「子どもの早期教育は本当に必要?」焦って迷う親を解決に導く2つの自問

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔10〕「早期教育は必要?」

コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎

早期教育に悩んだら親が自分に問いたい2つのこと

<石原ジイジの結論>
当たり前かつ大切な前提だが、子育てに普遍的な「正解」はない。

親が躍起(やっき)になって「早期教育」を受けさせても、ノンキに伸び伸び育てても、結局は「どっちでもいい」話である。友人知人や仕事関係で知り合ったたくさんの人を見ていて、つくづくそう思う。その人の魅力や能力と、育てられ方や育った環境とはほぼ関係ない。

しかし、子育てに関する情報があふれまくっていて、選択肢も無数にある昨今は、自信をもって「ウチはこのやり方でいいんだ」と言い切るのは難しい。「どっちでもいい」と鷹揚(おうよう)に構えるのも、かなりの意志と勇気が必要じゃ。「親としてはできるだけのことを」とか「子供の将来を考えて」といった口実で、自分を無理やり納得させたくなる。

今回載せ切れなかった相談も含めて考え合わせると、「早期教育」を受けさせるかどうか迷っているときには、次のふたつのことを念入りに自分に問い詰めたほうがよさそうだ。

その1「親同士の見栄や対抗意識に振り回されていたり、親自身の夢の押し付けになったりしていないか」

その2「悩んでいるのは、子どものためではなく親自身のためという自覚はあるか」

最初に紹介した相談に述べられていたように、親の意見を一致させておくことも大切である。面倒かつ厄介なのでおろそかにされがちだが、そのまま突き進んだら子どもにも夫婦関係にも悪影響を及ぼすのは確実じゃ。

子育ての方針に、親の気持ちや事情(コンプレックスとか想像力の限界とか)が混じり込むのは、どんなに気を付けていても避けようがない。しかし、「子どものため」という言葉にすがって考えることをやめる事態は、気を付けていれば避けられる。

「親自身が満足したくてやらせているけど、結果的に子どものプラスになればこれ幸い」ぐらいのスタンスがちょうどいいのではないか。もちろん、やらせないことを選択する場合も同じじゃ。

また、何かをやらせるよりもやらせないほうが、より大きな勇気と覚悟がいる。やらせるメリットもあれば、やらせるデメリットや、やらせないメリットもあるはずじゃ。しかし、うしろのふたつは形が曖昧なので注目されづらい。

公園や公共施設の禁止事項も、増やすのは簡単だが減らすのは困難である。「いちおうこれも」の積み重ねで、どんどん過剰になってしまう。

早期教育にせよ厳しいトイレトレーニングにせよ、やるかやらないかは親が決めればいい。しっかり子どもを見て、邪念に惑わされないように気を付けて、配偶者ともよく話し合った上で決めれば、間違えることはないはずじゃ。

というか、その結果の選択が親と子どもにとっての正解である。誰に文句を言われることもないし、誰に威張る必要もない。

【石原ジイジ日記】
マットレスの上でF菜が「トアンポイン、トアンポイン♪」と言いながら飛び跳ねている。跳ぶのに飽きたら、マットレスを乗り越えて行ったり来たり。何の意味も生産性もない行動だが、じつに楽しそうだ。まさに「遊び」である。人間は無意味なことをして笑うために生きている。ああ、また大切なことをF菜に教わった。
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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか