2024年10月20日(日)まで! きのこの正体がわかる、珍きのこが見られる、きのこを狩れる大人気イベント「きのこ展」が筑波実験植物園で開催!

きのこ研究者の保坂健太郎博士が「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズのきのこ描写にうなる!【前編】

〔きのこ〕となめくじの珍標本、発見!

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──きのこと、なめくじの関係がわかる珍しい標本とはどんなものですか?

保坂:偶然できた標本が、こちらです。

偶然標本になった、きのこを食べるなめくじ 写真:講談社写真部

保坂:非常に珍しいのですが、採取したきのこを急いで凍結乾燥してオイルに漬けたら、きのこを食べていたなめくじも一緒に漬かっちゃったんですね。

絵本ではきのこたちが戦ってなめくじをやっつけますが、実際は敵ではないかもしれません。きのこはなめくじに食べられることで、胞子をばらまくことができるという側面もあると思います。きのこの胞子はなめくじに食べられても分解されないので、糞になって排出された場所で新たに繁殖できますから。

──果物が、実を食べた鳥に種子を運んでもらうのと似ていますね。

保坂:きのこは「山の恵み」とも言われていて、イノシシなどの動物や虫の餌にもなっています。胞子をばらまく前に食べられてしまうと目的は果たせませんが、胞子を出せる状態になったら、逆にどんどん食べてください、となっているのかもしれません。「いかに効率良く胞子をばらまくか」という目的によって、きのこの形状もいろいろ発展したのだと思います。

実は、絵本に出てくるキヌガサタケは、胞子がネバネバの粘液に入っているので、風で胞子を飛ばすことができません。

──胞子が飛ばなかったら、きのこになった意味がないですよね。それでは、キヌガサタケはどうやって増えるんですか?

石川基子さんのデビュー作『ほしじいたけ ほしばあたけ』

『ほしじいたけ ほしばあたけ』作・石川基子/講談社
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ほさか けんたろう

保坂 健太郎

国立科学博物館 植物研究部菌類・藻類研究グループ 研究主幹

国立科学博物館 植物研究部菌類・藻類研究グループ 研究主幹。菌類、特に担子菌類(きのこの仲間)の分類・系統・生物地理学を研究。著書に『きのこの不思議: きのこの生態・進化・生きる環境 (子供の科学★サイエンスブックス)』(誠文堂新光社刊) 監修書に『増補改訂新版 日本のきのこ』(山と渓谷社刊)『きのこのほん』(小社刊)など多数。

国立科学博物館 植物研究部菌類・藻類研究グループ 研究主幹。菌類、特に担子菌類(きのこの仲間)の分類・系統・生物地理学を研究。著書に『きのこの不思議: きのこの生態・進化・生きる環境 (子供の科学★サイエンスブックス)』(誠文堂新光社刊) 監修書に『増補改訂新版 日本のきのこ』(山と渓谷社刊)『きのこのほん』(小社刊)など多数。