【試し読み連載】5分で読める都道府県ミステリー!「こけしたちの鳴くところ」(宮城県)

『日本一周ナゾトキ珍道中』[5]

粟生 こずえ

イラスト:井出エミ
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1話5分で読めて、楽しく47都道府県が学べる新感覚のミステリー短編集『日本一周ナゾトキ珍道中』(粟生こずえ・著)が好評発売中! この記事では書籍のなかから、宮城県が舞台のお話をご紹介。とあるゲストハウスに泊まることになったキリさんとマッキー。その夜、おそろしい出来事がマッキーにおそいかかる……!

イラスト:井出エミ

越川

「桐久さんと牧野さんですね。お待ちしてました! ぼくが越川です。」

車から降りたキリさんとマッキーを、越川くんは満面の笑みで出迎えた。

キリさん

「どうも、桐久です。お招きありがとう。」

マッキー

「ぼくは牧野です。ゲストハウスって、ふつうの家みたいな感じなんですね。」

越川

「もとはふつうの家ですからね。さっそく写真を撮ってもいいですか?」

越川くんの求めに応じ、キリさんとマッキーは「ゲストハウスこしかわ」という看板に手をかけてポーズをとった。

東京育ちの越川くんがここに移住してきたのはつい最近だ。かつて遠い親戚が住んでいたもののずっと空き家になっていた一軒家を改装して、ゲストハウスをオープンさせたのである。

ゲストハウスとはシンプルな宿泊施設のこと。宿泊料は安く、初対面の客同士が相部屋になることもある。部屋にはベッドがあるくらいで、お風呂や洗面所、トイレは共用。食事はキッチンで自炊できるところが多い。

越川

「ありがとうございます。桐久さんみたいな有名人が来てくれたなんてすごい宣伝になりますよ。」

越川くんはキリさんの大ファンだった。そこで「宮城県に来ることがあれば無料で泊めるので宣伝に協力してほしい」とメールを送ってよこしたのである。

3人がリビングルームで雑談していると、もうひとりお客がやってきた。

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