
発達障害の特性のある子どもを持つ親や家族への支援【精神的負担】編 〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説
#13 発達障害の特性のある子の母親の精神的負担への支援〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生の解説〕
2025.04.30
言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也
「障害受容」のこと
我が子に発達障害の特性があることを受け入れる(障害受容)のは、たやすいことではありません。「普通」であることを求める日本社会の特徴が、障害受容をより困難にしているように私には思えます。

上の図は、親の障害受容に関するモデル図です(親の障害の認識と受容に関する考察──受容の段階説と慢性的悲哀 早稲田心理学年報 = Waseda psychological reports (27), p83-92, 1995-03東京 : 早稲田大学大学院文学研究科心理学コース ; 1969)。https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/ld/z12020/z1202001.html#g10
この図からは、親は子どもの状態について、否定の時期→肯定的になる時期→否定の時期を繰り返しながら徐々に障害を受容していくことがわかります。
子どもの現状を理解し、対処し、少し先が見えてきたと思ったら、次の課題が見える、という日々の中で、肯定の気持ちと否定の気持ちを繰り返す。その様子は、長年、療育の現場で保護者の方と関わっているとよくわかります。
それまで子どもの障害を受容しようと努力し、療育に取り組んできた保護者の方が、それでも、入園入学、進学等の節目節目で我が子を定型発達の子と比べて気持ちが乱れてしまう。一筋縄ではいかないその気持ちがあるのに、支援者などから「子どもの現実を受容できていない」と言われることがあり、そうして「障害受容ができていない親とみられること」自体が、また保護者を苦しめる、ということもあります。
親が障害受容ができていると子どもの経過が良いという研究もありますが、だからといって受容できるものでもありません。子どもの障害受容は極めてパーソナルなことがらであって、本人以外が「障害受容を求める」ものではないと私は思っています。
最後に
長年発達障害の特性のある子どもと家族、特に多くのお母さんたちと関わってきて、お母さんを支援者として応援しなくては、と強く思ってきました。
子どもが自分らしく生きることが大事なように、母親も自分らしく生きることが大事です。「お母さんが自分らしく生きる」家庭は、子どもが「自分らしく生きる」家庭でもあります。ですから、ぜひ、子育ての協力体制を整えて、母親を支援したいのです。
次回から、母親以外の家族について考えていきますが、その中でも、母親の支援については考えていきたいと思います。
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今回は、「発達障害の特性のある子どもを育てる母親への支援」の中から、「発達障害の特性のある子を持つことによる精神的負担への支援」」について原哲也先生に解説していただきました。さまざまな支援がある中で、「親の会」や「ペアレント・メンター」など、身近に相談できる機関もあることをご紹介しました。専門家への相談と併せて、参考にしていただければと思います。
原哲也
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事・言語聴覚士・社会福祉士。
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。
2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。
著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。
原哲也先生へのご相談を募集
コクリコでは、原先生の連載で取りあげるご相談を募集しています。お子さんの発達障害、発達特性、療育、家族の関わりについてなど、お悩みをお寄せください。
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わが子が発達障害かもしれないと知ったとき、多くの方は「何をどうしたらいいのかわからない」と戸惑います。この本は、そうした保護者に向けて、18歳までの療育期を中心に、乳幼児期から生涯にわたって発達障害のある子に必要な情報を掲載しています。必要な支援を受けるためにも参考になる一冊です。
原 哲也
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」