村上康成×はたこうしろう 絵本作家の修行時代
~絵本作家をめざすあなたへ~
2020.12.18
自然のなかで育つ感性
村上 やっぱり命が関わっているものって、絶対的にかっこいいはずなんですよ。色、形もすべて含めて生きるべくして生きる姿になっている。そういう、ほとばしるものすべてが美しいわけで、それに気付いてほしいなと思うね。人が作っていることも楽しいけれども、本当に、路傍にぽっと咲く一輪の花が、わっ、きれいって気付いちゃうとラッキーだなと思う。空の形、雲の形が変わっていくだけでもラッキー。「時が流れていくぜ」って思うわけじゃないですか。風があっちからあっちに吹いているのかとかね。
はた たぶん、村上さんは、川を見ると、その川の、今、そこには何がいるのか、たぶん見えているんだと思うんですよ。でも、そういう目を持っていない人が川へいっても、見えないじゃないですか。ただ水面しか。で、僕は虫が好きなので、森の中へいくと、あそこにはエゴノキがあるから、たぶん、この時期だと、エゴヒゲナガゾウムシのオスがあの辺にいて、メスはあの辺にいてとか分かる。それは見るだけで、楽しいんですよ。それがある人生とない人生とではね、やっぱり全然違うと思う。
村上 ああ、綺麗だなとか、美味しいなとか、すごいなっていう、感受性。絵の世界に歩んでいった場合は、それがあるかないかで大きな違いがでてくると思うんだ。たぶん絵描きさんは美意識を持っているでしょ。自分たちのその美意識を、やっぱりどんどん自分で育てていかなきゃならないと思う。
昆虫の、コガネムシのぴかっと光っている部分なんだけど、金属的かと思いきや、よくよく見れば毛が生えているわけですよね。カナブンでも、カブトムシでもね。
自分の絵本作りをするときに、そんなふうに自分で、おお! って感動できるかっていうところがバロメーターなのかな。そういうのは、体が反応してるのね。それってやっぱり、とてつもない文学になるわけですよね。
はた そうですよね。そうやって楽しみながらいろいろ吸収して、絵本で伝えてほしいな。
村上康成 プロフィールと絵本
むらかみやすなり●1955年岐阜県生まれ。創作絵本、ワイルドライフ・アート、オリジナルグッズなど、幅広い分野で独自の世界を展開。『ピンクとスノーじいさん』『ようこそ森へ』(ともに徳間書店)、『プレゼント』(BL出版)でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、『ピンク! パール!』(徳間書店)でブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌、『なつのいけ』(ひかりのくに)で日本絵本大賞受賞。伊豆高原と石垣島にギャラリーがある。
はたこうしろう プロフィールと絵本
プロフィール はたこうしろう●1963年兵庫県生まれ。絵本作家、デザイナー、イラストレーターとして活躍。ブックデザインも多く手がける。 絵本に『ゆらゆらばしのうえで』『ことりの ゆうびんやさん』(ともに福音館書店)、『ガタゴトシュットンなんのおと?』(学研)、『なつのいちにち』(偕成社)、『雪のかえりみち』(岩崎書店)、「ショコラちゃん」シリーズ(講談社)、『こいぬ、いたらいいなあ』(フレーベル館)、『はじめてずかん どうぶつ(1)(2)』(コクヨS&T)などがある。