〔野間児童文芸賞受賞〕小説家デビューへの道・創作のための「3つのポイント」 児童文学作家・長谷川まりるさんに聞く

長谷川まりるさんインタビュー<後編>

高木 香織

ファンタジー好きだった子ども時代

――子どものころから本はお好きだったのですか。

長谷川さん:
いえ、野山で遊んでいました。初めて本を読んだのは小学4年生くらいのときです。

家にあったローラ・インガルス・ワイルダーの『大きな森の小さな家』を読みました。私の実家は自給自足といった暮らしでしたから、ローラの家の様子に「わかるわかる~」と共感しました。でも、大草原シリーズで読んだのはその1作だけなんです。

▲大草原の小さな家シリーズ『大きな森の小さな家』』(画像は新装版)
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──草原に行く前の、おとうさんが森を開墾していたころのお話ですね。もう少し大きくなってからは、どんな本を読まれましたか。

長谷川さん:
私はファンタジー世代なんです。『ハリー・ポッター』『ダレン・シャン』『バーティミアス』のシリーズを読みまくりました。すっかり影響されて、私もファンタジーを書いているんですよ。

──ワクワクするお話ですよね。

物語を書きたい人のための「3つのアドバイス」

──この記事の読者には、作家志望の方もいらっしゃると思います。物語を書くためにおすすめのことがありますか。

長谷川さん:
3つのポイントがあります。まず1つ目は、映画をたくさん観ること。とくに児童文学を書きたいなら、ぜったいディズニー映画を観たほうがいいです。ハリウッド映画やディズニー映画は「3幕構成(※)」で作られているんですよ。

〈※「3幕構成」とは、物語を3つの幕(要素)に分けて構成すること〉

最初の3分の1は状況説明をして楽しい雰囲気で進みます。中盤で取り返しのつかない衝撃的な大事件が起き、最後の3分の1で主人公が覚悟を決めてけじめをつけます。

『お絵かき禁止の国』も、映画を参考にして「3幕構成」で書きました。

本を読むのは時間がかかりますけど、映画なら2時間で終わりますよね。そこもいいところです。映画好きが高じて映画館でアルバイトをしていたこともありました。

ホラー映画以外は何でも観ます。映画館に行くときは、まとめて2~3本観たりします。

▲映画好きと語る長谷川まりるさん。第62回野間児童文芸賞を受賞した『杉森くんを殺すには』も、映画を見てインスピレーションを得たことが執筆のきっかけだったそう。

ーー「3つのポイント」の、2つ目はなんですか。

長谷川さん:
2つ目は、最初は自分の好きなものを全部入れること。自分の好きなものをいっぱい書くことです。

――興味のあることを盛り込むのですね。

長谷川さん:
そうです。そして3つ目は、書いた作品を他の人に読んでもらうことです。そして、いろいろな意見をもらって、直すべきところに気がついてからが始まりです。

――人に見せることが大事なのですね。

長谷川さん:
はい。まず一度自分で書いてみて、人から「こうしたらいいんじゃない」という意見をもらうこと。ただ、すべてを真に受けなくてもいいんですよ。3~4人の違う人から言われたら初めて「直そうかな」と思うくらい図太くていいと思います。

ファンタジーをはじめ、いろいろな物語にチャレンジしたい

──これからどんな小説を書いていきたいですか。

長谷川さん:
面白いお話を書きたいのが一番です。ファンタジーをもっと書きたいですね。大人向けの本も含めて、無理のない範囲でいろいろ書いてみようと思っています。今年は、魔法使いが出てくるファンタジーの本が出版予定です。

──どんなワクワクするファンタジーストーリーなのでしょう。作品の幅を広げていかれる意欲にあふれる長谷川さんに、元気をもらったような気がします。今日はすてきなお話をありがとうございました!

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長谷川まりるさんにお話を伺う連載は前後編。前編では、第62回野間児童文芸賞を受賞した『杉森くんを殺すには』についてお聞きしました。後編となる今回は、作家への道のりと創作のアドバイスについてお聞きしました。

【講談社児童文学新人賞】

児童を読者対象とした自作未発表の作品を対象とした公募新人文学賞。はじめて物語に出会う子どもたちへの童話から、未来を生きる力となるヤングアダルト小説まで、オリジナリティあふれる作品を募集。柏葉幸子、斉藤洋、森絵都、はやみねかおるなど、多くの作家を輩出した児童文学の新人賞として知られている。

撮影/市谷明美

お絵かき禁止の国(講談社)
杉森くんを殺すには (くもん出版)
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はせがわ まりる

長谷川 まりる

Marie-Lou Hasegawa
作家

長野県生まれ、東京育ち。『お絵かき禁止の国』で第59回講談社児童文学新人賞佳作を受賞、同作で講談社よりデビュー。『かすみ川の人魚』(講談社)で第55回日本児童文学者協会新人賞受賞。『杉森くんを殺すには』(くもん出版)で第62回野間児童文芸賞受賞。その他の作品に『満天inサマラファーム』(講談社)、『キノトリ/カナイ 流され者のラジオ』(静山社)、『砂漠の旅ガラス』(小学館 絵も担当)がある。

長野県生まれ、東京育ち。『お絵かき禁止の国』で第59回講談社児童文学新人賞佳作を受賞、同作で講談社よりデビュー。『かすみ川の人魚』(講談社)で第55回日本児童文学者協会新人賞受賞。『杉森くんを殺すには』(くもん出版)で第62回野間児童文芸賞受賞。その他の作品に『満天inサマラファーム』(講談社)、『キノトリ/カナイ 流され者のラジオ』(静山社)、『砂漠の旅ガラス』(小学館 絵も担当)がある。

たかぎ かおり

高木 香織

Kaori Takagi
編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。