直接の指導や支援会議への参加を通じてこれまで2000人をこえる子どもの支援に関わり、さまざまな特性を持つ子どもたちと過ごしてきた、特別支援教育のエキスパート・小嶋悠紀(こじま ゆうき)先生。彼が、さまざまな特性を持つ子どもたちと接して、支援を行うための100の考え方やスキルをまとめた本『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』がベストセラーになっています。
今回は、そんな小嶋先生に、特性がある子と上手に接するためのスキルを教えていただきました。
大事な法則は見つめる/微笑む/話しかける/触れる/ほめる
──まず、発達障害がある子と接するときに、最初に意識しなければいけないことは、どんなことなのでしょうか?
小嶋悠紀先生(以下小嶋先生):発達障害の子に接するときに大切なのは、「安心感を与えること」です。私が最も基本的なスキルだと思ってあちこちで紹介している「ベーシック5」〈※倉敷市立短期大学の平山諭(ひらやま さとし)教授(故人)が「セロトニン5」として提唱〉について、まずはお話しします。
① 見つめる
子どもが自分のほうを見てきたら、大人は目を合わせて見つめ返してあげましょう。ただし、「子どもが見てきたとき」だけで十分です。子どもが集中しているときに、話しかけるのはNGです。
② 微笑む
大人は、いつでもにこやかに子どもに接してあげましょう。子どもがこちらを見てきたときは、とくに笑みが大事になります。ポイントは歯を見せて笑うことです。人間の脳は、歯を見せて笑うことで「笑み」を認知できます。歯がポイントですので、そこは外さないようにしてください。
③ 話しかける
この「話しかける」は、とても大切です。朝起きたら、すぐに話しかけてあげてください。とくに教師に絶対やってほしいのは、「月曜日の朝一番に話しかけること」です。
④ 触れる
子どもが望ましい行動をしていて、その行動をもっと強化したいときは、たくさん触れるようにしてください。タッピングと呼ばれる方法があります。ポン、と肩を軽くタッチしてあげてください。ポポーンと、素早く2回タッチするのもいいでしょう。ただし、頭をなでるのはNGです。発達障害の子は、頭を上からなでられると圧迫感を覚えます。触れたりなでたりするときは、必ず手を横から差し出すようにしましょう。
⑤ ほめる
一口に「ほめる」といっても、いろいろあります。大声で「すごいっ!」と声を上げるのも「ほめる」だし、小声で、「すご~い」とつぶやくように言うのも「ほめる」です。いろんなほめ方があって、強弱を使いわけることで子どもの脳に与えられる刺激も変わります。ほめ方は、実はとても奥が深いのです。また、ほめるときには、同時に必ず、身につけてほしい「望ましい行動」や「スキル」を子どもに伝えなければ、十分な支援にはなりません。