「読書」が子どもの脳に与える好影響 「妻のトリセツ」の黒川伊保子さんが解明

人工知能研究者がすすめる楽でリーズナブルな子育て #2 しあわせ脳を育てるファンタジーの力

「魔法学校に行く」体験は日常生活では得られない

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ファンタジーの扉を開けば、子どもたちは、鮮烈な体験をすることになる。

普通に日本の小学生をやっていたら、「ある日、魔法学校に行くことになって、行ってみたら天才魔法使いだと言われ、闇の魔法使いと戦う羽目になってしまった」なんてこと、たぶん起こらないけど、『ハリー・ポッター』のページをめくれば、誰でも必ず、それが体験できる。

子どもの代わりに、ハリー・ポッターが、忍耐力と責任感で、凜々しく戦ってくれるわけ。子どもの脳は、その読書体験を、夜眠っている間に知識や知恵やセンスに変えていく。痛い思いをせずに、責任とは何かを知るのである。本は、日常体験をはるかに超えたセンスを、子どもたちの脳にもたらしてくれる、本当にありがたいアイテムだ。

世間の悪意と理不尽を、なにも家庭で教えなくていい

私は、息子を基本、甘やかして育てた。だって、つらいとき悲しいとき、共感してくれる家族がいてくれたほうが、外で頑張れるでしょう?

学校に行きたくないと言えば、可能な限り一緒に休んで楽しく過ごしたし、宿題をしない、ものをなくした、習い事をやめたい、なんてことで𠮟ったこともない。

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私が大甘かあちゃんだったので、よく「社会に出てたいへんなことになるよ」と注意された。そう、世間には悪意や理不尽が漂っている。だから、私の子育てには、ファンタジーが必須だったのである。

ファンタジーとは、おしなべて、才能はあるけれど未熟な主人公が、容赦なく人生の旅に駆り出されて、世間の悪意に触れ、理不尽な目に遭い、それでも人を信じることを学び、意志を貫いて、「腹落ちする人生」を手に入れるように仕立ててある。

主人公が、これでもか、これでもか、と、世間の悪意と理不尽にさらされる。世間の悪意と理不尽を、なにも家庭で教えなくてもいいのでは? 上質なファンタジーを子育ての友にすればね。

家庭の中で守られていても、やがて子どもたちは、現実の悪意と理不尽に触れる。そのとき、ファンタジーに教えてもらった知恵があれば、それほどの深手を負わずに切り抜けることができるはず。家で甘やかしたリスクくらいは、きっと回避できる。

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