「魔の2歳児。どう対応したらいいでしょうか」 子育て相談 モンテッソーリで考えよう!

第2回

モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所所長:田中 昌子

※この記事は、講談社絵本通信掲載の記事を再構成したものです。

子育て中は、日々、悩みや困りごとがありますね。そこで、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」所長で、たくさんのお母さま、お父さまの相談にのってこられた田中昌子先生にお話をお伺いしました。ちょっとした工夫で、子どもたちに大きな変化が起こるモンテッソーリの考え方は、目からうろこが落ちることがいっぱいです。子育て中の人、必読です!

(イメージ写真/photoAC)
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魔の2歳児には、どう対応したらいいのでしょうか?

2歳3ヵ月の女の子です。理由もなく不機嫌になったり、大泣きしたりします。また、「自分でする」と言いながら上手にできず、大人が手出しをすると嫌がり、どうにもなりません。これが「魔の2歳児」なのでしょうか? 対応方法を教えてください。

いとおしい赤ちゃんの時代や、かわいらしいトコトコ歩きの時代を過ぎると、急に「イヤイヤの時代」が始まります。親御さんとしては戸惑ってしまうでしょう。世間一般では、「魔の2歳児」だから、反抗期だから、しかたがないとされています。

でも、こうした認識は、子どもにとって失礼なことです。次の2つのことを知っていれば、全く違う姿が見えてくることでしょう。

「秩序感」を理解する

1つめは「秩序感」を理解してあげることです。「秩序感」とは、生後数か月からみられ、2歳前後(個人差あり)をピークとして、4歳には、ほぼ消えてしまう感受性のことです。

この時期は「秩序の敏感期」ともいわれ、大人がどうでもいいと感じることに対し、子どもは強いこだわりを持ちます。「場所、順序、時間、所有」などが一定でないと、心が穏やかでなくなるのです。

これは、子どもの発達と深く関係しています。秩序の敏感期の子どもは、初めて出会う身の回りの環境を、ひとつひとつ確かめながら自分のものにしていきます。自分の脳の中に、「羅針盤」のようなものを作り上げようとしている時期なのです。

脳の中に「羅針盤」ができてしまえば、子どもたちはそれを基準として、物事を「違っている」「合っている」などと判断できるようになります。

「一定」が大切

しかし、生まれて数年もたたない幼児前期の子どもは、私たちの世界をまだよく知りません。砂漠のど真ん中に放り出されたようなもので、道しるべは何もなく、右往左往しています。

子どもは道しるべを作るために、砂漠に指で線を引きます。それはすぐに風に吹かれて消えてしまうかもしれませんが、繰り返し、何度も同じところに線を引けば、次第にくっきりと刻みつけられ、やがては決して消えることがない道しるべとなります。

道しるべを作るために大切なことは、「場所、順序、時間、所有」などが一定であることです。一定の揺るぎない道しるべができて、初めて脳の羅針盤は機能しはじめます。

つまり、あるものがいつも同じ場所にある、毎日決まった順序でものごとが進んでいく、同じ人が決まったものを使うことは、子どもが一生懸命、小さな指先で砂に線を引く、それも同じところに引くために、どうしても必要なことなのです。

でも多くの親御さんは、「こんなわがままを許していたら、将来、我慢ができない子になる」とか、「そんなこと、どうでもいいじゃないの」と考えてしまい、せっかくできかかっていた線の上を、平気で歩いてしまったり、手で書き消してしまったりします。すると、子どもは不機嫌になり、大泣きしたりするのです。

大人だって、一生懸命描いていた大切な絵を途中で汚されたり、少しずつ編んでいたセーターを引きちぎられたりしたら、荒れ狂いませんか? 子どもにとって、秩序が狂うことによる苦しみは、大人が想像する以上です。それが感情となって現れるので、「魔の2歳児」などと呼ばれるのです。

物の置き場所を決める

秩序感は、生きていくために必要不可欠なもの、なくてはならないものです。モンテッソーリは「魚にとっての水、家にとっての土」にたとえているほどです。

その後、幼児後期に顕著になる、比べる、分ける、段階づける、などの知性の働きというのは、基本となるこの羅針盤がしっかりできているからこそ、活発になりうるのです。ぜひ秩序感を理解してあげましょう。

具体的には、物の置き場所をきちんと決めて、乱れたらすぐに戻すことが大切です。部屋の模様替えも、この時期だけはなるべく避けましょう。

戻す目印がある棚 2歳7ヵ月

規則正しい生活も重要です。どの家庭でも、朝起きてから出かけるまで、最初に何をやり、次に何をする、ということが決まっていると思います。大人の都合でなるべくそれを狂わせないことです。

もしも、ぎゃ~っとなったら、気付かないうちに、何かを狂わせていないか、ちょっと考えてみて下さい。戻せば嘘のようにおさまることもよくあります。たとえば、ママがパパのカップやお箸を使った、枕の向きが逆だった、というようなことが原因だったりします。

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