「もう◯歳なのに」はNG! 個人差のある「注意力」と身支度・癇癪(かんしゃく)の関係、対応を専門家が解説

感受性と注意力で読み解く子どもの「困った」行動#2 注意力が狭い子

注意力と言葉の力はつながっている

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実は、注意力は言葉で説明する力とも関係しています。

「頭の中に大きなバケツがあり、中にはさまざまな言葉のカードが入っていると考えてみてください。

質問に答えるときは、このバケツをのぞき込んで、自分の感じたことに近いカードを探します。それらを順序よく並べ、文章を組み立てて自分の気持ちや状況などを伝えているのです。

注意力が狭いと、このバケツの中を見渡すことができません。一部ばかりに目がいって、広い視野を持つことが難しいからです。当然、カードを探すのに時間がかかりますし、並べ替えるのも苦手です。言葉で説明する一連の作業がスムーズにできません」(野藤氏)

普段からこうした状態のため、何か突発的なことが起こると、特に言葉で説明するのは難しくなります。

「先ほどの積み木の例で考えると、崩れたときに『どうしたの?』『大丈夫?』などと言われても、言葉が見つかりません。見つかってもうまく順序立てられないので、焦って余計になにを言えばいいのか混乱しているのです。言葉で説明できないから行動で示している状態、ということもできます」(野藤氏)

かんしゃくの最中に説明を求めると、子どもはより混乱してしまいます。  写真:yamasan/イメージマート

そもそも、幼児はまだ十分に語彙力が育っていないため、かんしゃくを起こしやすい時期でもあります。「我慢する力が足りない」などと子どもを責めずに、落ち着いて対応しましょう。こうした試行錯誤を繰り返しながら、子どもは自分で感情をコントロールすることを学んでいくのです。

ただ、あまりにも頻繁にかんしゃくを起こす、保護者が対応にとまどうほどかんしゃくが激しいといったときは、子どもはとても疲れ、混乱しているのです。子どもを成長を守り、保護者も子育てに自信をなくさないように、「専門家に相談することも大切」と野藤氏。

「かんしゃくだけでなく、他にも気になることがたくさんある場合は、悩まず子どもの発達を専門とする医師らに頼ってください。その子に必要な情報や対応がより具体的になるでしょう」(野藤氏)
※医師の受診時の注意点については第4回で解説します。

「できるようになる」以上に大切なこと

着替えや食事などは、幼児期に保護者や大人が支援することで、時間とともに自分でできるようになっていく子がほとんどです。一方で、片づけや物の管理などに関しては、難しい場合もあるといいます。

繰り返し教えてもできないことは、その子にとって『覚えられないこと』『できないこと』です。注意力は生まれ持った能力で、努力したからといって必ず身につく、できるようになるわけではありません」(野藤氏)

保護者はどうしても、一人でできることを増やしてあげなければいけない、それが将来の子どもの幸せにつながる、と力が入ってしまいますが、「できるようになる(する)」ことばかりにとらわれると、見失ってしまうものがあると野藤氏は指摘します。

「大人が『できる=良い』『できない=ダメ』という態度で接していれば、それは子どもにも伝わります。その結果、できない自分はダメな子なんだ、価値のない子なんだと感じるようになるでしょう。さらには、周りの子のことも『○○ができないなんて仲良くはできない』と見下すようになってしまいます。

人に優劣をつけて、できない自分や他人を否定する人生は、果たして幸せでしょうか」(野藤氏)

誰にもできること・できないこと、得意なこと・苦手なことがあります。そうした前提に立ち、「できないことがある自分」を認め、素直に助けを求められるようになることこそが大切です。

「生まれ持った注意力の範囲に合わせて、できないことは否定せずに繰り返し手伝う。失敗してしまったときは一緒にどうしたらいいか考える。保護者がそういう姿を見せることで、子どもはできないことを受け入れ、自分の注意力のままで工夫して生きる方法を見つけていくのです」(野藤氏)

小学校入学後は、持ち物の準備や管理などが求められるようになり、注意力の狭い子にとっては難しい場面が増えていきます。第3回は、注意力が狭い子や感受性が敏感な子を持つ保護者が、小学校入学後に出てくる問題への対応方法などについてうかがいます。

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Photo by 川端アリ

【野藤弘幸 プロフィール】
作業療法学博士。発達障害領域の作業療法の臨床、大学教授を経て、現在は、「育てにくい」「言うことを聞かない」「自分でしようとしない」など、大人がそう思う乳児期から青年期の子どもたちと、その子どもたちの養育者に携わる保育者への研修、講演活動を行う。著書に『発達障害のこどもを行き詰まらせない保育実践~すべてのこどもに通じる理解と対応』(郁洋舎)、その他保育雑誌への連載などを担当。

取材・文 川崎ちづる

【感受性と注意力で読み解く子どもの「困った」行動】の連載は、全4回。
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※公開日までリンク無効

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Hiroyuki Notoh
作業療法学博士

作業療法学博士。発達障害領域の作業療法の臨床、大学教授を経て、現在は、「育てにくい」「言うことを聞かない」「自分でしようとしない」など、大人がそう思う乳児期から青年期の子どもたちと、その子どもたちの養育者に携わる保育者への研修、講演活動を行う。著書に『発達障害のこどもを行き詰まらせない保育実践~すべてのこどもに通じる理解と対応』(郁洋舎)、その他保育雑誌への連載などを担当。  ※Photo by 川端アリ

作業療法学博士。発達障害領域の作業療法の臨床、大学教授を経て、現在は、「育てにくい」「言うことを聞かない」「自分でしようとしない」など、大人がそう思う乳児期から青年期の子どもたちと、その子どもたちの養育者に携わる保育者への研修、講演活動を行う。著書に『発達障害のこどもを行き詰まらせない保育実践~すべてのこどもに通じる理解と対応』(郁洋舎)、その他保育雑誌への連載などを担当。  ※Photo by 川端アリ

かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。