「今日の我が子が幸せならOK!」プロが教える子育ての不安をなくす心得
保育・子育てカウンセラー井桁容子さん「ノンストレス育児のススメ」#4〜ポジティブマインドの維持編〜
2021.12.26
保育・子育てカウンセラー:井桁 容子
子育てをするだけでもストレスはたまりがちなのに、さらに家事や仕事も両立しなければいけないのが現代のパパママ。知らず知らずのうちに心身が疲弊してネガティブモードに陥ってしまうことも。
「非営利団体コドモノミカタ」代表理事を務める保育・子育てカウンセラーの井桁容子さんは、子育てを専門に執筆活動や講演会を行っています。そんな井桁さんに、親がストレスを抱えない育児との向き合い方を伺います。
4回目は、育児をしながらポジティブなマインドを保つ方法を教えてもらいます(全4回のうちの第4回。#1、#2、#3を読む)
保護者会で人の子を褒める 我が子の良さを知るチャンス
他の家庭に目を向けると、つい我が子とよその子の出来不出来を比較してしまい、我が子に対して悲観的になってしまうこともあります。それを回避する方法はあるのか、井桁さんに教えてもらいます。
「育児においても、隣の芝生は青く見えるもの。例えば、保育参観でよそのお子さんが積極的に発言している姿を見て、『うちの子はどうして何も言わないのかしら』と気になってしまうのが親心。さらには、そこから飛躍して自分の育て方が良くないのではないかと思い悩んでしまう場合も。
そんなときは『うちの子はダメだから』と我が子や自分の育児をマイナスにとらえるのではなく、『あの子は積極性があって良いな』とよそのお子さんの良い部分として認め、我が子と比較しないようにしましょう」(井桁さん)
保護者会など、親同士が会話する場面も我が子の良いところを知るいいチャンスになると井桁さんは言います。
「保護者同士で会話をする機会があれば、ぜひ、よそのお子さんの良いと思った部分を伝えてみてください。
すると『●●ちゃんだって集中力があって良いじゃないですか。うちの子は落ち着きがないからうらやましい』などと、我が子を褒める言葉が返ってきたりするものです。自分から、『うちの子は消極的すぎる気がするのですが、どう思いますか?』と意見を聞いて、別の見方ができる機会にするのもアリですよ。
比較するまなざしは、どうしても劣る部分に向けてしまうもの。これは、人間に備わっている危機管理の感覚なので、誰にでもあることです。だから、我が子の良いところはなかなか見つけにくいものなのです。
特に、親が自らの欠点と感じているところが似ていると、悪く受け取ってしまいがちです。
自分1人で子どもの性格を決めつけたり、ましてやそれをネガティブな要素として判断したりすることは避け、第三者からはどのように見えているのかを聞いてみましょう。そうすることでネガティブに見えていた部分の印象が変わってくるかもしれませんよ。
子育ての悩みは、自分とは異なる視点を取り入れることで救われること多いものです。パートナーや祖父母、友人などに意見を聞いてみてもいいですね」(井桁さん)
ワンオペがつらくなったら まずはパートナーと話し合いを
パパや親と子育てを分担できる親がいる一方で、パパが育児に非協力的であったり、実家を頼れない環境であったりと、さまざまな事情からワンオペ育児せざるを得ないママもいると思います。
パパに積極的に育児参加してもらうためには、どのようなことを夫婦で話し合うと良いでしょうか?
「産後の女性の身体を理解していない男性は多いものです。以前、ある男性から『うちの妻はアルツハイマーなんじゃないか? 言ったことをすぐに忘れるし、いつも眠たがる』という相談を受けたことがあります。
これは、産前産後の睡眠不足、産後にホルモンバランスが不安定になりやすいことが原因の場合が多いですね。病気や本人の意欲の問題ではありません。
ところが、女性の身体の変化や状況が理解しづらい男性に対して、女性側は一方的に『わかってほしい』と思ってしまうんですね。
夫婦とはいえ身体の構造も異なりますし別の人間です。自分の気持ちや状態を説明せずにわかってもらおうというのは無理な話なんです。『それくらい言わないでも察してよ』と言いたいところですが、きちんと伝えなければ理解を得づらいのです。
『出産後は睡眠不足も手伝ってホルモンバランスが崩れるので、気持ちが不安定になるかもしれません。心と身体の安定のためにも睡眠時間を確保したいので、私が寝ている間は子どもの世話をお願いします』など、自分に起きている心身の変化をしっかりと伝えて育児のサポートをお願いすることが大切です。
産後、睡眠時間があまりに短くなると、鬱になってしまう危険性もあります。睡眠時間が必要なことを男性に理解してもらい、協力を仰ぎましょう」(井桁さん)
パパママは、お互いの役割意識をしっかり認識しつつも、臨機応変に交代して助け合うと上手くいくと井桁さんは言います。
「育児は、言わば『人を育てるプロジェクト』。子どもが生まれたからお父さんお母さんになったというよりも、生まれた子どもが幸せに生きていける力を育てるためのプロジェクトチームです。
子どもに父母として出会い、その役割を担ったと捉えましょう。そうすると、我が子を私物化せずに人として尊重し、お互いに何を大切にすべきか、どんな役割が果たせるかなどが考えやすくなると思います。
『母だから・父だから』と押し付け合うのではなく、それぞれの得意なことを活かして役割を担うことが大切。そしてその役割は、シーンや日によって入れ替わってもいいわけです。父親、母親の役割に決まりはないため、その家族ごとに異なっていていいんです」(井桁さん)
第3回(#3)でも井桁さんは話していましたが、育児を1人で抱え込んでしまっては危険です。
自分1人の見え方だけで「我が子は○○だ」と決めつけて思い悩んだり、ホルモンバランスの乱れによって心身が不安定な状態にもかかわらず1人で育児を成し遂げようと頑張ることは、ストレスを抱えてしまう要因のひとつ。
周囲の人に意見を仰いだり、協力を得ることは、自分がストレスフリーでいるために大切なのですね。