越川くんがすまなそうに示したのは、がっしりした木製の戸棚。ガラスの扉の中には古そうなこけしがずらりと並んでいる。大きいのや小さいの、全部で30個以上ありそうだ。
キリさん
「こけしなんかにビビってんのかよ。」
キリさんが茶々を入れると、越川くんが取りなした。
越川
「こけしってちょっと不気味ですよね。ぼくも苦手で。」
磯崎さんも部屋をのぞきこむ。
磯崎
「これ、越川さんの親せきの方のですか?」
越川
「そうみたいです。ジャマだし捨てようかなぁ。この家にある物の処分はまかされてるんで。古いこけしをコレクションしてる人もいるらしいけど、ぼくには魅力がわかりませんね。夜中に目が覚めて大量のこけしと目が合ったらこわくないですか?」
マッキーは深くうなずいた。
マッキー
「だよね。ぼく、上のベッドで寝ようっと。」
越川
「それがいいですね。磯崎さんは向かいの3号室、桐久さんはとなりの2号室ですね。各部屋に鍵はついてないんで貴重品はロッカーに入れてください。あ、そうだ。お風呂、入りますよね。」
3人はまたくじを引き、順番に風呂を使うと、それぞれの部屋で眠りについた。
そして、翌朝。
マッキー
「ひえぇ――――――っ!」
キリさんは、マッキーのさけび声で飛び起きた。
キリさん
「なんだ、どうした!?」
マッキーは部屋の前に飛び出してガタガタふるえている。
越川くんと磯崎さんもやってきた。
マッキー
「ちょっと……あれ見てよ!」
みんな
「え? うわっ!」