで何人もっているのか調べて、割合で示すとわかりやすいんじゃない?」「実際やっている人にインタビューしてみたら?」などと具体的にアドバイスをしてみましょう。

「グラフや表の使い方は合っているか?」という視点で見ると算数の力に、「適切な事例が挙げられているか?」という視点で見ると国語の力につながります。

このように、生活の中で、国語や算数などの教科で身につけた知識・技能を、いかに活用していくかが大事なのです。

「?」を解決する「調べ学習」

日常生活には、たくさんの「?」が潜んでいます。この「?」から学習を始めるのも1つの手です。

「雲ってどうやってできるの?」「炭酸がシュワシュワするのはなぜ?」「同じものでも値段が違うのはどうして?」「どうやったらオリンピック選手のように速く走れるの?」など、どんなことでも構いません。

身近な疑問が学びへの入り口になります。

疑問が浮かんだら、まず予想をしてみましょう。

たとえば、「どうやったらオリンピック選手のように速く走れるのか」という疑問が出たとします。「特別なトレーニングをしているからかな?」「走り方のコツがあるのかも」と考えることで、「オリンピック選手のトレーニングの仕方を調べてみよう」「いろんな選手の走り方を比較して、走り方のコツを見つけよう」などと調べることが明確になります。

調べる時には、「ネットの情報をまとめて終わり!」にならないように、実際にやってみることを取り入れるといいでしょう。YouTuberの「〜やってみた!」の感覚でやると楽しめます。「オリンピック選手のトレーニング真似してみた」「いろんな選手の走り方比較してみた」のようなイメージで、親子でチャレンジしてみるといいでしょう。

動画を探したり、必要な写真を印刷したりといったところは手伝いが必要になるかもしれません。「面倒だな」という気持ちではなく、お家の方も一緒に楽しんでやってみてください。大人が楽しそうにしていると、子どもも自然とワクワクした気持ちで学習に向かえるようになるからです。

「調べ学習」をすると、情報を整理してまとめる力が身につくだけではなく、テーマによっては、教科の力も伸ばすことができます。たとえば、前述の「オリンピック選手の走り方を分析して、どうやったら速く走れるのか?」を考えることは、体育につながります。「雲ってどうやってできるの?」「炭酸がシュワシュワするのはなぜ?」は理科に、「同じものでも値段が違うのはどうして?」は社会に、それぞれつながっていきます。

とくに、音楽や体育、図工、家庭科などの技能教科は、「できるようになりたい!」という思いが学びの原動力になります。「もっと歌が上手くなるには?」「絵を上手に描くコツって?」などの疑問から「調べ学習」をスタートして、「〜やってみた!」をどんどん楽しんでみるといいでしょう。

「コツコツ型」「ワクワク型」どうやって選ぶ?

これまで、「コツコツ型」と「ワクワク型」の2種類を紹介してきました。この2つは、どちらもバランスよくできるのが理想ですが、子どもによっては、難しいこともあるでしょう。

やることが決まっている方が落ち着く、競争するのが好きといったお子さんは「コツコツ型」から、新しいことを考えるのが好き、どちらかというとのんびりタイプのお子さんは「ワクワク型」から始めるとうまくいきやすくなります。

得意な方から始めることで、子ども自身も楽しみながら学習に取り組むことができるからです。お家の方は、子どもが学習に向かう姿勢をほめることと、できたときに一緒に喜ぶことを徹底してください。

「学習は楽しいものだ」という意識を子どもに持たせることで、苦手な学習にも「頑張ろう」と思えるようになっていきます。

また、「コツコツ型」をしていても、途中で「なぜだろう?」と疑問が生まれた時、「ワクワク型」へと変わります。逆に、「ワクワク型」でも、自分で調べるうちに「コツコツ型」の知識・技能が必要となることがあります。

この2つを必ずやらなきゃ! と縛られるのではなく、子どもの得意なところから柔軟に始めることを意識してみましょう。

次回の第3回では、「学年別家庭学習のヒント〜低学年編〜」をお届けします。お楽しみに!

取材・文/高村ミチカ

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たかむら みちか

高村 ミチカ

教育専門家

東京学芸大学教育学部卒業後、公立小学校に3校勤務し、11年間担任を務める。1〜6年生まで全ての学年を経験。主に国語科を中心に授業研究を行い、子どもが主体的に学ぶ姿を目指した。独自の授業プランが評価され、「教育技術」等教員向けの雑誌の記事執筆経験もある。 現在は、ライターとして活動する傍ら、教員の経験を生かし、オンライン相談サービス「ウチのこは」で教育専門家として活動中。子どもに関することでお悩みの保護者の方や教員の方からの相談を受けている。 ◯教育実践の執筆 ・雑誌「教育技術」(小学館) ・「学力がグーンとアップする!自学力育成プログラム」(明治図書出版) ・「子どもが輝くいい授業作り」(東洋館出版) ・「『見方・考え方』を働かせる実践事例&プラン」(東洋館出版)

東京学芸大学教育学部卒業後、公立小学校に3校勤務し、11年間担任を務める。1〜6年生まで全ての学年を経験。主に国語科を中心に授業研究を行い、子どもが主体的に学ぶ姿を目指した。独自の授業プランが評価され、「教育技術」等教員向けの雑誌の記事執筆経験もある。 現在は、ライターとして活動する傍ら、教員の経験を生かし、オンライン相談サービス「ウチのこは」で教育専門家として活動中。子どもに関することでお悩みの保護者の方や教員の方からの相談を受けている。 ◯教育実践の執筆 ・雑誌「教育技術」(小学館) ・「学力がグーンとアップする!自学力育成プログラム」(明治図書出版) ・「子どもが輝くいい授業作り」(東洋館出版) ・「『見方・考え方』を働かせる実践事例&プラン」(東洋館出版)