“ひとり親インフラ”を目指す無料トークアプリで孤育てや仕事と生活基盤までサポート!

ひとり親限定トークアプリ「ペアチル」#3~ペアチルでできること~

一般社団法人ペアチル代表理事:南 翔伍

シングル親専用のトークアプリ「ペアチル」では、早く広く多様な意見がもらえるAI回答機能付き掲示板のβ版を2024年3月に公開予定。  イメージ写真:アフロ
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東京都福祉保健局による2019年(平成31年)の調査によると、シングルマザーの約3人に1人、シングルファーザーの2人に1人は、相談や交流ができる、ひとり親の仲間や友人がいません。その多くは、「機会がない」「出会い方がわからない」といった理由です。

人から孤立しがちで、サポート情報も入手しづらいひとり親に向けて、似た境遇のひとり親と出会い、気軽にコミュニケーションできる場として開発されたスマホ用アプリが「ペアチル」です。

2023年6月にリリースし、同年8月にはすぐれたベビーテック商品を表彰するイベント「BabyTech® Awards Japan 2023保護者支援サービス部門」で大賞を受賞しました。

今回は、マッチングの仕方や気になる安全性や機能について、開発者の一般社団法人ペアチル代表理事・南翔伍(みなみ・しょうご)さんに伺いました。

※3回目/全3回(#1#2を読む)

●南 翔伍(みなみ・しょうご)PROFILE
一般社団法人ペアチル代表理事。山梨大学教育人間科学部生活社会教育コース卒業。小・中学、高校、特別支援学校の教員免許を取得。IT企業、発達障害者の就労支援、養育費未払い問題の解決に取り組む事業に携わったのち、2022年に一般社団法人ペアチル設立。自身の経験とテクノロジーを掛け合わせて、ひとり親が抱える問題の解決に挑む。

一般社団法人ペアチル代表理事の南翔伍さん。  Zoom取材にて

“境遇タグ”で素早く簡単にマッチング

仕事をしながらひとりで子どもを育てるのは、並大抵のことではありません。あわただしさから自分の時間や心のゆとりがなくなり、いつの間にか孤独な状態に陥ってしまうことも。

そうしたひとり親の「“望まない孤独”をなくしたかった」と話す開発者の一般社団法人ペアチル代表理事・南翔伍(みなみ・しょうご)さん自身も、母子家庭の出身です。

「母親はいつも気丈でしたが、ひとりで悩む姿も見てきました。無力な自分がとてもくやしかった。過去の母親のように孤独な状況にあるひとり親の力になりたいという思いが常にあり、『ペアチル』の開発に至りました」(南さん)

2023年6月リリース以降、半年で2000DLを超えた「ペアチル」。ひとり親といっても、ひとりになった経緯や、子どもの人数・性別・障害の有無など、その境遇はさまざまです。

境遇が違えば困りごとも異なり、ひとり親同士でも話が合わなかったり、悩みを分かってもらえないことも。そのため「ペアチル」で、もっとも重視しているのが“境遇が近い”ことです。

「#子育ての相談ができる人がいない」「#子どもがADHD」「#転職活動中」など、利用者が自由に設定できる“境遇タグ”が大きな特徴。このタグと、基本情報をもとに、アルゴリズムを用いた自動レコメンド表示により、素早く簡単に共通点の多い人を見つけることができます。

たとえば「#働き方」や「#キャリアアップ」。経済状況の改善は、心のゆとりを生むための重要なテーマです。だからこそ「子育てしながらキャリアアップができるのか」「資格取得の支援制度があるとは聞いたが、自分が使えるのか分からない」「制度の手続きが難しそうで、できる気がしない」などと、悩む人が多いと南さんは話します。

