片付けを楽しげに繰り返しやってみせる
3つめは、片付けを楽しげに繰り返しやってみせる、ということです。
大人は「片付けなさい!」と叫びますが、どうやって片付けるのかを伝えていないことが多いのです。夜中に子どもが寝静まってから、親が一人で片付けていては、子どもが片付けの方法を学ぶ機会がありません。
子どもはやり方を学びたがっていて、大人のやることをそのまま真似したい時期でもあるのですから、せっかくの機会を逃すのは、とてももったいないことです。
そしてみなさんは、怒りながら、文句を言いながら、片付けていませんか?
子どもはそうした姿から、片付けは義務であり、楽しくないことなんだ、と思ってしまいます。大人だって、誰かが嫌々やっていること、つまらなそうにやっていることを見て、「やってみたい!」とは決して思わないでしょう。
モンテッソーリ教育の保育園では、低年齢クラスの先生が、いつもひたすら楽しげに、物を決められた位置に戻しています。
その姿を見ている子どもたちは、1、2歳児でもちゃんと真似をして、片付けることを楽しんでさえいます。
歩けるようになった子どもは、1つずつ持ち運ぶことを喜び、先生が「籠を持っていく? それともマットを持っていく?」と二択で選ばせるなど、年齢に合った工夫もしています。
ご家庭でも、さきほどのような環境を整えておけば、「これと同じシールはどこに貼ってあるかしら?」「同じ絵のところに入れるから見ていてね」と楽しくやってみせることができます。
ただし、1回で、すぐにできるようになるわけではありません。他のことも同じですが、特に片付けは毎日繰り返し、根気よくやってみせることが大切です。
3歳以降、年齢が高くなるほど、時間はかかりますが、あきらめないで続けてみましょう。
広げる場所を限定する
その他の方法としては、広げる場所を限定するのも一案です。
モンテッソーリ教育ではじゅうたんやマットを使いますが、その上に載るものだけを使うと約束しておけば、それを戻さないと広げる場所がなくなります。こういったことも効果的です。
そして、片付けができないもっと根本的な原因が、別にあります。
第1回でもお伝えしたように、モンテッソーリ教育では、必ず本物を使います。おもちゃではなく、おままごとではなく、本当の家事に使う陶器などを扱うので、片付けないままにしておくことはできません。本物だからこそ大切に扱い、丁寧に運ぶようになります。
そして、心ゆくまでお仕事をしたあとは、満足して素直になり、片付けもきちんとできるようになります。
実際に私が主宰しているモンテッソーリIT勉強会の会員の方からいただいたレポートをご紹介しましょう。
「我が家は市販のおもちゃが少なく、おうち遊びはお仕事やお手伝いがメインです。本物を体験できる日常生活の練習は、おもちゃでは代えがたい成長を与えてくれたと思います」
モンテッソーリも「玩具では子どもの心は満たされない」といった内容を繰り返し述べています。
慣れ親しんだおもちゃをすぐに捨てることは難しいでしょうが、少しずつ、本物の体験を増やしながらおもちゃを減らしていけば、片付けの問題もおのずと解決できることでしょう。高価なおもちゃより、こんな物が好きだったの? とびっくりされるかもしれませんね。
もっと知りたいあなたへ
当欄に掲載されている記事、写真の著作権は、著者または撮影者、講談社に帰属します。無断転載、無断コピー、再配信等は一切お断りします。
◆関連記事◆
第4回 「言葉はわかっているのに、聞く耳を持ちません」子育て相談 モンテッソーリで考えよう!
田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。