1歳児の保護者必読!  見逃しがちな「劇的変化」を発達の専門家が解説

【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「1歳児の発達を知ろう」#1

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

自分の力で移動できるようになることは、0歳児と1歳児の大きな違いのひとつです。  写真:アフロ
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不安でいっぱいだった0歳児の1年が終わってみると、今度はお子さんが盛んに動き回るようになったり、言葉が出るようになってきたり、うれしい反面、激しい変化に戸惑っているパパママのみなさんも多いことと思います。

0歳児のときとは違って、1歳児の子育ての情報は案外少ないと感じている方も多いでしょう。

講談社コクリコCLUBでは、そのようなパパママのために、会員を対象としたウェブセミナー「正しく知って安心! 『1歳児の発達』」を実施しました。

講師は子ども発達研究の第一人者であり、現在も小児科医として発達障害児の診察を続けている榊原洋一先生です。

0歳児をテーマにした前回(レポート記事#1#2#3を読む)に続き、1歳児を持つパパママに向けて、とくに関心の高い話題についてお話しいただきました。(全3回の1回目)

榊原洋一先生プロフィール

榊原洋一(さかきはら・よういち) 1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

1歳はじつは見過ごされがちな年齢

生まれてから1歳になるまでの1年間が0歳児、1歳から2歳になるまでの1年間が1歳児。隣り合っている年齢層ですが、発達の様子はまったく異なります。

0歳児は英語で「infant」と言います。この語源はラテン語の「infantem」で、「fant」が「話す」、「in」がその否定なので、「話さない人」という意味になります。0歳児はしゃべらないですし、多くの子は1歳近くまで歩きません。

それが1歳を過ぎると、単語を発するようになり、歩くようになります。0歳児にはなかった「言葉」と「移動」という2つの能力を身につけます。これはとても大きな変化です。

1歳児は英語で「toddler」と言います。「todd」はよちよち歩きのこと。toddlerは「よちよち歩きする子」という意味です。

西洋では0歳児はしゃべらない時期、1歳はよちよち歩きの時期という認識なんですね。日本語は、0歳児も1歳児も「乳幼児」とひっくるめてしまっているのは、ちょっと大雑把すぎるかもしれませんね。

では、0歳児と1歳児は親にとってどちらの印象が強烈かというと、0歳児だという方が多いと思います。

オギャーと生まれて何もできなかった赤ちゃんが、寝返りを打つようになり、つかまり立ちをするようになる。まさに0からいろんなわかりやすい変化が起きるからです。

一方、1歳児の1年間はというと、0歳からの1年間に比べると、劇的な変化に乏しく、なんとなく見過ごされがちな年齢層です。

「デンバーの発達里程標」が示していること

こちらの図をご覧ください。「デンバーの発達里程標」という、乳幼児が月齢ごとに何ができるようになるかの目安を示したものです。

この中の「粗大運動」の項目には、たとえば3ヵ月で「首がすわる」や7ヵ月で「支えなしに座る」など、赤ちゃんができる運動の種類が書かれています。

0歳児の1年間には「15」という数字があります。これは、1年間で15種類の運動ができるようになることを示しています。それに対し、1歳児は「6.5」。0歳児のときの半分以下しか新たな運動ができるようになりません。

言語に関しても、0歳児と1歳児を比べると、圧倒的に0歳児のほうが目に付く変化があります。この数字から見ても、1歳児の印象が薄くなりがちであることが理解できると思います。

「言葉」と「移動」の能力を獲得する

ところが、よく考えてみると、0歳児と1歳児はまったく異なる人間なんです。0歳児は自分の気持ちを言葉で言い表すことができず、自分の意思で動き回ることもできません。

一方、1歳児は自分の好きなところへ移動でき、片言かもしれないけれど、言葉でコミュニケーションをとることができるようになります。

この時期の子どもには、発達において、とても重要なことが起きています。

まず言葉。平均すると、1歳のお誕生日くらい、生後13ヵ月ごろに初めての言葉を発するようになります。「マンマ」とか「パパ」とか「ワンワン」などです。

爆発的に話せる単語が増えることも1歳児の時期に起こる大きな変化です。  写真:アフロ

それが、2歳時点では平均200を超える単語を発するようになります。1年間で話せる単語が200倍になるんです。

1歳の終わりごろには、2語文がしゃべれるようになります。「ワンワン、きた」とか「白いワンワン」など、文法的に正しい言葉の組み合わせができるようになってきます。

羞恥心や嫉妬心も芽生える

1歳児の1年間は情緒もめざましく発達します。0歳児は痛かったら泣く、お腹がすいたら泣く、うれしかったら笑う、といった具合に単純な情緒しか示しません。それが、1歳を超えると急に複雑になっていきます。

たとえば、羞恥心。人前で何か失敗してしまったときに恥ずかしくて赤くなる。それから嫉妬心。まだ赤ちゃんの弟や妹に嫉妬して、何かモノを取ってしまうなどの行動が見られるようになります。

細かな手先の運動も見られるようになります。1歳になるころには人差し指と親指でモノをつまめるようになり、2歳近くになると、積み木を積んだり、瓶の中のものを取り出したりできるようになるなど、日常の動作がとてもうまくできるようになります。

つまり、まわりの世界により関われるようになる。これが1歳児の時期の変化なのです。

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続くレポート第2回では、セミナー参加者から寄せられた「1歳児との遊び方」や「言葉の発達」などの質問に答えていただきます。

#2に続く)

構成・文/渡辺 高

榊原洋一先生監修 1歳児のための「えほん百科」

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1歳は親子のふれあいが大切な時期です。1歳児の発達に欠かせない身近な内容を楽しく学べるように、豊富なイラストと写真で構成。親子で声を出して一緒に読めます。

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かんたんな手あそびうたや、短くて楽しいおはなしが、ことばへの興味をひきだします。1歳児が外の世界への想像力をふくらませ、語彙を豊かに増やすための手助けになる1冊です。

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【セミナー名】
正しく知って安心! 「イヤイヤ期」子どもの中で起きていること(「子どもの発達を知ろう」第4回)

【講師】
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授 榊原洋一先生 

【日時】
2023年1月13日(金) 20時00分〜21時00分

【対象】
2歳児の保護者、1歳児・3歳児の保護者

【参加資格】
講談社コクリコCLUB会員限定

【費用】
無料

【配信形式】
Zoomを使ったオンラインライブセミナー

【主催】
株式会社講談社

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さかきはら よういち

榊原 洋一

小児科医・お茶の水女子大学名誉教授

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。