【試し読み連載】5分で読める都道府県ミステリー!「こけしたちの鳴くところ」(宮城県)

『日本一周ナゾトキ珍道中』[5]

粟生 こずえ

越川くんがすまなそうに示したのは、がっしりした木製の戸棚。ガラスの扉の中には古そうなこけしがずらりと並んでいる。大きいのや小さいの、全部で30個以上ありそうだ。

キリさん

「こけしなんかにビビってんのかよ。」

キリさんが茶々を入れると、越川くんが取りなした。

越川

「こけしってちょっと不気味ですよね。ぼくも苦手で。」

磯崎さんも部屋をのぞきこむ。

磯崎

「これ、越川さんの親せきの方のですか?」

越川

「そうみたいです。ジャマだし捨てようかなぁ。この家にある物の処分はまかされてるんで。古いこけしをコレクションしてる人もいるらしいけど、ぼくには魅力がわかりませんね。夜中に目が覚めて大量のこけしと目が合ったらこわくないですか?」

マッキーは深くうなずいた。

マッキー

「だよね。ぼく、上のベッドで寝ようっと。」

越川

「それがいいですね。磯崎さんは向かいの3号室、桐久さんはとなりの2号室ですね。各部屋に鍵はついてないんで貴重品はロッカーに入れてください。あ、そうだ。お風呂、入りますよね。」

3人はまたくじを引き、順番に風呂を使うと、それぞれの部屋で眠りについた。

そして、翌朝。

マッキー

「ひえぇ――――――っ!」

キリさんは、マッキーのさけび声で飛び起きた。

キリさん

「なんだ、どうした!?」

マッキーは部屋の前に飛び出してガタガタふるえている。

越川くんと磯崎さんもやってきた。

マッキー

「ちょっと……あれ見てよ!」

みんな

「え? うわっ!」

次のページへ マッキーの泊まった部屋で……
73 件