「江戸時代の長崎」が舞台の青春ミステリー 「講談社児童文学新人賞」受賞 授賞式速報(東京都・文京区)

13歳が主人公の時代小説が新人賞に輝く

▲『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』で第65回 講談社児童文学新人賞を受賞した荒川衣歩(あらかわ・いほ)さん

斉藤洋、柏葉幸子、森絵都、はやみねかおるなど、多くの人気作家を輩出した新人賞として知られる「講談社児童文学新人賞」の授賞式が、10月16日(2024年)に東京都・文京区の講談社で開催された。

第65回を迎えた今回は、江戸末期を舞台に長崎出島の史実も織り交ぜた青春ミステリー作品、荒川衣歩(あらかわ・いほ)の『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』が受賞した。

新人賞受賞作品は単行本として刊行される。賞金は50万円。

▲授賞式では賞状と賞金が講談社第三事業本部副本部長より授与された

授賞式では、各選考委員が受賞者に対する祝辞を述べ、受賞者に賞状と賞金を授与した。

新人賞を受賞した荒川衣歩は、「講談社児童文学新人賞は、児童文学を書く人ならみな一度は憧れる賞、大きなプレッシャーを感じている」とコメントしつつも、選考委員一同からの祝辞を受け「あたたかい言葉を励みに、これからも良い作品を書いていきたい」と感謝の意を表した。

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』

第65回 児童文学新人賞(2024度)には522作品の応募があり、一次・二次選考を経て、候補が5作品に絞られたのち、同年8月28日に最終選考会が行われた。

最終選考会は、安東みきえ、如月かずさ、村上しいこを選考委員に迎え、講談社・児童図書出版部編集長を加えた4名で行われ、新人賞を決定した。佳作は該当作なし。

◆新人賞
正賞 賞状・記念品 / 副賞 50万円・単行本として刊行

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』

荒川衣歩(あらかわ・いほ) 

【あらすじ】

時は江戸末期。古手屋(古着屋)の娘・てまりは、裁縫が得意な十三歳。彼女は、日本唯一の対外貿易港だった長崎で、遠い世界に憧れを募らせ暮らしていた。そんなある日、店に古いはんてんが持ち込まれ、翌日には売れてしまうということがあった。

売り手も買い手も一見客。しかも派手で雑な継布があててあるという珍品だ。奇妙に思ったてまりだったが……。

講談社児童文学新人賞とは

講談社児童文学新人賞は、子どもたちのための、オリジナリティあふれる作品を発掘する新人賞。1959年に講談社創立50周年記念の文学賞として創設、現在では児童文学作家の登竜門として知られている。

これまでの受賞作は、松谷みよ子 『龍の子太郎』(第1回)、福永令三 『クレヨン王国の十二カ月』(第5回)をはじめ、柏葉幸子『気ちがい通りのリナ』(『霧のむこうのふしぎな町』に改題して刊行:第15回)、斉藤洋 『ルドルフとイッパイアッテナ』(第27回)、森絵都『リズム』(第31回)や椰月美智子 『十二歳』(第42回)など、児童文学から一般文芸まで幅広く活躍する作家・作品を輩出している。

撮影/村田克己

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