運営者が語る 子どもが学童好きになるためのカギは”保護者とスタッフの連携”

労働・子育てジャーナリストで学童運営者の吉田大樹氏 【最新】学童の仕組みとその選び方 #2子どもたちの過ごし方

労働・子育てジャーナリスト:吉田 大樹

放課後に通う学童で、子どもたちは皆、どう過ごしているか、ジャーナリストで学童運営者でもある吉田大樹氏に伺いました。  写真:アフロ
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少子化の中でも、登録児童数がどんどん増加しているのが学童こと学童保育。

厚生労働省の調べでは2020年までの約20年で、施設数は2.6倍の2万6625ヵ所、登録児童数は3.3倍の131万1008人に。これらは、共働き世帯の増加に加え、シングル家庭や一人っ子家庭が増えてきたことが要因と考えられます。

労働・子育てジャーナリストの吉田大樹さんは3児のシングルファーザー。NPO法人「グリーンパパプロジェクト」代表理事でパパたちの子育てや生き方の応援活動をしながら、2019年より学童の運営もスタートさせました。

日々、小学生の子どもやその保護者と関わりながら、子どもの居場所づくりに励む吉田さんが、学童運営者の立場から見た現場を伝えます。第2回は、学童での子どもたちの様子、過ごし方について。

多学年が交じり合う人間関係を築く「居場所」

学童の良さの1つは、多学年で構成されていることです。

一人っ子の世帯も多い中で、基本的に同じ学年で構成されている小学校とは異なり、学童では多くの時間を年齢に関係なく過ごすことになります。高学年が低学年の面倒をみたり、多学年で同じ体験をすることで、人間関係を育てる場にもなります。

そして、学童の基本は、子どもたちの「生活の場」であり、「遊びの場」であること。

安全・安心に過ごせることが第一ですが、多くの遊びを通して、自主性や社会性、創造性を培(つちか)える場でなければなりません。

なので、過ごし方の基本は自由であることです。

しかし、集団生活を送る中で、なんでもかんでも自由な行動が許されるわけではありません。そこは社会と同じで、他の子どもたちの行動が著しく制限されるような傍若無人な振るまいには注意をする必要があります。

子どもたちが成長する中で、一定の決まり事も必要になるので、そこは放課後児童支援員のスタッフを中心にして、いかに子どもたちにその必要性を伝えていくのかも大事になるところです。

学童の先生は子どもの体当たりから膝枕まで対応

多学年で構成されることから、上級生になるにつれて、次第にリーダーシップを取るようになりますが、なかには下級生に対して強く発言するなどして威圧したり、力で押さえつけるようになる子もいます。

また、子どもたちは日々大きくなり、体力も増していくため、スタッフもかなりのハードワークになります。

注意をしていても、いきなり背後から乗っかられたり、急に蹴られたり叩かれたりすることもあります。スタッフは、目の前で対応している子どもだけではなく、常に背後を気にしながら保育をしなければなりません。

また、スタッフに隠れて、こそこそといたずらをしたりすることもあります。同じフロアにいる子どもたちがどのような行動をしているのか。スタッフは目配りをし続ける必要があります。

未就学児のようなまだ非力な子どもならば、「かわいい」と許容させるような行動でも、小学生になれば、スタッフがケガをするリスクも高まっていきます。

当然、その時々、子どもたちに注意をしますが、女性スタッフが多いこともあり、簡単に抱っこをしてあやしたりすることもできず、かんしゃくを起こして暴れたりする子どもの行動を抑えるのも一苦労です。

学童で働くスタッフも基本的には、学校と同じく、「先生」と呼ばれることが多いですが、その距離感は小学校の先生に比べたらより近い存在です。

なので、未就学児のように甘えてくる子もいます。寄り添うようにべったりとくっついてきたり、膝枕をしてきたりして、スキンシップを求めてくる子も多いです。

4年生くらいになってもそんな感じの子もいます。まだまだ甘えたい年頃です。状況に応じてですが、そういう行動に出る子どもたちを受け止めてあげるのも学童スタッフの仕事だと思います。

「我が家」のように帰ってくる場としての学童

そうした関係性の中で、学校では話しづらいようなことをスタッフに話してくれたりして、信頼を置いているからこそ子どもたちが伝えてくれることがあります。

多くの学童では、子どもたちが学校から学童に「帰って」きたら、「おかえり」「ただいま」と声が響き渡ります。そこが子どもたちにとって安心できる、帰る「居場所」になっているからです。

学校でけんかをした子ども同士が学童に来るとき、険悪な状況で迎え入れることもあります。そんなときはまず、両方から話を聞いて、そのけんかに至る経緯を聞いたりします。そんな中で、小学校で先生に話せなかったことを学童のスタッフに話してくれることもあります。

小学校では基本的に同じクラスであれば同じ授業を受けますが、学童では室内で、多学年の子どもたちがいろいろな過ごし方をします。宿題をやる子、絵を描く子、カードゲームなどの遊びに取り組む子、ブロック系の知育遊びをする子、手芸をやる子、などなどさまざまです。

なかには、あまり他の子どもたちと遊ぶのが苦手な子、1人で黙々と過ごしている子がいたりしますが、あえて無理やり輪の中に入れることはしません。あくまでもその子に好きな過ごし方を選択させ、見守ります。

安心できる居場所かつ、前述した「基本は自由」を大切にしているのです。

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