低出生体重児は「母子手帳」には何も記録できない…ママやパパを救う「リトルベビーハンドブック」のリアル
小さな赤ちゃんに寄り添う手帳「リトルベビーハンドブック」#1 ~リトルベビーハンドブックとは?~
2023.08.17
国際母子手帳委員会事務局長:板東 あけみ
先輩ママのメッセージに勇気づけられる
では、リトルベビーハンドブックは、具体的にどんな内容なのでしょうか。
「通常の母子手帳の乳児身体発育曲線のメモリが体重1kg、身長40cmからスタートしているのに対し、リトルベビーハンドブックは0kg、0~20cmからスタートしているものがほとんどです。
些細なことに思えるかもしれませんが、自分の子どもの記録を母子手帳に記入できないことがどれだけママたちを傷つけるかを想像してみてください。自分の子どもの存在を拒否されているように思うことさえあります。そんな辛さを救うために、細部にわたって工夫がなされています」(板東さん)
もう一つの大きな特徴としては、先輩ママやパパ、成長した子どもたちからのメッセージが掲載されていること。
「最初は現実が受け入れられずに、塞ぎこむ毎日でした。でも今は、あのときより確実に笑顔が増えました」
「点滴の管やミルクのチューブ、呼吸器などがひとつずつ外れて、かわいい笑顔が見れたときは、うれしかったな」
「“生きていてくれればそれでいい”と常に思っていたので、ひとつひとつの成長が、すべて喜びになりました」
※しずおかリトルベビーハンドブックより引用。
このような先輩ママからのメッセージが、欄外などに数多くあり、そのメッセージはリトルベビーハンドブックを手にしたママたちを励ましてくれています。
「リトルベビーハンドブックは現在、基本的に病院で赤ちゃんがNICU(新生児集中治療管理室)に入院しているときに渡されます。
当たり前のことですが、リトルベビーはどこか特定の地域で多く生まれているわけではありません。同じ県内なのに、こちらの病院ではもらえて、あちらではもらえないということがあってはいけないんです。
すべてのNICUに置いてあり、必要とするママたちに平等に届けられるべきもの。だからこそ地方自治体単位での取り組みが必要なんです」(板東さん)
リトルベビーハンドブックはママへのサポート面でも“必要不可欠”と板東さんは続けます。
「もちろん、リトルベビーハンドブックがあるだけで、リトルベビーの親子が抱えている課題が全部解決するわけではないのはわかっています。
ただ、これがあることで、①県などの自治体、②医療、③地域保健、④当事者の4者のきちんとしたサポートネットワークが成り立っていくきっかけになっていると確信しています。
そんなサポート体制を作り“誰も取り残さない”という思いを広げていくことが何よりも大切だと考えています」(板東さん)
今、ダイバーシティーという考えが広く浸透し、さまざまな立場の人に寄り添う制度ができつつあります。ただ、まだまだ不十分なことも多く、本当の意味で寄り添うには相互理解が必要不可欠です。
そんな、相互理解を求めながらも1歩ずつ歩みを進めたのが、2011年に初めて当事者たちとしてリトルベビーハンドブックを制作した静岡県のリトルベビーサークルの「ポコアポコ」のママたちでした。
次回は、「ポコアポコ」代表の小林さとみさんに完成までの道のりとリトルベビーハンドブックへの思いを伺います。
取材・文/関口千鶴
関口 千鶴
大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon
大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon
板東 あけみ
国際母子手帳委員会 事務局長、特定非営利活動法人HANDS テクニカル・アドバイザー。26年間の京都市での支援学級の教員を経て、51歳のときに大阪大学大学院で国際協力を学ぶ。 国際母子手帳委員会の事務局として、世界中の国々での母子手帳開発に尽力している。2011年にしずおかリトルベビーハンドブックに出会ったのをきっかけに、全国のリトルベビーサークルの支援や、リトルベビーハンドブックの後方支援を行い、行政や医療機関との懸け橋となっている。 ●国際母子手帳委員会
国際母子手帳委員会 事務局長、特定非営利活動法人HANDS テクニカル・アドバイザー。26年間の京都市での支援学級の教員を経て、51歳のときに大阪大学大学院で国際協力を学ぶ。 国際母子手帳委員会の事務局として、世界中の国々での母子手帳開発に尽力している。2011年にしずおかリトルベビーハンドブックに出会ったのをきっかけに、全国のリトルベビーサークルの支援や、リトルベビーハンドブックの後方支援を行い、行政や医療機関との懸け橋となっている。 ●国際母子手帳委員会