うちの子、言葉が遅い? マスクの影響は? 専門家が答えた「1歳児の発達」の真実
【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「1歳児の発達」を知ろう#2 | Q&A前編
2022.12.28
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一
講談社コクリコCLUBでは、1歳児を育てているパパママのために、会員を対象としたウェブセミナー「正しく知って安心! 『1歳児の発達』」を実施しました。
講師は子ども発達研究の第一人者であり、現在も小児科医として発達障害児の診察を続けている榊原洋一先生です。
レポート第1回では、1歳児の時期は、見過ごされがちではあるものの、じつは子どもの中で大きな変化が起きているということをお伝えしました。
レポート第2回では、榊原先生に参加者から寄せられた質問に答えていただきました。目から鱗のQ&Aの前編をお届けします。
(全3回の2回目/#1を読む)
榊原洋一先生プロフィール
Q1 子どもとの遊び方がわからない
1歳になり、子どもとどのように遊べばいいかわかりません。
A1 親は何もしない方がいい
遊びは子どもの発達にとても重要な役割を持っています。遊びにはいろんなタイプがありますが、この時期の遊びは基本的に「自由遊び」です。目的がない遊びですね。
目的がなく、意味のない行動に見えますが、じつは子どもはこの遊びを通じて物事を探求するトレーニングをしています。
もし親が「こうしなさい」と遊び方をガイドしてしまうと、この探求する機会がなくなってしまいますし、遊びの中にある楽しみも失われてしまいます。
ですから、おもちゃがあるとしたら、そのおもちゃで遊んであげるのではなく、おもちゃを渡すだけでいいんです。あとは子どもが自分で遊び、探求していきます。ほうっておいていいんです。
このような悩みを抱く親御さんは、きっと0歳児の時に積極的に絵本を読んであげたり、あやしてあげた方だと思います。
何かをしてあげなければいけない、そんな風に考える必要がありません。何もしなくていい」、もっと言えば「何もしない方がいい」というのが答えになります。
フランスなどで行われている保育の方法にロッツィ方式というものがあります。この方式の保育では、1歳児の遊びはほったらかしにします。おもちゃや絵本などは用意しておきますが、遊び方は子どもに任せます。中には遊ばずに座っているだけの子がいるかもしれませんが、それでもほうっておきます。
ロッツィ方式は、第二次世界大戦後に世界的に注目を集めました。この方式の保育を経た子どもたちの成長を観察していったところ、社会性や共感性がとても豊かになっていることがわかったからです。
自分がしたいことをするという環境が発達によい影響をもたらします。
逆に、「こうしなさい」という「やらせ遊び」をさせると、言われた通りにしかやらなくなり、自由な遊びができなくなってしまう恐れもあります。
心配することはありません。勝手に遊ばせておけばいいのです。遊ぶ環境をつくってあげて、危険がないか見守ってあげる。それで十分。「何かをしてあげなくちゃ」という意識は無用です。
「何もしない方がいい」のです。
Q2 危険なことをやめさせたい
1歳4ヵ月の息子が姉の真似をして高い所からジャンプしようとします。注意してもやめず、毎日ヒヤヒヤしています。どうしたらいいですか?
A2 決然とした態度でやめさせる
「ほうっておいていい」と言っても、何でもOKというわけではありません。
子どもに安全な環境を用意するのは、親の義務です。まず、おうちの中をお子さんがケガをしないように念入りにチェックし、さまざまなリスクをなくしてください。
頭をぶつけたらケガをしそうな家具の角などには、ゴム製などの保護材があるので、そういったもので保護しておくといいでしょう。高い所には登れないよう、柵などで立ち入りを制限するのも大切です。
狭い部屋で、複数のお子さんがいる場合にはケガのリスクが高まるので、とくに注意が必要です。危険な行動をやめるように言っても聞かない、髪を引っ張り合うなどが見られる場合には、子どもたちをすぐに引き離し、決然とした態度で行動を制限してください。
どうしてもお姉ちゃんやお友だちの真似をして危ないことをしてしまうようなら、一緒に遊ばせない工夫も必要です。安全が第一です。
少し前に、子どもにハーネスとリードを着けて連れて歩くのが一部で流行りました。道路で飛び出さないようにし、階段から落ちても大事に至らないようにするためにものですが、犬じゃあるまいし、という批判を受けて廃れてしまいました。
しかし、子どもの安全を考えるなら、そのようなグッズも私は必要悪だと思っています。まわりにとやかく言われようが、安全第一に決然とした判断をすることが大切です。