「正解はママが決めていい」東大医学部卒のママ医師が語る授乳の真実

教えて、もりたま先生! 「母乳とミルク」のウソ・ホント #3

もりたま先生「赤ちゃんが小さいうちに仕事復帰する予定がなく、赤ちゃんと一緒に過ごすことができて母乳の出も悪くない、トラブルもないというママなら、まずは母乳育児がよいのではないでしょうか。産後早々に仕事復帰するママ、赤ちゃんと離れる時間が長いママは、早い段階からミルク育児に移行することになります。母乳の出が悪い、乳頭が切れてしまってあげられない場合も、ミルクを選んでまったく問題ないと思います。

母乳が出るし続けたいけれど、少し足りない、たまに日中2~3時間預けたい、夜中の授乳はパパに代われるようにしたいといった希望があるママは、混合育児になります。母乳の出具合や状況に合わせて、母乳とミルクの割合を調整していくのがいいのではないでしょうか。

どの選択であっても、ママがつらくない方法であることが正しい答えだと思います。私自身も気を付けなければと思うのですが、授乳を含め、育児はとても個別性の高いこと。

自分が知っている育児と、ほかの家庭の育児はまるで違います。家族構成もお子さんの性格も、ママの体の様子も考え方も、ライフスタイルも違う。自分がいいと思ったことが、ほかのママにとってもいいとは、まったくもって限りません。相手の考えを尊重しないといけないですし、ママも周りから言われたことをそんなに気にしなくて大丈夫(笑)。

ママが何をよいと思うか、ママの選択がいちばん大事です。逆にいうと、誰も正解を教えてくれないからこそ、ママ自身が正解を考えなければいけないのです。どういう子育てをしたいか、正解は自分の中にしかないはずですからね」

――自分がやりたい育児。そこがしっかりしていれば、まわりに惑わされず、自分の気持ちで選ぶことができそうです。

もりたま先生「先輩ママやママ友、おじいちゃん・おばあちゃん、医師や看護師、助産師といったプロフェッショナルな人、いろいろな人の話を聞きつつも、『自分はどうだろう?』というワンクッションは常に必要です。情報にふりまわされることなく、自分の意見に、どうか自信を持っていただきたいですね」

「ママによって、重視したいポイントは違いますよね。母乳にこだわりたいママもいれば、離乳食にこだわりたいママも。ママの気持ちがいちばんです」(もりたま先生)。  写真:村田克己
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子育ては“いかにがんばらないか勝負”

――私事ですが、母乳育児がまったくうまくいかず、痛くて泣きながら授乳していた経験があります。ネット上に飛び交う情報を真に受けて悩んだり、罪悪感を抱えたり。「がんばったら飲めるようになった」「続けていれば痛みにも慣れる」という体験談を読むと、「私のがんばりが足りないのか」と落ち込んだことも……。

もりたま先生「難しいところですよね。悩んでいるときにネットで検索すると、自分のほしい情報ばかり目に入ってきてしまうことがあります。本当は母乳育児がうまくいかなかった体験談もたくさんあったのに、目に入るのはうまくいった体験談ばかり。検索ワードも自分で選んでいるわけで、さらにキュレーションもされていくと、どんどんほかの情報が入ってこなくなってしまいます。そういう意味でも、考えが偏らないように広い情報を取り込むのはすごく大事。私は本が好きだったので、育児のすき間時間を見つけては、あらゆる本を読むようにしていました。

がんばって自分の思う通りに進むケースももちろんありますが、子育ては“いかにがんばらないか勝負”だと、私は思います。必要のないがんばりは、しなくてもいい。そうじゃないと、子育ては次から次へといろいろなことが起こるのに、体がもちませんよね(笑)。母乳でもミルクでも、ママ自身が楽しく過ごせる方法をぜひ探していただきたいなと思います」

母乳かミルクか、混合か。どれにするか悩むのは、赤ちゃんの将来を真剣に考えているからこそ。でも、どれを選んでも、実はそれほど大きな問題ではないのだと教えてくれたもりたま先生。“母乳神話”とともに語られる噂の中には、エビデンスがないもの、現段階では明言できないものも多々ありました。

それでなくても、心配事だらけの乳児期。大切なのは、母子がいつもニコニコ笑って過ごせること。そして、ママの選択をパパや家族、まわりの人々が温かく見守ることなのではないでしょうか。

最新著書『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)が発売中。睡眠という視点から、ママの悩みに寄り添います。  写真:村田克己

取材・文/星野早百合

教えて、もりたま先生! 「母乳とミルク」のウソ・ホント
#1 「母乳・ミルク・混合」結局どれがいいの?
#2 「母乳とミルク」噂を一刀両断

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もりた まりこ

森田 麻里子

医師・小児睡眠コンサルタント

Child Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。2017年に長男、2020年に次男を出産。長男の夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究を徹底的に調査。赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。最新著書『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)のほか、『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』(ダイヤモンド社)、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)が発売中。 「Child Health Laboratory」  https://child.healthlabs.jp/

Child Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。2017年に長男、2020年に次男を出産。長男の夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究を徹底的に調査。赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。最新著書『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)のほか、『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』(ダイヤモンド社)、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)が発売中。 「Child Health Laboratory」  https://child.healthlabs.jp/