中学生の「ヤングケアラー・生活保護・貧困」問題 傑作小説『むこう岸』がNHKでドラマ化 原作者の喜びの声

各賞受賞 安田夏菜の傑作児童文学が待望のドラマ化!

▲特集ドラマ「むこう岸」NHK総合 2024年5月6日(月・祝)21:30~22:43

中学生の前に立ちはだかる「貧困」というリアル

家庭に問題を抱え生活保護で暮らす少女と、有名私立中学をドロップアウトした少年との出会いを通して、ヤングケアラー・貧困問題を描いた「むこう岸」がNHKで実写ドラマとして放映される。〔2024年5月6日(月・祝)夜9:30~10:43(総合)〕

原作小説『むこう岸』(2018年刊)は、中学生の前に立ちはだかる「貧困」をはじめとした社会問題をリアルに描いた児童文学作品。「日本児童文学者協会賞」「貧困ジャーナリズム大賞」を受賞、国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ」にも選定された力作だ。

「むこう岸」にいる人間同士、助け合うことはできるのか。出会うはずのなかった2人は、やがて奇跡を起こし──!

立ちはだかる「貧困」に対し、中学生に為す術はあるのか? 少女と少年が自らの状況を打開し、未来への希望を見出してゆく姿を描く作品の映像化に期待が高まる。

原作者・安田夏菜さんも、ドラマ化に喜びのコメントを寄せた。

「このたび『むこう岸』がドラマ化されることになりました。そう、担当編集者さんからうかがったとき、驚きと共に胸がいっぱいになりました。育てたわが子を送り出す、親のような心境です。和真、樹希、アベル。

本の中にいた彼らが、俳優さんの演技でページから飛び立ちます。そして、生きて動いているその姿を、たくさんの皆さまに見ていただける。親としてこれほど、ワクワクすることがあるでしょうか。

この本が刊行されて5年以上たちますが、書かれている社会情勢はあまり変わっていません。このドラマをきっかけに彼らの思いを、よりいっそう感じとっていただければ、とても嬉しく思います」

特集ドラマ「むこう岸」

【ドラマあらすじ】
とある公立中学校に転校してきた山之内和真は、「有名私立中学で落ちこぼれた」という秘密を、クラスメイトの佐野樹希に知られてしまう。「取り引きしない?」と樹希に命じられたのは、彼女を慕う口のきけない少年・アベルに勉強を教えることだった。

エリート主義の父親からのプレッシャーに悩んでいた和真は、近所のカフェのマスターが子どもたちに開放している小さな部屋で、アベルや樹希と過ごすうちに、自分の居場所を見つけてゆく。だが、病気の母と幼い妹を抱え、生活保護を受けて暮らす樹希は、将来に希望が持てず、なりたかった看護師の夢もあきらめていた。

そんな樹希を見かねて、「理不尽だよ」と和真が手にしたのは「生活保護手帳」。大人でも難解な内容を読み解き、なんとか解決策を見つけようと奮闘する。そして、ケースワーカーや塾講師など、周囲の大人たちを巻き込みながら、ついに起死回生の一手を見つけ出す。

だが、その矢先、事件は起きた! はたして和真の未来は? 樹希は夢を取り戻せるのか?

【放送予定】5月6日(月・祝)
夜9:30~10:43(総合)

【放送時間】73分

【出演】西山蓮都/石田莉子/サニー マックレンドン
岡田義徳/酒井若菜/遠藤久美子/森永悠希/山下リオ
渋川清彦

【原作】安田夏菜「むこう岸」
【脚本】澤井香織
【演出】吉川久岳(ランプ)
【制作統括】齋藤圭介(NHK)、西村崇(NHKエンタープライズ)、石井智久(ランプ)

──────────────────────────────────────

原作小説「むこう岸」

▲ヤングケアラーの少女と、進学に挫折した少年との出会いを通して、貧困などの社会問題を描いた小説「むこう岸」(著:安田夏菜)。

【対象:小学校高学年以上】
第59回日本児童文学者協会賞受賞作品。貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞受賞作品。

児童文学作家、ひこ・田中氏がイッキ読み! 「『貧乏なのはそいつの責任』なんて蹴っ飛ばし、権利を守るため、地道に情報を集める二人。うん。痛快だ。」

小さなころから、勉強だけは得意だった山之内和真は、必死の受験勉強の末、有名進学校である「蒼洋中学」に合格するが、トップレベルの生徒たちとの埋めようもない能力の差を見せつけられ、中3になって公立中学への転校を余儀なくされた。
ちっちゃいころからタフな女の子だった佐野樹希は、小5のとき、パパを事故で亡くした。残された母のお腹には新しい命が宿っていた。いまは母と妹と3人、生活保護を受けて暮らしている。
ふとしたきっかけで顔を出すようになった『カフェ・居場所』で互いの生活環境を知る二人。和真は「生活レベルが低い人たちが苦手だ」と樹希に苦手意識を持ち、樹希は「恵まれた家で育ってきたくせに」と、和真が見せる甘さを許せない。
中学生の前に立ちはだかる「貧困」というリアルに、彼ら自身が解決のために動けることはないのだろうか。
講談社児童文学新人賞出身作家が、中3の少年と少女とともに、手探りで探し当てた一筋の光。それは、生易しくはないけれど、たしかな手応えをもっていた──。

やすだ かな

安田 夏菜

Kana Yasuda
作家

兵庫県西宮市生まれ。大阪教育大学卒業。『あしたも、さんかく』で第54回講談社児童文学新人賞に佳作入選(出版にあたり『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』と改題)。第5回上方落語台本募集で入賞した創作落語が、天満天神繁昌亭にて口演される。『むこう岸』で第59回日本児童文学者協会賞、貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞を受賞。国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ」選定。ほかの著書に、『ケロニャンヌ』『レイさんといた夏』『おしごとのおはなし お笑い芸人 なんでやねーん!』(以上、講談社)、『あの日とおなじ空』(文研出版)などがある。日本児童文学者協会会員。

兵庫県西宮市生まれ。大阪教育大学卒業。『あしたも、さんかく』で第54回講談社児童文学新人賞に佳作入選(出版にあたり『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』と改題)。第5回上方落語台本募集で入賞した創作落語が、天満天神繁昌亭にて口演される。『むこう岸』で第59回日本児童文学者協会賞、貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞を受賞。国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ」選定。ほかの著書に、『ケロニャンヌ』『レイさんといた夏』『おしごとのおはなし お笑い芸人 なんでやねーん!』(以上、講談社)、『あの日とおなじ空』(文研出版)などがある。日本児童文学者協会会員。