東大卒のママ医師がひかれたモンテッソーリで一番大切にする“観察”とは?

モンテッソーリ教師・田中昌子先生×東大卒のママ医師・森田麻里子先生の子育て対談#1〜観察編〜

編集者・文筆家:高木 香織

上にぶら下がっているのが「ムナリ・モビール」。色彩の区別がつかない新生児でも、白と黒でゆっくり揺れるモビールなら見ることができるといいます。写真の赤ちゃんは生後1ヵ月。
写真提供:田中昌子

子どもを「観察」して 必要としていることに気づく

もりたま先生:今、次男が物を落としたがって困ってるんです。

田中先生:彼は、何をしたがっていると思いますか?

もりたま先生:物を落とすこと自体が好きなんだと思うんです。それで私、モンテッソーリの教具をヒントに、物を落とせるコップを作ってみたんですけど、どうでしょうか? 

森田先生が手作りしたコップとストローのおもちゃ。
写真提供:森田麻里子

田中先生:あら、いいですね、でもちょっと落とす穴が大きいかしら。もう少し小さくして、穴に合わせて入れる動作ができるようにするといいかもしれませんね。

物を落とすといろんなことが起きますよね。動く、音がする……。穴にビー玉を落とすとカーンと音がしますね。1歳になると手指がすごく発達して、いろいろな動きをしたくなるんです。もりたま先生が作られたコップのように、穴にストローを入れるとか、コインを落とすとか、穴に押し込むとか、さまざまな動作をしたいんです。

物を落としたがるというのは、それに適したものを求めているというメッセージなんです。メッセージに気づいて、秩序だった動きを繰り返しできる環境を整えるといいですね。

物を落として困る、と思われるかもしれません。でも、子どもにとっては、「活動すること自体が目的」です。神さまからもらった宿題に取り組んでいるんだな、と思えば、にっこり笑って見守れるようになるでしょう。

1歳を迎えるころになると、絵本にも興味しんしん。自分でめくる楽しさを覚えます。
写真提供:森田麻里子

もりたま先生:子どもにとって今これが必要、というものがありますか?

田中先生:それは子ども自身が教えてくれることです。ですから発達の段階に合わせて、少しずつ変えていく必要があります。

科学的な知識を持ったうえで、子どもを「観察」します。すると、子どもが何をしたいかが見えてくるんです。子どもをよく見て「観察」し、必要としていることに気づくようにします。これはモンテッソーリ教育が一番大事にしていることなんですね。

『子どもとはうるさくて手がかかるもの』としか思えなかったのが、モンテッソーリ教育に出合って一変し、救われたという田中先生。
写真:松井雄希

いい時もあれば悪いときも 長い目でみると心が軽くなる

田中先生:お母さまたちからいただくお悩みで一番多いのは、「忙しくて、子どもと接する時間が短い」ということです。もりたま先生もお子さんを現在、幼稚園にあずけていらっしゃるのですよね。平日、お子さんと過ごすお時間はどのくらい?

もりたま先生:はい、保育園から転園し、今は幼稚園に行っています。子どもと過ごせるのは、朝の2時間と夕方の3時間、あわせて5時間くらいですね。

田中先生:そうですよね……。そんななかで、モンテッソーリ教育にも取り組もうとされているんですね。

私、今のお母さまたちって、素晴らしいと思うんです。家事をやって育児をし、お仕事もされる。お母さまたちは、みんな十分頑張っていらっしゃいます。

日々、子どもたちは変化しています。大変な時もありますが、悪いことばかりは続きません。いい時もあれば悪いときもある。子どもたちはどんどん変わっていきますから、長い目で見るようにすると、すごく心が軽くなりますよ。

もりたま先生が購入したという田中昌子先生の著作『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A 68』と、田中昌子先生監修のロングセラー『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』(ともに講談社)。

取材・文/高木香織


モンテッソーリ教師・田中昌子×東大医学部卒ママ医師・森田麻里子の対談は全3回です。
次回(#2)は「赤ちゃんの夜泣きを解決する3つのコツ」について。
21年12月3日公開です(公開日までリンク無効)

19 件
たなか まさこ

田中 昌子

Masako Tanaka
モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所所長

上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。  

上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。  

もりた まりこ

森田 麻里子

医師・小児睡眠コンサルタント

Child Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。2017年に長男、2020年に次男を出産。長男の夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究を徹底的に調査。赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。最新著書『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)のほか、『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』(ダイヤモンド社)、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)が発売中。 「Child Health Laboratory」  https://child.healthlabs.jp/

Child Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。2017年に長男、2020年に次男を出産。長男の夜泣きに悩んだことから、睡眠についての医学研究を徹底的に調査。赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。最新著書『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)のほか、『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』(ダイヤモンド社)、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)が発売中。 「Child Health Laboratory」  https://child.healthlabs.jp/

たかぎ かおり

高木 香織

Kaori Takagi
編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。