〔海外移住の現実〕子ども3人をバイリンガルに ニュージーランド移住の日本人夫婦「意外な子育てルール」

ニュージーランドの教育は悪くいえば「放任」良くいえば「自由」!? 海外で日本人夫婦が子育てをするコツ #2

海外でワンオペ子育てになったらどうする?

休日の一コマ。釣ってきた魚をさばき、家族に振る舞います。 写真提供:山口静

海外で子育てをすると、仕事で不在がちになる夫の陰で、妻が日本よりもワンオペ育児に陥るケースを耳にします。山口家の場合はどうだったのでしょうか。

「我が家は、移住のそもそもの目的が家族との時間確保だったので、基本的に夫は育児に協力的です。

日本人夫の家庭ではワンオペになるケースがたまに見受けられますが、ニュージーランドには14歳未満の子どもを家、あるいは車中に置いてけぼりにしてはいけないという法律があるので、子育てに関しては周りの人が手を差し伸べてくれます。

困っているなら、困っていることを自分から誰かに伝えれば助けてくれるので、ワンオペになりにくい環境です。

また、こちらのママたちはとてもたくましくて、出産したばかりの子どもを連れて外出しますし、周りもそれをとがめません」(静さん)

男性も家族にかかわれる環境がニュージーランドにはある

「男性が産休や育休を取るのも確立していて、家族のために休んでもネガティブには取られません。ニュージーランドの育児休暇は『Parental Leave(ペアレンタルリーブ)』と呼ばれ、父親も母親同様に取得する権利があります。

私は次女のはるかが生まれたとき、家族のサポートのために1週間休みを取りました。

有給休暇も1年で20日間あって、連続して取ればひと月ほど休めるので、家族時間をしっかりと楽しめます。どの家庭も男性が家族にかかわれる環境です」(一夫さん)

ニュージーランドは、今から130年前に世界でもっとも早く男女同権を成し遂げた国であり、そんな歴史的背景もあるからか、子育ては夫婦で行うものという考え方が国に根付いています。

また、国全体でファミリー・ファースト社会の実現と進化を続けており、法律をはじめ、制度、風土ともに充実しています。

山口夫婦の子育てをうかがうと日本との違いに羨ましく思う面がたくさんありますが、この状況を作り出しているのは、そもそも夫婦がニュージーランドを丸ごと受け入れ、そのうえで自分たちの生活や子育てのルールをしっかりと築いていったからにほかなりません。

特に子育てのメインであり、もっとも気になる教育については、この土地に住んでいる良さを活かすことが子どもたちの将来の選択肢を広げています。

海外での子育てを選択した場合は、日本とは違うことをメリットとして考え、山口夫婦のようにうまく取捨選択していくことが家族としての豊かな生活につながっていくといえるでしょう。

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山口 静(やまぐち しづ)
埼玉県出身。ニュージーランド(NZ)・ハミルトン在住。
結婚後、2005年に日本人の夫とNZ・オークランドへ移住。ビザと出産の関係があって日本に1人で一時帰国し、長女を出産。2006年、生後3ヵ月の長女と共にNZへ渡航。その2年後には、長男を再び日本で出産する。夫の仕事の都合で2009年にNZ・ハミルトンに引っ越す。2014年に永住権を取得した翌年、次女をNZで出産する。現在、17歳、15歳、8歳に成長した子どもたちを夫とともに二人三脚で子育て中。


取材・文/梶原知恵

『ニュージーランド移住者が語る 海外で日本人夫婦が子育てをするコツ』の連載は、全2回。
第1回を読む。

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かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。