2024年10月20日(日)まで! きのこの正体がわかる、珍きのこが見られる、きのこを狩れる大人気イベント「きのこ展」が筑波実験植物園で開催!
きのこ研究者の保坂健太郎博士が「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズのきのこ描写にうなる!【前編】
2024.10.11
きのこの旬は秋じゃない! 【知られざるきのこの常識①】
保坂健太郎(以下、保坂):きのこ・菌類の研究者は世界的に少なく、わかっていないことが多いんです。でも実は種の多様性でいうと、植物より多く、昆虫よりも多いかもしれない。現状でも、1年間に1500~2000種類の新種が発表されていますが、そのペースだと1000年かかっても地球上の全種を記録しきれないというところに、おもしろさがあります。
ちょっと山に行けば、新種だと思われるものがたくさんあるんですよ。ただ、見つけるのが難しい。なぜなら、私たちが普段見慣れている、しいたけのようなぷっくりしたきのこの姿は、期間限定だからです。きのこは一生のほとんどの期間を、我々人間の目には見えない姿で過ごしているんですよ。
──きのこの「見えない姿」とは、なんですか?
保坂:私たちが見たり食べたりしている「きのこ」は、植物でいうと「花」や「実」で、専門用語では「子実体(しじつたい)」と呼ばれます。きのこの本体は「菌糸」です。菌糸が集まってきのこの元になる「原基」になり、それが発達すると、私たちがよく知る柄とカサがある「きのこ」の子実体になります。
今回の「きのこ展2024」では、きのこの本体である「菌糸」と、きのこが分布を拡大するために飛ばす「胞子」について、最新の研究結果も含めて深く紹介します。特に注目していただきたいのが、菌糸が伸びる様子を撮影した動きのある映像です。菌糸がグワッと伸びる様子や、胞子をブワッと飛ばす様子など、きのこたちが動く姿に注目してほしいですね。
──菌糸の状態と生えてくるきのこの形は、似ているところがありますか?
保坂:ほとんどの菌糸は無色透明で、たくさん集まると白く見えます。栽培キットで販売されているしいたけの菌糸は、白くてホワホワした状態で見ることができます。強いてあげるなら、子実体が赤い種類は、真っ赤な菌糸だったりすることもあるので、色は関係があるかもしれませんね。
保坂:子実体(きのこ)の状態にならないと、僕たちは獲ることができないというところが、宝探しみたいでおもしろいですよね。しかも生えて胞子を飛ばしたら、すぐに腐ってしまうので、その時期を狙わないと出会うことができないんです。
──では、秋は大忙しですね。
保坂:きのこの旬は秋だと思っている人は多いですが、実際は一年中生えます。カエンタケやタマゴタケなど、「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズに出てくる大きくて派手なきのこは、夏にたくさん生えます。そして、地味で茶色く、しめじのような外見をしているきのこの多くは、秋が深まる時期に生えます。生えているきのこをランダムに集めると、夏の方が圧倒的に多いんですよ。
──それは知りませんでした。秋になるとまつたけがお店に並ぶので、てっきりほかのきのこも秋が旬だと思っていました。
保坂:まつたけは栽培できないから、自然に生えたものを獲るしかない。地域によって時期は違いますが、本州では10月上旬~中旬ごろに穫れるので、秋が旬だというイメージが強いんでしょうね。
きのこの天敵はなめくじ! 【知られざるきのこの常識②】
──保坂先生が、絵本「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズで「これはきのこの生態をよく描いているな」と思ったところはどこですか?
保坂:2巻目の『ほしじいたけ ほしばあたけ じめじめ谷でききいっぱつ!』のなかの、なめくじがきのこを襲うシーンです。これは本当にきのこの生態をよく表していて、特にこの大きなヤマナメクジが、きのこについていることが多い。僕たちにとっても天敵で、きれいなきのこだなと思って獲ると、大部分が食われていたりすることがあり、標本にならないので困っています(笑)。
──生態や大きさも、リアルな描写なんですね。
保坂:そうです。だから過去の「きのこ展」で、「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズを展示物として紹介させていただきました。僕の研究所には、しいたけとなめくじの関係がよくわかる、おもしろい標本があるんですよ。