『あらしのよるに』【全7巻 全ページ試し読み】380万部の国民的ベストセラー 20年ぶり“奇跡“の新シリーズが3月12日スタート! 

シリーズ累計発行部数380万部を誇るロングセラー『あらしのよるに』を全ページ無料公開!

児童図書編集チーム

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オオカミのガブとヤギのメイが「食う・食われる」の関係を超えて友情を育む物語、『あらしのよるに』。
「ともだちだけど、おいしそう」のキャッチコピーで親しまれる本作は、1994年の初刊行以来、多くの読者に愛され続けています。

そしてこのたび、20年ぶりとなる新刊『新あらしのよるにシリーズ(1) あいことばはあらしのよるに』が3月12日(水)に発売されます!

新刊の発売を記念し、『あらしのよるに』シリーズ全7巻の期間限定無料公開が決定!
本記事では、本シリーズのはじまりの物語『あらしのよるに』を全文公開いたします。

嵐の夜、偶然出会ったガブとメイ。
暗闇の中、互いの正体を知らぬまま、2匹はどのような会話を交わしたのでしょうか。

ガブとメイのはじまりの物語『あらしのよるに』

『大型版あらしのよるに』カバー

作:きむらゆういち 絵:あべ弘士
※全ページ公開は4月10日(木)をもって、終了いたします。

ごうごうと たたきつけてきた。
それは 『あめ』というより、
おそいかかる みずの つぶたちだ。
あれくるった よるの あらしは、
その つぶたちを、
ちっぽけな ヤギの からだに、
みぎから ひだりから、
ちからまかせに ぶつけてくる。

しろい ヤギは、やっとの おもいで
おかを すべりおり、こわれかけた 
ちいさな こやに もぐりこんだ。

くらやみの なかで、ヤギは からだを やすめ、
じっと、あらしの やむのを まつ。
ガタン!
だれかが こやの なかに はいってくる。
ハアハアという いきづかい。
なにものだろう?
ヤギは じっと みを ひそめ、みみを そばだてた。

コツン ズズ、コツン ズズー。
いっぽ いっぽ、かたい ものが ゆかを たたいて やってくる。
ひづめの おとだ。
なあんだ、それなら ヤギに ちがいない。
ヤギは ほっとして、そいつに こえを かけた。
「すごい あらしですね。」

「え? おや、こいつは ひつれい、ハア ハア、しやした。
まっくらで、ちっとも、ハア ハア、きが つきやせんで。」
あいては ちょっと おどろいて 、あらい いきで こたえる。
「わたしも、いま とびこんできたところですよ。
しかし、こんなに ひどく なるとはね。」
「まったく。……おかげで あしは くじくし、
おいらは もう さんざんですよ。ふう〜~。」

あいては、やっと おおきく ためいきを つき、
つえに していた ぼうきれを ゆかに おく、。
と いうことは……。

そう、その つえを ついて やってきた くろい かげは、
ヤギでは なく、オオカミだったのだ。
とくに、この オオカミ、するどい きばを もち、
ヤギの にくが だいこうぶつと きている。
「あなたが きてくれて、ほっとしましたよ。」

ヤギの ほうは、あいてが オオカミだとは、まだ きが つかない。
「そりゃあ、おいらだって、あらしの よるに、こんな こやに
ひとりぼっちじゃ、こころぼそく なっちまいやすよ。」
どうやら オオカミの ほうも、あいてが ヤギだとは きづいていない。

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