親必見! 「子どもの脳」を伸ばすシンプルで効果的な声かけ方法

脳科学者・細田千尋先生に聞く「子どもの脳」が伸びる家庭環境の整え方 #2 家庭内での親の関わり方について

医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋

肯定が子どもの自己肯定感を高めることにつながる

単純なことですが、常に親から「ダメでしょ」って怒られていると、お子さんは「自分はダメな子だ……」という認識を持ってしまいます。

学校とか習い事とか、家の外に一歩出てしまうと、子どもが失敗したときの対応は、親ではコントロールできないので、少なくとも家庭の中では「悪いこと」や「本来ならこうすべきこと」については、悪いところを指摘して責めるのではなく、「どうすべきか」を伝える。つまり、子どもを単に否定するだけではない声がけが大切になります。

「親や家庭が子どもにとってのセイフティーネットになれれば、新しいことにも怖がらずチャレンジできます」(細田先生)  撮影:森﨑一寿美
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繰り返しになりますが、「甘やかすのではなくて、否定せずに正しいことを伝える」こと。

それができると、子どもにとって家庭や親が、愛着形成における「セイフティーネット」になるわけです。子どもは怖がらずに、新しいことにチャレンジができるし、失敗してもレジリエンス(回復力)につながりますよね。

困難にぶつかっても「自分はきっと大丈夫」と思えるかどうかは、乳幼児期から児童期、あるいは思春期にかけて、家の中で自分がどれくらい肯定され愛着形成ができていたか、というところにかかってきます。自分の中で、自分をどれくらい肯定できるかは、家庭内での親との関わりの中で養われていくものだと思います。

子どもの「できない」を解決 行動の細分化

子どもとのかかわりの中で、ママやパパが心掛けるべきことがもうひとつあります。

小学校の学習課程にプログラミング教育が導入され、論理的思考や問題解決能力がこれからの子どもたちには必須であるとされていますが、実はこの能力、子どもたちだけでなく子育て中のママやパパにも必要なのではないかと私は考えています。

というのも、私たちの研究の中で、実験に参加していただいたママたちに、お子さんができなくて困っていることを挙げてもらっています。「1人でお着替えできない」など、悩みを聞いたあとに、次に「できるようになるために、どんなステップがあるのか、細分化してみてください」とお聞きするんです。

例えば、「お着替えできるようになるために、子どもが何段階で何をしなければいけないか、ステップを作ってみてください」とお願いすると、実は、行動の細分化ができないママやパパがたくさんいます。

このことから分かるのは、親の側も問題を正確に分析できていないのではないか、ということです。子どもが、どこでつまずついているのか、親自身が分かっていないので、支援すべき点を把握できない。子どもがスモールステップで進んでいく道を指し示してあげられないんですね。そういった親御さんは、物事が何で構成されているのか論理的に思考することに慣れていないのかもしれません。

その点、プログラミングはひとつ、ひとつのステップを、詳細に考えて組み立てていくものです。世にいう論理的思考力とか、物事を分析的に考える力というのは、おそらくデジタルツールに慣れていくうちに養うことができると思います。

しかし、デジタルに疎い方であっても、子どもを観察するのが好きで、普段から子どもの育児日記などの記録をつけている人だと、お子さんの行動を的確に分析する力が身についていると思います。ママやパパは、お子さんの目標をクリアできるところへ設定して、それに至るスモールステップを的確に把握できているとベストですね。

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親が子どもの行動を見守って分析し、ステップを確認しながら肯定的な声掛けをしてあげる。これが、家庭でお子さんの成長を促すことにつながっていくということがわかりました。

最終回となる3回目は、これからの時代を親子でどう乗り越えるか。ウィズコロナの親子の過ごし方についてお聞きします。

取材・文/山田祥子

脳科学者・細田千尋先生に聞く「家庭環境の整え方」は全3回。
1回目 部屋の広さより刺激‼ 脳科学者が明かす、「子どもの脳」を伸ばす住環境
3回目 コロナ禍で子どもの認知能力が低下? 脳科学的な家庭環境づくりとは?
※3回目は10月22日公開予定です(公開日までリンク無効)

細田千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院 情報科学研究科准教授。内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。
内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。

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ほそだ ちひろ

細田 千尋

医学博士・認知科学者・脳科学者

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/