当事者が語る「きょうだい児」が抱える〈生きづらさの正体〉とは?

重度知的障害・自閉症・強度行動障害の弟をケアし続けた当事者が語る「きょうだい児の現実」(1)

平岡 葵

「きょうだい児だから優しい」は本当か?

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──そもそも、きょうだい児が抱える問題の原因は何なのでしょう。

平岡さん
本人も家族も、「当事者」であることを認識していないのが、根源的な原因ではないでしょうか。

もちろん、きょうだい児といっても、家庭環境や家族関係はさまざまです。きょうだい児であるというだけで周囲が一方的に「あなたはつらいはず」と決めつけては、ご本人がこれまで歩んできた人生を否定することになるでしょう。

しかし、きょうだい児は、幼少期から「病気や障害のあるきょうだいが間近にいる」生き方しか知りません。そのため、本人がその大変さやつらさを自覚していない場合があり、周りにも気づかれにくいのです。「自分はこれでいい」と思ってしまえば、その問題は社会化されないままです。

「きょうだい児で良かったね」と言わんばかりの雰囲気で、きょうだい児の本当の気持ちや言いたいことが封じられていないでしょうか。誰かの犠牲の上に、家族の幸せは成り立たないのです。

取材・文/中村 藍

インタビュー後編では「きょうだい児と接するとき、親として大切にしてほしいこと」を語っていただきます。

複数の障害をもつ弟。カルト宗教にハマってDVを繰り返すほぼ失業者の父。家出と薬物の過剰摂取を繰り返す母。凄絶すぎる家庭環境で著者は、どう自分を守ってきたのか。40年の実体験をつづった『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録』(著:平岡葵)
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ひらおか あおい

平岡 葵

HIRAOKA Aoi

1歳年下の弟が重度知的障害、自閉症、強度行動障害を持つきょうだい児。保育園時代に一家でカルト宗教に入信し、修行等を強いられる。小学生のとき、母親の過去の不貞行為が発覚し、父親による家庭内暴力が始まる。母親は家出と薬の過剰摂取を繰り返すようになる。そうしたなかでも学業に励み、慶應義塾大学経済学部に合格・卒業。現在は家族と絶縁し、企業で働く傍ら、かつての自分と同じ境遇にいるきょうだい児たちとSNS等で交流し、彼らの精神的サポートもしている。

1歳年下の弟が重度知的障害、自閉症、強度行動障害を持つきょうだい児。保育園時代に一家でカルト宗教に入信し、修行等を強いられる。小学生のとき、母親の過去の不貞行為が発覚し、父親による家庭内暴力が始まる。母親は家出と薬の過剰摂取を繰り返すようになる。そうしたなかでも学業に励み、慶應義塾大学経済学部に合格・卒業。現在は家族と絶縁し、企業で働く傍ら、かつての自分と同じ境遇にいるきょうだい児たちとSNS等で交流し、彼らの精神的サポートもしている。