〔海外移住の現実〕子ども3人をバイリンガルに ニュージーランド移住の日本人夫婦「意外な子育てルール」
ニュージーランドの教育は悪くいえば「放任」良くいえば「自由」!? 海外で日本人夫婦が子育てをするコツ #2
2023.11.23
小学校の入学時期はバラバラ!? ニュージーランドの教育事情
ニュージーランドでは小学校は5歳の誕生日の翌日から入学可能で、義務教育は6歳から16歳まで。学年は“Year”で表現され、5歳=Year1から始まり、年齢とともに学年が積み上がっていきます。
専門学校や大学へ進学する学生は日本の高校2年生にあたるYear12か、高校3年生にあたるYear13まで在学し、進学するために必要な単位を取得します。
また、海外教育ではよく聞かれる話ですが、幅広い教科指導が行われ、各教科の学習到達度を求める日本とは違って、探究的な学習が中心です。
「ニュージーランドでは、日本のように入学式があるわけではなく、5歳の誕生日をすぎるとバラバラに小学校に入学してきます。また、○年○組とクラス分けもされてはいませんし、日本のような細かい時間割りもありません。
以前、子どもが何を勉強しているのか調べたことがあったのですが、『今週はみんなでサイエンスをやりました!』と学校からお知らせがありました。1週間もずっとサイエンス!? と驚きましたね。
それから、宿題も基本的にありません。本格的な勉強は、ニュージーランドの義務教育最後の年になるYear11(日本でいう高校1年生)から始まる感じです。
ただ、Year11後は働き始める子もいますし、専門学校や大学を目指す子どもたちは、Year12から自分で選択した勉強を始めます。
義務教育最後の1年は、急に勉強が始まって何かしらの方向性を自分で決断する必要があるので、厳しい環境だといえるでしょう。
ちなみに先日、高校を卒業した長女のすみれは、Year12とYear13で音楽とフランス語を選択しました。フランス語の課題で心理学に触れる機会があり、それがきっかけでこれから大学では心理学を専攻する予定です」(静さん)
日本の教育レベルを求めるなら、そもそも海外に来るべきではない
海外で子育てをするうえでの教育の考え方について、一夫さんは次のように加えます。
「日本の教育を受けてきた親にとっては、海外の教育は残念感や足りなさを感じることがあります。でも、そこは日本に当てはめてはいけません。
日本の教育内容やレベルを求めるんだったら、そもそも海外に来るべきではありませんし、ニュージーランドならその土地ならではのいいところをピックアップするべきです。
ニュージーランドの教育は悪くいえば放任であり、良くいえば自由です。自由な分、自ら物事を考え、学びたいことを見つけ、将来に向けて自分自身を導いていかなければなりません。
この力が育たなければドロップアウトしますし、実際にそういう人もいます。身を助(たす)くのは自分だけという案外、厳しい社会なんです。
ですからこの土地で子育てをするなら、親はニュージーランドの教育を受け入れ、子どもたちがやりたいことを見つけられるように環境を与えてあげることが何よりも大切です」(一夫さん)
子育てに欠かせない! ニュージーランドの医療事情
ニュージーランドでは、GP制度(General Practitioner)と呼ばれるホームドクター制度が採用されており、病気をしたらまずはかかりつけ医に診てもらいます。とはいえ、風邪程度であればかかりつけ医も頼らないのが基本です。
「かかりつけ医でも診てもらうのに1週間先や2週間先のこともあって、その間に治っちゃうこともあります。また、学校で流行っている病気なら、『ああ、学校で流行っているやつだね~』とドクターにいわれるだけで、薬さえ出ません」(静さん)
救急病院にも行きますが、診察してもらえるまで数時間は待つことも。長男・奏一郎さんがサッカーの練習で足の痙攣(けいれん)を起こした際には、医師に診てもらえるまで3時間も待たされたことがあります。
「海外なのですから日本と違うとわかっていても、いざ、当事者になると想像以上です。薬も種類が少ないですし、粒が大きめなので日本人の体格には合わないこともあります。ですから、必要最低限なものは日本から持参するのがおすすめです。あるいは、日本に一時帰国するときがあれば、その際に必要な分をルールに従って持ち帰ってくるといいでしょう。
さらに、絆創膏は日本の製品が優れているのでこれも役立ちますし、年頃の女の子がいる家庭では、ニュージーランドでは売っていないので、生理用ショーツを用意してあげてほしいです」(静さん)