課題図書〔小学生低学年の部〕全冊レビュー〔2025年青少年読書感想文全国コンクール〕 「友達とのトラブルが増えました」という小学校低学年の子どもと読む

「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんがレビューする「2025年課題図書」

松嶋 有香

書影『ライオンのくにのネズミ』
『ライオンのくにのネズミ』作:さかとくみ雪、中央公論新社、1,760円
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〈あらすじ〉
想像してみてください。ライオンの学校に転校したネズミの気持ちを。画面いっぱいに描かれた、体も声も大きいライオンに、読んでいる私たちも圧倒されます。そんな中、やっと心を通わせるリスの友人ができます。でも、あれ? もしかして、ライオンも、ネズミと友だちになりたいのかも。

〈この本で読書感想文を書くときのポイント〉
この本には、いろいろな動物が出てきます。お子さんはどの動物に感情移入するのか、楽しみですね。

「こんな子いるよね!」
「私はリスかな」
「どうしてこの子はいつもスカーフを巻いているんだろう」
と、親子で話してみるのも楽しいでしょう。「実はぼくはライオンかもしれない」ということもあるかもしれません。それでもいいんです。

他人との「違い」に良い悪いがあるのか。そもそもなぜ違うのか。お子さんと話し合ってみてくださいね。最後のページとその2つ前のページ、ぜひ、何度も見比べてください。

少年の心の葛藤を描いた『ぼくのねこポー』拾ってきたネコは実は友達の家のネコだった

書影『ぼくのねこポー』
『ぼくのねこポー』作:岩瀬成子、絵:松成真理子、PHP研究所、1,430円

〈あらすじ〉
ぼくは、道ばたで見つけたねこがほしくなりました。捨てられていたからと親に噓をつき、飼うことになります。ある日、転校してきた森くんという男の子が「実は、飼っていたねこが行方不明なんだ」と言います。見つけたねこと森くんのねこ。特徴もそっくり。その日から、ぼくの心の戦いが始まります。

〈読書感想文を書くときのポイント〉
ぼくが拾ってきたねこは、森くんのねこに違いない。物語にぐいぐいと引き込まれます。

まったく同じような経験はないにしても、このような罪悪感を経験したことは、誰にでもあるもの。秘密、噓、それはどんどん、おりのように心にたまっていきます。本当はどうしたらいいのか、心のどこかで分かっている。そんな、分かっている自分が、今の自分に話しかけてきます。親子で「こんな経験したことある?」「お母さんもあるのよ」などと話してみてくださいね。ぼくを応援したくなる人もいるかもしれませんね。

この本を読み終わったあと、まだ心につかえていることがあります。それが、この本には書かれていない宿題なのです。

複雑な心の変化を見事に描いた『ともだち』仲良し2人組にもう1人加わったらどうなる? 

書影『ともだち』
『ともだち』作:リンダ・サラ、絵:ベンジー・デイヴィス、訳:しらいすみこ、ひさかたチャイルド、1,760円

〈あらすじ〉
ぼくにとって、エトはかけがえのない大親友。いつも一緒に遊んでいます。ある日、シューという男の子がやってきて、いっしょに遊びたいと言いました。友達が増えて、楽しくなった? いえいえ、そんな単純な話ではなさそうです。ぼくはだんだん仲間外れになったような気持ちになっていきます。

〈読書感想文を書くときのポイント〉
大好きで、ずっとこのままで一緒にいたいと思えるような友だち。そこに新しい友達が来たら……。

大人だったら「よくあるよね」と即答するような心の変化を、この絵本は丁寧に描いています。1ページめくるたびに、変わる主人公の心境。ゆっくりと絵をみて、その心の変化をたどってみましょう。

アマガエルが自分自身について語る写真絵本『ワレワレはアマガエル』

書影『ワレワレはアマガエル』
『ワレワレはアマガエル』文・写真:松橋利光、アリス館、1,870円

〈あらすじ〉
カエルを絵に描いてみて。黄緑色で、口が大きくて、目が出ていて……その特徴はずばりアマガエル。オタマジャクシがアマガエルになるまでの成長過程や、食べものである虫のつかまえ方などを、アマガエル自身が語ってくれます。

〈読書感想文を書くときのポイント〉
ほとんど文章がない、写真集に近い本です。実は、こういう本こそ、読書感想文にはぴったり! だって、著者の文章がほとんどないので、自然と自分の「感想」を書くしかないからなんです。

アマガエルの生態を見て、驚いたところ、気づいたところ、不思議に思ったこと、もっと調べたいと思ったこと、どんどん言葉にしてみましょう。

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【読書感想文に対する認識が180度変わる!】連載企画「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんが解説 教材:課題図書『ぼくの色、見つけた!

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まつしま ゆか

松嶋 有香

Yuka Matushima
文章力養成コーチ、教育コンサルタント

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」