ペアチル利用者であり、キャリアアップに悩んでいたシングルマザーAさんからの声です。

「ペアチルで、同じ資格の取得を目指しているシングルマザーと出会い、資格取得支援制度を利用することで子育て中でもスキルアップできることがわかりました。

制度の利用方法や申請のポイント、さらには勉強方法まで具体的に教えてもらい、おかげで私も資格取得に向けての第一歩を踏み出す勇気が持てました。将来的にはより良い職場環境で働くことができると期待しています。ペアチルがなければ、このような貴重な情報や、励ましを得ることはできなかったです」(Aさん)

ペアチルでは、境遇タグのほかに、「ディズニー大好き」など興味や関心のあることや、仕事や子育てについての考え方を「好み・考え方カード」として設定できます。こうして、より価値観の合う人を見つけやすくなっています。

2024年中には、X(旧Twitter)のようなつぶやける機能も実装予定。  写真提供:一般社団法人ペアチル

アプリを利用できるのは、現在ひとり親か、過去にひとり親だった人限定です(状況が確認できれば、これからひとり親になる方も利用OK)。スマホでアプリをDL後、メールアドレスとパスワードを入力して会員登録、プロフィール情報を入力すればスタートできます。

プロフィール情報には、親子の年齢や子どもの人数、住まいなどをはじめ、養育費の受け取り、面会交流の状況など20項目ほどを入力。安全性を重視するため、運転免許証などの本人確認書類の提出も必須です。

登録が少し手間ですが、「なりすまし防止策となり、安心して利用できる」と利用者からの声。それらの設定後、つながりたい相手が見つかったら「メッセージを送る」で、個人間でのトークができます。

「フルタイムで働いています」など仕事に関するカードもあり、働き方の相談も需要が高い。  写真提供:一般社団法人ペアチル

通報やブロック機能に本人確認書類で安心安全に利用

オンラインであるがゆえ、安全性は特に気になるところです。

「迷惑行為を受けたり不審な人がいれば、運営へ通報することができます。運営側で状況を確認し、強制退会などの措置を取ります。また、メッセージの受信拒否や相手に検索表示されないようにするブロック機能もあります。

登録段階で細かく個人情報を入れていただくうえ、本人確認書類の提出がマストなので、入り口のハードルは高いと認識しています。

そのため、本来の目的以外で利用しているケースは、これまで1件もありません」(南さん)

本人確認書類など審査を通過したひとり親が使っていること、さらに通報・ブロック機能もあることで安心安全に利用できる。  写真提供:一般社団法人ペアチル

利用者層は30代女性がもっとも多く、男女比は女9:男1。シングルファーザーの場合、「地域のママ友の輪に入れない」「娘の子育てで分からないことだらけ」などの悩みから利用する方が多いそうです。

「僕の母もそうでしたが、とくに地方ではリアルの場で、ひとり親と出会う機会が少ないんです。シングルファーザーの方からは、『娘の子育てに迷うところがあり、ママさんたちに意見をもらえて助かっている』といった声をいただいています。

先日は、シングルマザーの方から『ペアチルで出会ったママと子どもたちでバーベキューをしました!』と写真付きで連絡をいただき、最高にほっこりしました」(南さん)

安心して話せる場があるということが、ポジティブにはたらいていることがよくわかります。

「やっぱり『話す』って大切なんだと痛感しています。当事者同士、自分の思いを吐き出すことで心理的な回復が見られるからです。親が気持ち的に楽になれば、子どもに対する態度も変化していき、子どもの健やかな成長にもつながります」(南さん)

ひとり親のインフラを作る

「ペアチル」では、アプリ会員限定で、ネットショップも展開しています。企業との提携により30~90%オフで日用品や化粧品などを販売。そのほか行政書士への遺言書相談や、家事代行サービスなど、ひとり親家庭の生活をサポートする特典も用意されています。

「今後は、トーク機能を基軸に、ネットショッピングや保険サービス、スキルアップしたい場合は支援制度と連携した養成機関へつなぐなど、アプリ内で複数の機能やサービスを統合した『スーパーアプリ』へと展開予定です。ひとり親領域のインフラを作りたいんです」(南さん)

