シングルマザー・2度の離婚を経て 南果歩が見つけた子育ての「正解」

初の絵本『一生ぶんの だっこ』に込めた想いと 27歳息子との関係

山口 真央

女優の南果歩さんが子育て中に体験した、息子さんの忘れられない一言とは。

子育てをしているなかで、ふと「この子に何を与えられるだろう」と不安に思ったことはないでしょうか。子どもの成長は早く感じられるもの。限られた子育ての時間、我に返ったとき、子どもに絶対的な「何か」を与えたいと思う方は多いはず。

女優の南果歩さんが、そんな想いの答えとなるような絵本を執筆しました。その名も『一生ぶんの だっこ』。南さんの息子さんは27歳(2022年12月現在)。結婚されて、立派に独り立ちされています。

この記事では絵本『一生ぶんの だっこ』をもとに、南さんが子育て中に体験した、息子さんの忘れられない一言や、変化する息子との関係のなかで見えてきたこと、また絵本『一生ぶんの だっこ』に込めた想いについて伺いました。

子育ては一方通行じゃなくキャッチボール

──お子さんの子育て中に起きた、印象的なエピソードを教えてください。

「息子が幼いころに、ことあるごとに『あなたは母さんの宝物』と伝えてきました。あまりに言いすぎて、息子が転んですりむいたときにも『母さんの宝物が!』と言って泣いてしまうほど(笑)。幼稚園に通っているときにシングルマザーになりましたが、ずっと変わらない愛情を注いできました。

息子の腕には、生まれつき赤いあざがあります。私は息子のあざを『あなたのサインだ』と言って育ててきました。幼稚園の年中のとき、息子が右腕をあげて『これって、僕が迷子になったときのサインになるでしょう』と言ったんです。言葉の力は偉大。私が口にした言葉は、そのまま息子の言葉になって、息子を支えていることに驚きました」

息子さんは「あざを含めて自分自身」と思っているそう。そんな息子さんを、南果歩さんは誇らしく思っています。

「また同じころだったと思うのですが、シングルマザー時代に仕事が忙しくて疲れ果ててしまったとき、息子との夕飯を食べながら、突然泣いてしまったことがありました。そのときに息子が、

『母さん、男の子でも女の子でも、泣きたいときは泣いていいんだよ。大人でも子どもでも、泣いていいんだよ』

と言ったんです。私が普段から息子に伝えていた言葉でしたが、息子が自分の心で解釈して、私に投げ返してきてくれた。子育てって一方通行じゃなく、キャッチボールなんですよね。この言葉は、何よりの励みになりました」

絵本『一生ぶんの だっこ』の1ページ。泣いている子ぐまを抱きしめるお母さんぐまの姿に、胸が熱くなります。

息子との「丁度いい」関係を築くまで

──息子さんが成長するにつれて、変わったこと、変わらないことはありますか。

「息子が思春期になると、派手なものではなかったけれど、もちろん反抗期がありました。そのときは、寂しさよりも私もそれを楽しんでいたという感じですね。ちょっと前までは「母さん、母さん」って言ってたのに、反抗的な言葉を吐くことも成長の過程なんだなと。

子どもって、自分の記憶から薄れていったものを、見せてくれる存在だと思うんです。私も若かったころ、親のことを疎ましく思っていた時期がありました。あのときの親がこんな気持ちだったのかと知ると、また新鮮な気持ちで親と接することができたり。人生ってそうやって、繰り返していくものなんですよね」

シングルマザー、再婚を経て、お子さんを育てた南果歩さん。変化する人生のなかで、変わらず息子さんに与えてきたものとは。

「変わらないことと言えば、ずっと愛情を注ぎ続けていることでしょうか。息子はいま27歳ですが、QUEENの『too much love will kill you』がどこかで掛かるたび「母さんのテーマソングだよ」と笑われます(笑)。

今は息子夫婦と一緒に暮らしていますけど、生活のリズムはばらばら。結婚して、義理の娘となった妻と仲良くやっていってもらうことが一番なので、干渉せず、タイミングが合うときにご飯を一緒に食べたりしています。多くを知りたがらないようにするのが、独り立ちした子どもと丁度いい関係を築くコツかもしれません」

心の拠りどころがある人はたくさん冒険できる

──絵本『一生ぶんの だっこ』ができた、きっかけを教えてください。

「東日本大震災や熊本地震のあと、被災地の保育園や幼稚園、小児病棟へ出向いて、絵本の読み聞かせをしていました。絵本の読み聞かせを通して、少しでも心を癒やしてほしいと思っていたし、子どもたちとコミュニケーションを取ることも楽しかったんです。

新型コロナウイルスが流行りはじめてからも、リモートでの読み聞かせ活動をしていました。でも映像に残るとなると、出版社などの許可がなかなか下りず、読める絵本が少なくなってしまったんです。

そんなとき、息子が小さいころに書いていた物語を思い出しました。原稿用紙を引っ張り出して書き直し、絵のない絵本として読むことになったのが『一生ぶんの だっこ』のはじまりです。読み聞かせを聞いてくださった方から「絵本にしてほしい」というリクエストをたくさんいただき、このたび、形にすることができました」

執筆された絵本『一生ぶんの だっこ』を手にする南果歩さん。「この絵本をスキンシップの道具にしてほしい」と話します。

「『一生ぶんの だっこ』では、子ぐまの<ぼく>が、さまざまな思いを経験するたびに、お母さんぐまにだっこしてもらいます。そして<ぼく>はまた、世界に立ち向かっていく。安心感の象徴として<だっこ>を描きました。

心の拠りどころがある人って、たくさん冒険できるじゃないですか。物語を書いた当時、子育てに追われるなかで、いろんなものを息子に与えたいと焦っていたけれど、結局、帰れる場所をつくってあげることが一番だと思い至りました。

安心できる場所は、親に限らず、友人でも祖父母でもいい。息子に『too much love』といじられてしまうけど、変わらない愛情を注いできたからこそ、息子は他者と比べることなく自分の人生を歩んでいると感じています。

読者の方はぜひ、この絵本を通して、お子さんに絶対的な安心感を伝えてあげてください。きっと親御さんもお子さんに愛情を伝えるなかで、思いがけない愛情を返してもらえる瞬間に恵まれるはずです」

一生ぶんのだっこ

カメラマン/野口貴司
スタイリスト/坂本久仁子
ヘアメイク/国府田圭
取材・文/山口真央

ニットベスト、ブラウス、スカート/パサンド バイ ヌキテパ(ヌキテパ) イヤリング、リング/マナ ローザ(マナ ローザ ジュエル) 靴/三喜商事(マレーラ)

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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生ま...