「読書」が子どもの脳に与える好影響 「妻のトリセツ」の黒川伊保子さんが解明

人工知能研究者がすすめる楽でリーズナブルな子育て #2 しあわせ脳を育てるファンタジーの力

読書体験は、動画体験に勝る

日常体験を超える体験という意味では、動画やゲームもまた、一役かってくれる。8歳から12歳までの間には、いい映画も観せてやりたい。ゲームは罪ばかりが強調されるが、3次元系の仮想体験は、男の子の想像力の支援にはけっこういいツールだ。ゲームで育った世代には、突き抜けたアーティストが増えると思う。入れ込みすぎに注意して、睡眠の質を確保してやれるなら、かたくなに禁止するのは惜しいような気がする。

〈Photo by iStock〉

ただ、動画やゲームは、読書の代替にはならない。読書のほうが、よりリアルに「自分ごと」として脳に刻印されるので、学習効果が高いからだ。

読書には「主人公の顔」がない。つまり、主人公に感情移入しやすいのである。映画の『ハリー・ポッター』を観たときは、一人の少年の物語を傍観することになる。役者に顔があり声があるので、「自分ではない存在」の体験を傍観することになるわけ。

ところが、本で読んだハリーのセリフは、自分の内なる声で「聴く」ことになる。ハリーが鏡をのぞけば、自分も一緒にのぞいたような気分になって、その鏡に映っている家族に、自分の家族をあてはめたりする。五感の情報を脳が生成する以上、そんなふうに、自分の経験知を織り込んで、ハリーの世界を創造することになるのだ。このため、主人公と自分の境界線があやふやになり、主人公の体験が、より自分ごとになって脳内にとどまる可能性が高い。

物語を脳に与える「もう一つの人生体験」と捉えるならば、読書がもたらしてくれる経験知は、おそらくほかのメディアのそれをはるかに凌駕する。ぜひ、読書を基本にしてほしい。

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黒川伊保子さんの「子どもの脳の育て方」は全3回。第2回の今回は「読書の効能」についてご紹介しました。第3回は、効果的な読書の方法について、年齢別にご紹介します。
取材・文/佐々木奈々子

黒川伊保子さんの「子どもの脳の育て方」は全3回。
第1回 子どもの「しあわせ脳」を育てる5つの金のルールとは 「夫のトリセツ」の黒川伊保子さんが解説
第3回 【年齢別読書法】0歳〜2歳/7歳まで/9歳〜12歳 黒川伊保子さんが実践した「しあわせ脳」の育て方とは 

■今回ご紹介した書籍はこちら
『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』
近未来に必須の人間力を、どうしたら脳に授けられるのか。その答えがここにある。
【本書の内容構成】
1 金のルール
2 AI時代の子育てに欠かせないセンス
3 銀のルール
4 大切なあなたに、伝えたいこと

『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』 黒川伊保子/著
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くろかわ いほこ

黒川 伊保子

Ihoko Kurokawa
人工知能研究者

1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社+α新書)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。

1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社+α新書)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。