さらに2024年3月には、「AI回答機能付き掲示板」機能が開始予定です。

ひとり親の課題の一つに“情報の格差”を挙げ、背景には「情報収集するスキル・時間・気力の不足が大きな原因」と指摘する南さん。「こうした課題を一気に解決するには、AIの『大規模言語モデル』がうってつけ」と言います。

「今は、1対1の人同士によるトークしかできませんが、早く、広く、さまざまな意見を求めたいという場面もあると思います。

今回導入する『AI回答機能付き掲示板』は、質問を投稿すれば、AIと、多数のペアチル利用者から回答をもらえるというサービスです。ちなみに、ひとり親向けサービスで大規模言語モデルを扱うのは初めてのことです」(南さん)

孤独は目には見えにくいものですが、ひとり親家庭を取り巻く問題のボトルネックにあると南さんは考えています。日常のちょっとしたときに「しんどいな」と吐き出せたり、気軽に相談できる人が身近にいれば、孤独感がやわらぎ、心にゆとりがもてる。

「子どもがハッピーになるために、まずは親がハッピーでいられるように」と、ひとり親が抱える問題解決に向けて、南さんの挑戦は続きます。

取材・文/稲葉美映子

※ペアチルの記事は全3回(公開日までリンク無効)
#1
#2

【参考】
ひとり親家庭の相談状況等に関する調査報告書【暫定版】/平成31年3月 東京都福祉保健局少子社会対策部育成支援課

●関連サイト
一般社団法人ペアチル
・X(旧Twitter) @parchil_org
・LINE ペアチル
・Instagram ペアチル【公式】ひとり親限定トークアプリ
・note ペアチル_ひとり親限定のトークアプリ運営
・Facebook 一般社団法人ペアチル

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みなみ しょうご

南 翔伍

Syogo Minami
一般社団法人ペアチル代表理事

一般社団法人ペアチル代表理事。山梨大学教育人間科学部生活社会教育コース卒業。小・中学、高校、特別支援学校の教員免許を取得。大学在学中から子どもの貧困や障害に関するNPO法人などで精力的に活動。大学3年時には任意団体「心友」を立ち上げ、「人には話しづらい深刻な悩みを抱えた」中高生向けにお寺で語り合う活動を実施。卒業後はIT企業でデジタルマーケティングのアナリストに従事。 発達障害のある大人への就労支援や養育費未払い問題の解決に取り組む事業に携わったのち、2022年に一般社団法人ペアチル設立。貧困・虐待・非行・ひとり親……と自身の経験とテクノロジーを掛け合わせて、ひとり親が抱える問題の解決に挑む。 ・南 翔伍Facebook ・X(旧Twitter) @minami_shiroInc ・note 南翔伍/ひとり親限定のトークアプリ「ペアチル」開発 ・一般社団法人ペアチル公式HP ・Facebook 一般社団法人ペアチル

一般社団法人ペアチル代表理事。山梨大学教育人間科学部生活社会教育コース卒業。小・中学、高校、特別支援学校の教員免許を取得。大学在学中から子どもの貧困や障害に関するNPO法人などで精力的に活動。大学3年時には任意団体「心友」を立ち上げ、「人には話しづらい深刻な悩みを抱えた」中高生向けにお寺で語り合う活動を実施。卒業後はIT企業でデジタルマーケティングのアナリストに従事。 発達障害のある大人への就労支援や養育費未払い問題の解決に取り組む事業に携わったのち、2022年に一般社団法人ペアチル設立。貧困・虐待・非行・ひとり親……と自身の経験とテクノロジーを掛け合わせて、ひとり親が抱える問題の解決に挑む。 ・南 翔伍Facebook ・X(旧Twitter) @minami_shiroInc ・note 南翔伍/ひとり親限定のトークアプリ「ペアチル」開発 ・一般社団法人ペアチル公式HP ・Facebook 一般社団法人ペアチル

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。