保活で、もし待機児童になったらどうする!? 

株式会社リクルート・保活総研 酒田絵美さんインタビュー 第4回 イレギュラー時の対応方法

株式会社リクルート・保活総研:酒田 絵美

産後にぶつかる大きな「保活」の壁を乗り越えるために一番大切なこととは? 今回も『株式会社リクルート』で保活相談窓口『保活のミカタ』を立ち上げ、「保育園に入れない!」という声に耳を傾けてきた酒田絵美さんに、「保活」を一人で抱えてしまわないための分担方法や、急な引っ越しや待機児童になってしまったときの対応策についてアドバイスをもらいました。

それぞれ得意なことを活かして”保活”をうまく分担しよう

――”保活”は本当にやることがたくさんあるので、一人で抱えずに作業をうまく分担できればいいですよね。

酒田「本当にそう思います。パートナーや育児に協力してくれる方がいるのであれば、ぜひ分担してほしいですね。私はときどき両親学級でお話する機会があるのですが、”保活”のように出産して復職までの間に進めなければいけない重要事項は、産後ではなく妊娠中にしておいたほうがいいとおススメしています。産後は体力的にも精神的にもキツくなる可能性がありますからね。
第3回でお話した情報収集についても、お父さんがふだん営業職をされているご家庭なら、入園先リストや入園までの進捗管理など、営業のアタックリストのような感じで作ってもらってもいいと思います。

それぞれ担当する作業にも向き不向きはあると思うので、苦手なことよりも得意なことをやってもらったほうが効率的です。なにより”保活”にはさまざまな提出期限があるので、進捗管理は重要な役割。いつ最終連絡を取って、次回のアクションはいつ頃するのか、出産後にウェブ申し込みの見学予約をする、などのような少しタスクっぽい作業はお父さんに担当してもらうのもいいと思いますよ。
最近は、データを同期して共有することもできるので、一緒にプロジェクトを進めるような気持ちでやっていくと、”保活”も一緒に楽しめるのではないでしょうか」

急な引っ越しなど イレギュラー時の対応は?

――酒田さんは一番上のお子さんのときに転勤があったとおっしゃっていましたが、急な引っ越しなどのイレギュラーな事態の対応についても教えてください。

酒田「引っ越しが決まった時期にもよりますが、ギリギリに決まってしまったら特に待機児童のいるエリアの認可保育園入園には間に合わないケースが多いです。
これまでお話したように、”保活”はみなさん一年前ぐらいからはじめています。引っ越しすることになったら、とにかく認可外の園を確保すること。ただ、東京23区や関西の中心部などの都市部以外でしたら入れる可能性もあるので、引っ越しが決まった段階で引越し先の家の近くの保育園を探してみてください」

――そのほか、酒田さんが受けた相談の中でイレギュラーなものはありましたか?

酒田「保活は一人一人状況が違うので一概には言えませんが、きょうだい同時入園などは難易度が高いですね。例えば、2歳差くらいで出産されて、連続して育休を取得している方の場合。きょうだいを同時に入園させたいのに、上の子の保育園が決まらず、さらに育休を取得して、きょうだい同時入園にするという方もいました。この場合は復職か、同じ園に入園か、どちらを優先させるのかをまずお伺いします。ちなみに復職を優先し、初年度別々の園になってしまったとしても、次年度に転園できる可能性もあるので、違う園に通うのは1年だけで済むこともあります。
また、自治体によってはきょうだい同時入園が加点対象になる、つまり入園しやすい条件になるところもあるので、きょうだい同時入園のポイントもしっかりと調べておきましょう」

待機児童になってしまったらどうしたらいい?

写真:アフロ
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――”保活”をがんばっても残念ながら待機児童になってしまったときときは、どう動けばよいのでしょうか?

酒田「弊社の従業員からも、毎年20人ぐらいは“1次選考で認可保育園に入れなかった”という相談を受けます。
まずすべきことは、不承諾通知を受け取ったらその当日中に併願で申込みをしている認可外保育園に電話をすることです。認可外保育園は多くが先着順なので、リストの順番があるのですが、認可保育園の結果が出たその日から、入れた、入れなかったという連絡が園にくるんです。
ですので、とにかく早く電話して、“何月何日に申し込んだ○○ですが、認可保育園に入れなかったのでそちらの園にしか行くところがありません”と現状を伝えると、保育園側も、親身になって相談に乗ってくれることがあります。

そして、電話で連絡しておくと“今は空きがないけれど、3人待ちなのでもう少ししたら連絡ください”、”入園申込を〇月〇日から行います”などの具体的な話が聞けることもあります。なるべく当日中に認可外保育園に一度連絡をするということは覚えておいてください。

また、不承諾通知の書類のなかには、認可保育園の二次募集の案内と一緒に、保育室や待機児解消保育ルームなどの特別な申し込み用紙も入っていますのでそれを見逃さないこと。申し込み期限がとても短く、“1週間以内に来庁して登録してください”というようなことが書いてありますので、書類とともに送付されたものは全て読み、保育室など申し込みできるところにはすぐに手続きを始めてください」

