娘の発達障害に気づいたきっかけは「運動会でひとり砂山遊び」だった〔『リエゾン』三木先生解説付き〕

娘5歳の凸凹発見・成長実録記 #1 娘3歳~4歳2ヵ月ころの様子

3歳半健診でも「性格的なものでは?」との保健師の言葉

運動会の翌月、新型コロナウイルス感染症の流行で延期になっていた、3歳半健診を4歳直前(3歳11ヵ月のとき)で受けられることに。

尿検査や内科健診、歯科健診、身体測定などは問題なく終了。最後の保健師相談で、運動会での娘の様子や、日々の指示が通りにくいことを相談してみました。

保健師さんの答えは「性格的なものだと思いますよ」とのこと。「いやいやいや。そうではないと思うので、相談しているんです」と食い下がる、私。

そうすると、「心配でしたら一度、発達相談を受けられてみますか?」とのひと言が。

「やっと、この不安を解消できる!」と、思ったのも、実は、3歳上の長男も発達相談を受けた経験があったから。長男のときは、保育士さんの勧めで受けたのですが、結果的に問題はありませんでした。

その経験があったので、「娘のことも、専門家に見てもらえば、すぐに診断がつくだろう」と思っていたのです。

【三木崇弘先生】
健診の際は、気になることは気軽に相談してみましょう。あるいはかかりつけの小児科で相談すれば、その後も定期的に発達のチェックをお願いしやすくなります。

積み木が高く積めない!?

発達相談は、予約がいっぱいだったため、受けられたのは娘が4歳2ヵ月になってからでした。娘と私、保健師さんと発達相談の担当の方の4人で行われました。

問診のあと、遊びを交えながら、発達段階の検査が行われました。丸を書く、はさみで紙を切る、色を塗る、積み木を積み上げるなど、指示されたとおりにできるか、一つひとつ確認していくという内容でした。

ほぼ問題なくできたように見えたのですが、ここでプロの目が娘の特性を捉えていました。

例えば、積み木を積み上げる検査。「この積み木(4cm角が5個)を、一番高く積み上げてみて」という指示に対しての、反応を見るもの。

通常なら、積み木を縦に5個積むのが正解です。しかし娘は、2個積み上げたものの横に、積み木を3個積み上げました。

娘の積み木の積み上げ方は、忘れられません。  イラスト/オヨネ

「一番高くだよ?」と言われても、並べ方を変えたり、位置を変えたりするだけで、高さはそれ以上高くはなりません。担当の方がやって見せると、理解できた様子で、その後まねしていました。

【三木崇弘先生】
これは「指を器用に使えるか」、「ある程度の集中力があるか」、「指示に従えるか(理解できるか)」などをみています。この子の場合は、自分のやり方にこだわりがあったりしたのかもしれません。

発達相談の結果「意思の疎通にコツがいる」

すべての検査を終えて、娘が保健師さんと遊んでいる間に、担当の方から伝えられた結果はこうでした。

「娘さんは、意思の疎通にコツがいります。通常の指示ではうまく伝わらないことが多いのも、そのためだと考えられます。療育を受けたほうがいいかと思います」

正直に言うと、この答えに少なからずショックを受けました。なにかあるとは思っていても、長男のときのように、専門家からは「問題ありません」と言われることを期待していたからです。

ただ、発達障害と診断されたわけでも、診断名がついたわけではありません。もし、診断名をつけたい場合は、さらに詳しい検査をしてからになるとのこと。

療育についても、受けることで「おそらく劇的に変わることはないけれど、どうすれば意思の疎通がうまくいくのか、得意なことはなにかを模索する場にはなるでしょう」ということでした。

娘にとってなにかプラスになるなら、現状が変わるのならと、療育の予約をすることにしました。
そして、混んでいるとは聞いていましたが、初回は、発達相談の3ヵ月後。娘が4歳5ヵ月のとき、初めて行くことに。ここから月1回のペースで、外来療育が始まり、家族のかかわりも大きな変化を迎えることになります。

次回2回目では、療育に通い出して変わった長女とパパの様子をお伝えします。

凸凹成長実録記は全6回。
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『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』著:三木崇弘(講談社)
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みき たかひろ

三木 崇弘

Miki Takahiro
児童精神科医

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)