水色の台紙に、ピンクの紙に書いたひらがなが1文字ずつ貼ってある。
マッキー
「『あ』『た』『ま』『い』『た』『い』?」
聖司
「ぼくが教えた『頭』の慣用句を使って返事してきたわけですよ。」
キリさん
「悪いけど、聖司くんは手紙になんて書いたのか教えてくれないか?」
キリさんがたずねると、聖司くんはまた少し顔を赤らめる。
聖司
「直球で。『みらんだ きょうで おわかれなんて さびしいよ。きみが すきです』……って。」
キリさんはミランダさんからの返事をじっとながめた。「頭が痛い」は何かについて「困っている」とか「悩んでいる」という意味だ。もう少し拡大解釈すると「めんどうだ」とか……どっちにしろいい意味ではない。
マッキーがポンと手を打った。
マッキー
「わかった! もしかして、今日ミランダさんは頭痛がするんじゃないの。それを聖司くんだけにうったえてるとか?」
聖司
「どう見ても元気そのものですよ。」
キリさんとマッキーは聖司くんの指さすほうをながめた。
金色の髪をポニーテールにしているのがミランダさんらしい。女の子たちと手を取り合ってだれよりも勢いよくとびはね、楽しそうに声をはり上げている。
キリさんは、水色の紙片をじっとながめた。
キリさん
「ちなみに、聖司くんのほかにミランダさんを好きな可能性のある子はいないの?」
聖司
「います。ミランダと同じ班の時坂(ときさか)ってヤツ。時坂もミランダとすごく仲がいいです。じつはこの返事は、時坂から渡されたんですよ。ミランダから頼まれたって。」
キリさん
「ふむ。なぜ、ミランダさんはきみへの返事を時坂くんに預けたのかな。きみの顔を見たくもなかったからか。反対に、聖司くんが好きで照れくさかったからか……。」
聖司くんは不可解な顔をした。キリさんは聖司くんの背中を軽く押し、仲間のところにもどるよううながした。
キリさん
「これが終わったら、ミランダさんとふたりだけでちゃんと話しておいで。オレの推理では――時坂くんがやきもちを焼いてこの手紙をいじったんじゃないかと思うね。」
【Q】
キリさんは、ミランダさんからの返事は、第三者が手を加えたものだと推理した。どういうわけだろうか。