酒田さんが取り組む「保活」をサポートする取り組み

――酒田さんが今されている、”保活”相談を人事部の仕事として受ける『保活のミカタ』という取り組みは本当に素晴らしいアイデアだと思いました。

酒田「二人目の子が11月末生まれで認可園の申し込みがギリギリ間に合わなかったんです。それで育休を延長した結果、どの園にも入れない状態になったという経験をしました。そのときは“仕事は好きだけど、辞めなきゃいけないのかな”ということまで考えましたね。そこから”保活”についてきちんと調べました。そして“きょうだい同時入園の加点を得て保育園に入園しよう”と思い、予定より大幅に前倒して下の子を出産しました(笑)。
この私の経験から、“これからお子さんを持つ従業員のみなさんにもこんな苦労はさせたくない!”と本気で思い、人事部に“どうしても保活支援がやりたい”と申し出たんです。結果、ダイバーシティ推進部に配属され、それから3年間ライフワークのように『保活のミカタ』で保活支援を続けています」

――現在は企業間で保活情報を共有する”保活総研”の活動もされているそうですが、こちらの取り組みについても教えてください。

酒田「従業員の相談窓口としてスタートした『保活のミカタ』の活動を続ける中で、保活の問題は弊社・リクルートだけではなく、多くの方が困っている社会課題だろうなと考えたことからでした。
リクルートは月曜日から金曜日までの週5で働いている人が多いのですが、例えば土日勤務の方、フリーランスの方など、働き方の数だけ”保活”の方法もあると思うんです。自分たちが培ってきた知見を広げつつ、新しい情報も得たいと思い、2020年に『保活総研』を立ち上げました。

『保活総研』の取り組みは、保育園入園のサポートを企業横断でやっていくことです。リクルート社内で収集した保活支援の情報や複雑な保育園入園の仕組みを、リクルート以外の企業様に対してしっかりと共有していくことができたらと思っています。数年後には、企業が保活支援をすることが多くの方に認知された世の中になることを目標に活動をしています」

ライフステージが変わってもアタリマエに働きたい!

――最後に”保活”に不安を抱える方へのメッセージをお願いします。

酒田「保育園は0歳~6歳という、人間が最もダイナミックに変化する時期を支えてくれる、大切なパートナー。そして、大切な自分の子どもが約6年間、起きている時間のほとんどを過ごす場所です。だからこそきちんと選んであげてほしいと思います。安心できて、親も子も良いと思えるところに通えることが、子どもにとっても親にとっても幸せなことですよね。

今、『保活総研』で目標にしているのが、“ライフステージが変わってもアタリマエに働ける”ということ。子どもが生まれるのは、大きなライフステージの変化です。仕事だけではなく、自分自身がやりたいことを、自分の人生を諦めないで生きていけるようにサポートしていけたらと思っています」

多くの従業員のみなさんの声を聞いているだけに、酒田さんのアドバイスはとても的確。
これから”保活”をはじめる方は、ぜひ参考にしてみてください。

保活総研
「ライフステージが変化しても、希望通りの働き方ができる」という未来のアタリマエに向かって、保育園入園に関するこれからを企業横断で考えていく場。企業の人事担当者に向けた「従業員の保活支援」ノウハウや保育園入園に関する最新情報の共有などさまざまな取り組みを行っている。

取材・文 石本真樹

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さかた えみ

酒田 絵美

株式会社リクルート・保活総研

株式会社リクルート 横断人事統括室・人事統括室・ダイバーシティ推進部在籍。 従業員向け保活支援『保活のミカタ』起案者 。3児の母で、現在は4児を妊娠中。自身も子どもの保育園入園に苦戦、育休を延長した経験を持ち、「他にも困っている社員は多いはず、この経験を会社のために活かしたい」と社内向けに『保活のミカタ』プロジェクトを開始。育休中に取得した保育士資格を活かしつつ、保活激戦区といわれる首都圏を中心とした自治体の保育園資料を読み込み冊子化。保活相談では、一人一人にあった保活を提案し、3年連続で相談者の95%以上を保活成功へ導く。また、保活支援を通じてD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の未来を模索する中で、「これからの日本のD&Iをもっと推進していきたい」という高い志を抱くように。リクルートのナレッジを展開することがより良い社会をつくるための活動につながると信じ、その第一歩として2020年より『保活総研』の立ち上げに全力を注いでいる。

株式会社リクルート 横断人事統括室・人事統括室・ダイバーシティ推進部在籍。 従業員向け保活支援『保活のミカタ』起案者 。3児の母で、現在は4児を妊娠中。自身も子どもの保育園入園に苦戦、育休を延長した経験を持ち、「他にも困っている社員は多いはず、この経験を会社のために活かしたい」と社内向けに『保活のミカタ』プロジェクトを開始。育休中に取得した保育士資格を活かしつつ、保活激戦区といわれる首都圏を中心とした自治体の保育園資料を読み込み冊子化。保活相談では、一人一人にあった保活を提案し、3年連続で相談者の95%以上を保活成功へ導く。また、保活支援を通じてD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の未来を模索する中で、「これからの日本のD&Iをもっと推進していきたい」という高い志を抱くように。リクルートのナレッジを展開することがより良い社会をつくるための活動につながると信じ、その第一歩として2020年より『保活総研』の立ち上げに全力を注いでいる。