「私って子どもに甘すぎ!?」子育てのさじ加減に悩む親へ2つのアドバイス

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室【13】「子どもを甘やかしてしまう」

コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎

悩み迷っている親こそ全力で子育てをしている証

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<石原ジイジの結論>
「甘やかす」と「厳しく接する」は、ぜんぜん違うようでいてけっこう似ている。

娘が幼いころ、学童保育仲間の親子で何度かキャンプに行った。当たり前だが、親ごとに自分の子どもとの接し方はいろいろである。

あるパパとママは、我が子がジャングルジム的な遊具に登ろうとすると、「ほら、右手を先に出して」「左足を上の棒に載せないと」と、ふたりでずっと言い続けていた。みんなで作ったカレーを食べるときも、「ゴハンばっかりじゃない。もっとカレーをいっしょに載せないと」と子どものスプーンから片時も目を離さない。

そして、そのパパは夜の親同士の飲み会で「ウチの子は甘えん坊だから、厳しく育てようって夫婦で言ってるんです」と少し誇らしげに話していた。うーん、厳しさって何だろう……と、釈然としない思いを抱いたのを覚えている。とはいえ、口を出すのは大きなお世話だし、こっちの感覚が正しいとは限らない。

しかも、仮に口を出したところで、その場が険悪な雰囲気になる以外には、何の影響も及ぼさないじゃろう。誰かに指摘されたからと、自分のやり方をすんなり変える親はいない。その瞬間は納得して反省したとしても、結局は自分のできるようにしかできない。「我が家の子育ての基本理念」の類も、自分のやり方を正当化する理屈を集めてしまうのが常じゃ。

親というのは、というか人間というのは、けっこう残念な生き物である。ただ、「子どもとの正しい接し方」や「理想的な子どもの甘やかし方」を教えてくれるマニュアルがあったとしたら、それはそれでつまらないし、何より気持ち悪い。

「子どもを甘やかし過ぎているのではないか」と心配なパパやママは、次のふたつの前提を意識していれば、あとは「自分(自分たち)には、自分(自分たち)のやり方しかできない」と開き直ればいいのではないだろうか。

その1「親がどう接したところで、子どもの個性を100%コントロールはできない」

その2「甘やかし過ぎを心配する親ほど、子どもにマイナスな甘やかし方はしない」

どんな親にどんなふうに育てられるかは、どんな個性に生まれつくかと同じように、その子の運命である。親としては「自分がいちばんいいと思うやり方で全力を尽くして育てる」しかないし、それで十分じゃ。

そして「全力を尽くす」とは、仕事や日常のあれこれをちゃんとやるということに加えて、「全力で悩む」ということでもある。

子育てにおいては、つい「もっともらしい正解」を求めたくなるが、甘い誘惑に負けてはいけない。今日も明日も「甘やかし過ぎかな」「このぐらいは仕方ないかな」と悩んだり迷ったりし続けよう。そうこうしているうちに、子どもはいつの間にか成長してくれる。

【石原ジイジ日記】
パズルで遊びながらF菜が唐突に言った。「F菜、嬉しいの。みんながF菜のこと好きって言うから」。いい言葉じゃないか。ジイジも負けてはいられない。「よかったねえ。F菜もみんなに好きって言えば、みんな喜ぶよ」。うむ、決まった。元気よく「そうだね。わかった」と返すF菜。いつか思い出して、ジイジを尊敬しますように。
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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか